文・石川真禧照(自動車生活探険家)

快適性だけでなく操縦性にも力を入れているキャデラック。重めのハンドルでの走りは安定感があり、安心、安全度も高い。タテ長のランニングライトも個性的。

普段、私達が目にし、乗っている乗用車だが、生産されている国によってその性格は違ってくることを知っているだろうか。

例えば欧州車だが、国別に分けるとドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、イギリスの自動車メーカーがあり、それぞれに特徴がある。

ドイツ車は発達したアウトバーンのおかげで、操縦性と安全性を重視したクルマ造り、乗り心地より速さだ。フランス車は、クルマを生活の道具としているので実用性と経済性重視。小排気量で大きな(広い)車体のクルマが多い、イタリア車は実用性とカッコよさのどちらを重視するかといえばカッコ第一という具合だ。

SUV全盛の日本では人気のないセダンだが、アメリカでは固定ファンが多く、新型車の投入も行われている。
ハッチバックのような形状をしているが、独立したトランクスペースを持つ3ボックスセダン。
キャデラックというと後席重視のVIPカーを想像するが、このクラスは前席重視。前ドアのほうが幅広く、前席がホイールベースの中央にあるのがその証拠。

今回、取り上げたキャデラックはアメリカ車だ。アメリカ車の特徴はどこにあるのか。アメリカ大陸という広大な所で走らせる車は、大きくて、快適な車が一番。とくに車が実用化されはじめた20世紀初期には、この傾向が強かった。国民の多くは車の運転が好きではないと言われ、公共交通の発達が遅かったアメリカでは、老若男女誰もがラクに乗れる車が求められた。

変速機を自動車が行うオートマチックミッションやハンドルをきるのに力を必要としないパワーステアリングはアメリカ車から実用化された。カークーラーやカーラジオといった快適な車内をつくるための装備もアメリカ車からはじまった。こうした機能、快適装備のいくつかは高級車キャデラックから実用化されたものなのだ。

より低くワイドになったフロントマスク。グリルの形状をハッキリさせ、左右の垂直に伸びたデイタイムランニングライトのラインが個性的。
左右のフェンダーからグッと絞り込まれたリア。全幅は約1.9mだが、タテ長のテールランプで幅を感じさせないデザインだ。
走る居間を理想とするだけに、空調の効きは素晴らしく、日本の酷暑にも耐えられる性能だ。
空調に関しては、スイッチだけでなく、ディスプレイ画面でも細かい調整ができる親切さ。
変速機は最新の10速AT+4輪駆動だが、シフトはダイヤルやスイッチではなく、レバーを用いている。下の2個のダイヤルは、音量調整とアクセサリー選択用。レバーの上には「ツーリング」「スポーツ」「スノー/アイス」「マイモード」を選べるモードスイッチも備わる。

新型ラグジュアリースポーツセダンの「CT5」はキャデラックが26年4月に発売を開始した車。21年4月から日本に投入されていたが、今回、外観、内装から走行関係に至るまで、手を加え最新モデルになった。

車体の大きさは全長約5m、全幅約2m、全高は約1.5mという車体後部にトランクスペースがある3ボックスセダン。幅が10cmほど広いクラウン・クロスオーバー、高さはカローラセダンとほぼ同じという大きさなので、日本でももて余すほど大きくはないセダンだ。日本車と大きく異なるのはハンドルの位置。最近のキャデラックは右ハンドル仕様が多かったのだが、今度の「CT5」は左ハンドル仕様が用意されている。

33インチのLEDタッチスクリーンディスプレイは、運転席を包みこむように曲がっている。日本向けも左ハンドルが用意されている。
独立したトランクスペース。手前の左右床下には小物入れも備わる。後席の背もたれは4対6で前倒でき、トランクと一体になるが室内との出入口は左右が狭くなっている。

左側通行の日本の道で左ハンドルは、有料道路や駐車場の料金所などで不便を感じることもあるが、実際に街中を走っているときは、歩行者や自転車が路肩にいることが多いので、運転席から近く、距離感がつかみやすいという利点があることに気付いた。とくに最近は自転車が車道を走るようになってきたので、距離感がつかみやすく、安全運転にもつながることが体験できた。

前席は高めにセットするとドア上縁に頭がぶつかる。運転席側座面には、左右縁にバイブレーターが内蔵され、走行中危険が迫るとその方向のバイブレーターが振動し、運転者に知らせてくれる。
後席の着座はやや低めだが、足元は狭くない。これはホイールベースが2.9m以上あり、全長が同じクラスの国産車よりも長いから。但し、床面中央のトンネルは大きいので、快適定員は左右1名。床面表皮は体重の軽い人だと滑りやすい。

安全運転機能に関してつけ加えると、キャデラックは以前から、車両に危険が迫る方向を検知すると運転席の座面左右に内蔵されたバイブレーターが振動して危険な方向を運転手に感覚的に知らせる機能が装備されている。このほか高速道路走行時に車線中央を維持して走る機能や死角に車両がいるときに車線変更禁止の警告やハンドル修正も支援してくれる機能も備わっている。

快適装備に関しては15個のスピーカーを装備したカリフォルニアのAKG社が初めて自動車用に制作したオーディオは臨場感あふれる音を楽しませてくれる。かつてキャデラックのオーディオは、音響メーカーのBOSE(ボーズ)が特別仕立てのオーディオを提供していたが、それにも勝るオーディオ装置といえる。

メーターの表示パターンは、ドライブモードによって異なる。スポーツモードでは水温、燃料計のほかに油圧や油温まで表示され、ハードな走りにも対応している。

もちろん、車である以上、走ることに関しての機能もアメリカ最高級車ブランドの名に恥じない。エンジンは2L、ガソリンターボに10速ATを組み合わせ、さらに4WDシステムがサポート。4つのドライブモードがスポーツ走行から雪路までをカバーしてくれる。

かつてはV8、5L、燃費は2~3km/Lというエンジンを搭載したこともあったが、最新のセダンは直4、2Lのガソリンターボが標準仕様。それでも0→100km/h加速は実測で7秒台を出す実力を備えている一方で、走行速度により2気筒休止も行う省燃費モードも。
10速ATはシフトレバーで手動変速モードを選べるが、手許のパドルレバーでも変速はできる。
AWD(全輪駆動)を表すのはエンブレムだけ。駆動力の全輪配分や路面状況による駆動は電子制御化されている。

キャデラックは近年、ラグジュアリーさだけでなく、スポーツ性を証明するためにル・マン24時間レースを頂点とする世界耐久選手権レースに出場するなど、積極的に走りの性能も高めている。

試乗車のタイヤは高級スポーツタイヤのミシュランプライマシーツアーA5、サイズは245/40R19サイズを履いていた。このサイズでも「スポーツ」モードで細かいザラつきや振動も少なく、乗り心地は良く、サスペンションチューニングのレベルの高さを感じた。

アメリカンラグジュアリー+スポーツが加わった4ドアセダンがキャデラックCT5スポーツだ。

キャデラック/CT5 スポーツ

全長×全幅×全高4935×1895×1445mm
ホイールベース2935mm
車両重量1760kg
エンジン直列4気筒ガソリンターボ 1997cc
最高出力240ps/5000rpm
最大トルク350Nm/1500~4000rpm
駆動形式四輪駆動
燃料消費率未発表
使用燃料/容量無鉛プレミアムガソリン/66 L
ミッション形式10速自動
サスペンション形式前:マクファーソン 後:マルチリンク 
ブレーキ形式前:ディスク 後:ディスク  
乗員定員5名
車両価格(税別)970万円
問い合わせ先0120-711-276 カスタマーセンター

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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