60代ごろから増え始め、70代で90%以上が発症するとされる白内障。ただし、眼内レンズを入れる手術をすることでほとんどの人がよくなるといいます。

いずれくるかもしれない白内障手術に向けて、中高年にとっては事前に情報をもっておきたいもの。そんなときに役立つのが、順天堂大学客員教授で、むらかみ眼科クリニック院長の村上茂樹著『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)です。

今回は、『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)より、「白内障になる原因や症状は、人によって違いますか?」を取り上げます。

白内障4つのタイプの症状

Q:白内障になる原因や症状は、人によって違いますか?

A:白内障は、カメラのレンズにあたる水晶体が濁ってくる病気です。水晶体が濁る原因や濁る箇所などは人によって異なり、それに応じて症状も違います。

私たちの眼には、カメラのレンズにあたる水晶体があります。白内障はこの水晶体が濁ってくる病気です。
水晶体は凸レンズの形をしており、中心部の「核」を「皮質」が取り巻いています。さらに、レンズ全体は「嚢(のう)」という薄い透明な膜に覆われていて、膜の前面が「前嚢」、後面は「後嚢」と呼ばれています。

健康な水晶体の中身は、本来は透明でタンパク質や水分などから構成され、光をよく通します。ところが、加齢に加えて、紫外線やブルーライトなどの「酸化ストレス」や中高年の方に増えている食後高血糖や糖尿病などによる「糖化ストレス」などの影響により、タンパク質が変性して濁ってくるのです。すると、光がうまく通過しにくくなり、光が乱反射して網膜に鮮明な像を結ぶことができなくなります。その結果、かすみを強く感じたり、まぶしくなったり、ものが二重、三重に見えたりして視力が低下していくのです。

毛髪が白くなっていくのと同様、一度濁った水晶体は元の透明な状態には戻せないので、加齢とともに白内障の方は増えていきます。また、白内障には水晶体の濁る部分によって4つのタイプがあり、それぞれ症状の出方が違ってきます。

1.皮質白内障

  • 白内障で最も多く、初期には自覚症状が出にくい
  • 濁りがいったん瞳孔内まで届いてしまうと、視力低下症状の進行が早い

一般的な加齢性白内障の場合、水晶体の中で核の周辺を囲んでいる皮質部分から濁り始めるケースが最も多いのです。それも、外から内側に向かってクサビ形に白っぽく濁ってきます。これを「皮質白内障」といいます。

初期の段階では中心部の核がまだ透明なため、視力低下などの自覚症状が現れにくく、濁りが中心部まで達するのに何年もかかるため、自身で「白内障だ」とはなかなか気づきにくいのが特徴です。

しかし、水晶体の濁りが徐々に瞳孔内の中心部へと広がってくると、次第に「眼のかすみ」が出始めます。これは、白内障では最も多くみられる症状です。

さらに、濁りが瞳孔内の中心部まで広がると、眼のかすみだけではなく「まぶしい」「メガネをかけても、細かい文字が見えにくい」などの視力低下症状が現れてきます。まぶしく感じる原因も、やはり濁った水晶体の中で光が乱反射するからです。

ここまで進行してしまうと急激に視力が低下して、それまでかけていたメガネが合わなくなり、見えにくくなることがよくあります。この場合、メガネをいくら替えても視力は改善せず、むしろ眼を疲れさせてしまう結果になります。

この先の進行は早く、「霧がかかったようにボヤケてかすむ」「太陽や照明などがまぶしくギラギラして見える」などといった症状が現れてきます。そして、暗い場所では瞳孔が大きくなるため、濁りの範囲も広がり特に見づらくなります。また、夜間の運転時に対向車のライトを浴びると、「まぶしくて見えにくくなる」などの危険が生じ、注意が必要となります。

2.核白内障

  • 水晶体の核が固くなり、近視の症状が急に進行しやすい
  • 放置すると二重視症状や細かい色の識別に支障をきたす
  • 放置により核が石のように硬くなり、手術のリスクが急激に高まる

皮質白内障とは逆に「核」、つまり水晶体の中心部から濁り始めるのが「核白内障」です。「お饅頭」にたとえれば、中身の「あん」の部分から濁って硬くなってくるというわけです。

このタイプは、核の部分から硬くなり黄色く濁っていきます。水晶体そのものも硬くなり、厚みが増して光の屈折力が増すため、近視の方は近視が進んだと勘違いしたり、老眼の方は老眼の程度が一時的に軽くなったように感じます。このような場合は要注意です。「老眼が治った」のではなく「白内障が進んだからでは?」と疑って、早めに眼科を受診してください。核白内障の場合、やがて次第に眼がかすむ症状が進行するようになってくるからです。

水晶体の濁りは黄色から茶色、焦げ茶色へと次第に色が濃くなっていき、常に茶色のサングラスをかけているような状態になってしまいます。そうなると、色彩のコントラスト感度が落ちて、紺色が黒に見えたり、黒とダークグレー、黄色と白の識別がつきにくくなったりします。また、水晶体の核の部分が硬くなって屈折度が強くなり、周囲の皮質の屈折度との差ができるため、ものが二重三重にダブって見えます。夜、月が二重、三重に見えたり、道で知人とすれ違っても気付くのに遅れたり、そんな経験のある方は要注意です。
このように、核白内障は進行すると、水晶体がガチガチに硬くなり、水晶体を支える周囲の組織も脆くなってしまいます。そうなってからでは、手術でトラブルが起きやすいのです。

白内障手術時の合併症で、一番頻度が高いのは「後嚢破損」ですが、核白内障が進んで水晶体が硬くなればなるほど組織も脆弱になり、そのリスクも高まるので、できるだけ早期の段階での手術が肝要です。

3.後嚢下白内障

  • 水晶体の後囊の中央に、べっとりと張り付く強い濁りが特徴
  • 瞳孔領域から白内障の濁りが始まるので、早期からみるみる視力が低下しやすい
  • 初期から、かすみ、まぶしさを感じやすい。昼間・夜間の運転にも注意が必要

水晶体を包む薄い膜の前面が「前嚢」、後方にあるのが「後嚢」です。この後嚢に接した中央の部分から濁るタイプが、後嚢下白内障です。

光の通り道が濁るので、早い時期から眼のかすみ、まぶしさといった視力低下の症状が現れ、進行も早いのが特徴です。特に、強い日差しの下などの明るいところでは、瞳孔が縮まり水晶体の濁った中央部のみに光が入るため、見えにくくなります。むしろ、曇りの日や屋内のほうが見えやすいというのもこのタイプの特徴です。

たとえば、通常の室内の視力検査では1.0程度に見えていても、屋外の明るさの中や逆光状態では、水晶体の中で光が乱反射して視力が0.2~0.3まで低下するということも起こるのです。このため、夜間の運転でも、対向車のライトを浴びると「まったく見えなくなる」などといった症状も発生し、早期からの視力低下も顕著なので注意が必要です。

「後嚢下白内障」の原因は、加齢だけではなく、喘息(ぜんそく)やリウマチなどの膠原病、その他の炎症性疾患などの病気で副腎皮質ホルモン(ステロイド)を長期間使用している方、糖尿病、アトピー性皮膚炎の方に合併症としてしばしば発症することがあります。特にアトピー性皮膚炎の方は10代後半から20代で発症することもあり、進行も早く、網膜剝離も併発しやすいので要注意です。

4.前嚢下白内障

  • 水晶体の中央部の前囊の直下に強い濁りを生じる
  • 瞳孔領域から白内障の濁りが始まり、ヒトデ状に大きく広がってくる
  • 瞳孔領域の濁りのため、早期からの視力低下症状とともに、かすみやまぶしさを感じやすい。昼間や夜間の運転にも注意が必要

30~50代前後の、若中年層に多いのが「前嚢下白内障」です。このケースの白内障は、水晶体を包む前嚢の中央部にヒトデ状の白っぽい濁りが現れます。最初は小さい濁りですが、次第にヒトデのような形に広がっていきます。

「後嚢下白内障」と同じく、光の通り道に濁りが生じるため、瞳孔が縮まる明るいところでは視界が真っ白になり一瞬何も見えなくなったり、視力が急速に低下したりするなどの症状が現れます。進行も早いので注意が必要です。

40~50代の方は、片方の眼だけ濁るなど、左右の眼の白内障進行が同時ではないことも多いので、片眼のみの白内障手術が実施される場合には、左右の視力の屈折度数のバランスを考慮した治療が大事です。このような若中年層の白内障の原因のひとつとして、スマホやパソコンの使い過ぎなどでの長時間のブルーライトなどの光源凝視による生活習慣の影響が問題視されています。

*  *  *

 白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと
監修/村上茂樹
アスコム 1,650円(税込)

村上茂樹(むらかみ・しげき)
医学博士/順天堂大学客員教授/日本眼科学会認定眼科専門医/国際水素医学学会研究会理事
山口県萩市生まれ。私立 愛光学園中学・高等学校卒業。順天堂大学医学部卒業。同大学院医学研究科博士課程修了(高齢者の失明予防医学を研究)。
眼科学会専門医とともに東洋医学会漢方専門医と抗加齢医学会専門医の3冠を有する、史上初の眼科医として、栄養・漢方治療も併せた眼科の統合医療を実施。世界最小でわずか2ミリからの「極小切開法(MICS法)」と最高品質の眼内レンズなどにより、これまで1万3,000例を超える白内障手術を行う。また、県内でも希少な緑内障治療の「選択的レーザー繊維柱帯形成術(SLT)」および、網膜治療の「マルチカラーレーザースキャン法」などによる眼に優しい無痛のレーザー光療法でも2万件以上もの実績を積み重ねている。
わかりやすい解説と、堅実な医療、眼科手術が身上。日本眼科学会、日本臨床眼科学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本眼科手術学会など多数の学会で学術講演を行う。海外医学雑誌や日本眼科学会英文機関誌(JJO)などへの英語学術論文の掲載実績ならびに著書も多数。

※村上茂樹著『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)より、一部抜粋してご紹介しています。


 

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