私たちが英会話教室へ通い、苦労して学んだ時代は、遠い昔のこととなりつつあるようです。最近では、生成AIで英会話を学んでいる人も少なくないと聞いています。その主な理由が、恥ずかしさを感じずに、気兼ねなく学習できるからだそうです。
しかし、たとえ英語が身についたとしても、先生との人間関係ができないというのは、なんとも味けない感じがいたします。この記事では、生成AIではなく、英会話教室を主宰する池上カノが「Two heads are better than one.」について解説します。
目次
「Two heads are better than one.」の意味は?
「Two heads are better than one.」は時空や場所を超える?
「いろんな視点を持つ」ってどういうこと?
最後に
「Two heads are better than one.」の意味は?
「Two heads are better than one.」を直訳すると、headは「頭」、(be) better than~は「~より良い」なので、「2つの頭は1つの頭よりも優れている」ですが……、そこから転じて
正解は……
「三人寄れば文殊の知恵」という意味になります。
複数の人が協力し合うことで、よりよい結果を得ることができるという意味ですね。『プログレッシブ和英辞典』(小学館)では、慣用表現、ことわざとして紹介されています。
問題を解決をする際、複数の人の意見を交えることで、より良い解決策を見つけることができる。また、いろんな視点を持つ人たちが協力することで、より斬新なアイデアが生まれるような状況を指します。
「Two heads are better than one.」は時空や場所を超える?
この英語表現は、ジョン・ヘイウッドのことわざに関する著作『The Proverbs Of John Heywood』(1546年)に記録されています。
「Some heads have taken two heads better than one: But ten heads without wit, I wene as good none.」
(2つの頭を持つ者は、1つの頭よりましである。しかし、ウィットのない10個の頭は無いのと同じだ。)
また、旧約聖書の「伝道の書」にも似た記述が見られました。
「Two are better than one, because they have a good return for their labour.」
(一人より二人の方が良い結果を生む。なぜなら仕事への見返りがより大きく豊かになるからだ。)
世界でも似た言い回しがあるようで、韓国語では、 「백지장도 맞들면 낫다 」(紙のような軽いものでも2人一緒に持ち上げたほうがよりよい)。また、フランス語では「Deux avis valent mieux qu’un.」(1つの意見よりも2つの意見のほうがいい)と表現するそうです。ドイツ語では、「Vier augen sehen mehr als zwei.」(4つの目は2つの目よりもよく見える)と言います。
日本語の「三人寄れば文殊の知恵」と人数は違いますが、多くの視点がよりよいアイデアを生むという考え方は世界共通のようです。
「いろんな視点を持つ」ってどういうこと?
アメリカ、ニューヨーク州のコーネル大学工学部では、子どもたちや一般の大人を対象に物理学の魅力を伝える「The Physics Bus」という取り組みがあります。Physics は(物理学)の意味。そのまま「物理学バス」と訳すと少し堅い印象ですね。
エリック・ハーマン教授が率いるこのプロジェクトは、カラフルに彩られた大型バスが、学校やコミュニティセンター、キャンプ地などに赴くところからはじまります。
学生たちは、教授のアドバイスを受けながら、廃材などを使っていろいろな実験装置を作ります。物理学にふだん触れることのない幅広い年齢の参加者は、手作りの実験道具を使って、いろんな物理現象を体験します。
このプロジェクトの目標は、難しいと捉えられがちな物理学に対してポジティブな気持ちを持ってもらうこと。実際、参加者は空気砲を打ったり、大きなシャボン玉の中に入ったり、プラズマの変化を見たりと、大人も子どもも目を輝かせて物理学に触れています。
主催者である学生や大学の先生、そしてコミュニティに関わる人たちは、どうしたら物理学の面白さが伝わるか、模索しながらこのプロジェクトを運営しています。もちろんすべてがスムーズに進むわけではありません。
子どもたちは物理学の現象を学ぶよりも実験道具での遊びに集中しがちです。屋外で開催することの難しさもあります。また、廃材で作る実験道具は安全面なども含めて試行錯誤が必要です。興味深いのは、完成形ではなく、問題と向き合いながら協働で作り上げていくプロセスをそれぞれがいきいきと楽しんでいる姿でした。
学生、先生、コミュニティ、そして、子どもたち。それぞれの視点から出たアイデアを互いに聞き合い、意見を交わしあって形にしていくことで、あたたかで豊かなプロジェクトが実現しているように感じました。
最後に
プロジェクトに参加した学生の一人に、物理学とはなにか尋ねてみました。彼は、物理学を学ぶと物事の見方が変わると話してくれました。たとえば、家事や料理をする中でも物理の知識を通して新たな発見があり、日々「appreciate」を感じるそうです。
「appreciate」には、「理解する、感謝する、楽しむ」という意味があります。自分自身が心を動かされるからこそ、多くの人にもその楽しさを知ってほしいと語ってくれました。著者にとって苦手意識がある物理学ですが、日常にひそむ楽しさを知ってみたいなと思いました。次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com