多くの人が一度は耳にしたことがあるだろう「自己肯定感」という言葉。いったいどういう意味なのか、疑問に思う人もあるだろう。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、「自己肯定感」について、知見を得よう。
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近年、「レジリエンス」や「自己効力感」「セルフコンパッション」といった言葉をよく見聞きするようになりました。そして、そのなかでも一昔前から耳にするようになった言葉が「自己肯定感」です。
そうしたなかで「自己肯定感を上げたい」と考える人が増えてきていますが、自己肯定感はどのようにすれば高くできるのでしょうか? 本記事では、自己肯定感に関する基本的な知識から、自己肯定感を上げる方法などを解説していきます。
自己肯定感とは
そもそも「自己肯定感」とはどのような意味を持っているのでしょうか?
自己肯定感とは、文字通り「自己」を「肯定」する「感覚」であり、簡単に言うと「自分自身を良しと思える感覚」のことです。また「自尊心」と言い換えることもでき、自分自身について下記のように思ったり感じたりできることを指しています。
「ありのままの自分でいい」
「今の自分に価値がある」
「自分自身に満足している」
つまり、何かを成し遂げたり勝ち取ったりすることなく、また他者からの承認がなくとも自分で自分のことを価値ある存在として認められることが自己肯定感です。
自己肯定感が低い人は、「◯◯がなければ自分には価値がない」「あの人に認めてもらわないと意味がない」と言うように、条件付きで自分自身の価値を決めてしまいます。
自己肯定感が高い人はどのような人物か
それでは、自己肯定感が高い人に共通する特徴を見ていきましょう。
主体的に考え、意思決定できる
自己肯定感が高い人は周りの目や他者の評価を気にすることなく、自分の考えや判断に基づいて主体的に行動することができます。これにより、仕事でもプライベートでも「自分はこうしたい」という確固たる考えがあるため、主体的に動けるのです。結果的に周りに振り回されることなく、何事も自分で決められるようになります。
また、自分の行動によって失敗したとしてもそれは自分の責任であると認識でき、必要以上に落ち込むことがありません。また、その失敗を次の行動のための反省材料として活かせることも自己肯定感が高い人の特徴です。
失敗やリスクを恐れずに挑戦できる
自己肯定感が高い人は自分への信頼感があり、自分のやりたいことであれば失敗やリスクを恐れずに果敢にチャレンジすることができます。
また、そのチャレンジに成功しても失敗しても、自分自身の価値が変わるわけではないということを認識しているため、成功や失敗にあまり頓着しません。このチャレンジに対する姿勢がさらに成功率を引き上げることに貢献するのです。
自分や自分に関することについて肯定的に捉えられる
自己肯定感が高いと、自分自身や自分に関することについて肯定的に捉えられるようになります。
例えば、もし自分の身長が低かったとしても、自己肯定感が高ければそれは自分の特徴の一つに過ぎないと考えられます。一般的には身長が低いことはコンプレックスだとされ、自己肯定感が低いと「身長が低い自分は価値がない」と感じてしまうのです。
しかし、自己肯定感が高ければ身長が低いことに対して、「他者に威圧感を与えない自分の長所である」というように、別の見方ができるため身長が低くてもコンプレックスになりません。
自分の短所や長所を客観的に捉えられる
上記で見たように自己肯定感が高い人は、一般的には短所とされることでも見方を変えることで長所に置き換えることができます。しかし、それだけではなく冷静に自分を捉えられるため、「自分は数学が苦手だ」という短所がある場合、それを客観的に捉えて「それもまた自分の個性の一つだ」と受け入れるのです。
人と自分を比較しない
自己肯定感が高いと、人は自分と他人を比べるようなことをしなくなります。なぜなら、自分は自分で価値があり、他人は他人で価値があることを認められるようになるからです。例え自分より優れた人物がいたとしても、それはその人の一面でありその人にはその人なりの悩みや葛藤があります。
また、他者と自分とでは育ってきた環境や趣味や嗜好が異なるため、単純な比較は意味をなさないということも理解しています。
他人の意見を認められる
上記のように、自己肯定感が高い人は自分と人を比べなくなるため、人の意見を素直に受け入れることができるようになります。
ただそれは人の言うことに迎合するのではなく、「自分の考えはこうだけれど、あなたの考えもいいね」と認めたり、「その考え方はすばらしいね」と称賛することができるのです。
自己肯定感が低い人はどのような人か
ここまで、自己肯定感が高い人の特徴について見てきました。
それでは、自己肯定感が低い人にはどのような共通点があるのでしょうか?
完璧主義に陥る
自己肯定感が低い人は、何事も完璧にこなそうとする完璧主義に陥りがちです。完璧主義に陥ると、ミスや失敗をして責められないようにするために物事を頑張ろうとします。そのような人たちにとって「失敗」や「過ち」は自身の至らなさを証明することになるため、ひどく恥ずかしいものだと感じるのです。
したがって、自己肯定感が高い人にとっては些細なことだとしても、完璧主義に陥った人にとっては一世一代の大仕事かのように完璧にこなそうとしてしまいます。
あえて本気を出さない
自己肯定感が低い人は自分には価値がないと感じているため、半ば諦めの気持ちをもって行動する人がいます。その結果、仕事でもプライベートでも全力で取り組まず、あえて本気を出さないようにしているのです。なぜなら、「自分なんかが本気を出したところでどうせ何も変わらない」と感じているため、それを確認するためにわざと本気を出すことなく行動しているからです。
また、もし本気を出して失敗した場合、自分の実力が明らかになることを恐れて本気を出さないといったこともあります。
自己肯定感が低いと「能力の低さ=自分自身の価値」と考えてしまうこともあるため、本気を出すことは自分の無価値さを証明することにつながりかねないのです。
他者から認められようとする
自己肯定感が低いと、自分で自分自身の価値を見出すことができないため、他者に自分の価値を見出してもらおうとします。その結果、他者に認めてもらいたい欲求(承認欲求)が強くなり、自分の凄さを証明しようと躍起になるケースが少なくありません。
例えば、ハイブランドの服やバッグを身につけて他者から「すごい」と思われようとすることや、SNSで過激なことをして注目や「いいね」を集めることで承認欲求を満たそうとすることもあります。
しかし、こうした行動は他者からの承認が欲しくてやっているもので、自分がやりたくてやっていることではありません。したがって、本当に自分がやりたいことや自分の望みがわからなくなってしまうのです。
自己肯定感と仕事の関係
自己肯定感は仕事にどのような影響をもたらすのでしょうか? ここでは、自己肯定感と仕事の関係について見ていきましょう。
自己肯定感が高いことは仕事で有利に働く
上記で見てきた通り、自己肯定感が高い人は自分に価値を感じており、自主性が強く、自分自身の考えや軸を持って行動することができます。したがって、これにより仕事でも有利に立ち回れるようになるのです。
また、自己肯定感が高ければ自分自身の長所と短所を客観的に把握できるため、仕事においても自分の長所を生かしたプレーができるようになります。その一方で、自分の短所は仲間に補ってもらうことで効率的なチームプレーが可能です。それ以外にも、短所をカバーできるように新たなスキルを身につけることもできるでしょう。
さらに、仕事で失敗やミスをすることを恐れずにリスクを取って挑戦できるため、大きな功績を残せるうえに、仮に失敗した場合でも立ち直りが早く、すぐに改善点を見つけて再チャレンジができるのです。
自己肯定感が低いと仕事に悪影響がでる可能性も
仕事においては自己肯定感の高さは有利に働きます。しかし、自己肯定感が低いと仕事に悪影響がでる可能性があるため、注意しておきましょう。
まず、挙げられる悪影響は、とにかく失敗やミスを避けようとしすぎることです。仕事を進めるうえで失敗したくない気持ちは理解できますが、あらゆる失敗やミスを無くすことはできません。しかし、自己肯定感が低いと失敗の可能性が少しでもあると、諦めてしまいます。これにより新たなチャレンジができずに、活躍することも難しくなってしまうでしょう。
また、成功する見込みがあったり周囲から背中を押されても「自分なんか無理に決まっている」とやる前からネガティブになってしまうこともあります。このような姿勢では仕事において大きな成果を出すことは難しいかもしれません。
自己肯定感が下がってしまう注意すべき行動や意識
仕事において低すぎる自己肯定感は悪影響をもたらすため、可能な限り自己肯定感を下げないように意識しておく必要があります。そこで、ここでは自己肯定感が下がってしまう注意するべき行動や意識について見ていきましょう。
失敗やミスを過度に恐れる
人生で一度も失敗したことがない人は存在しません。どのような成功者でも多くの失敗をしてきています。しかし、過度に失敗やミスを恐れると自己肯定感が下がる危険性があります。なぜなら「こんなこともできないなんて自分は能力が低すぎる」や「こんなミスをする自分は無能だ」といったような考えにつながってしまうからです。
そうではなく、「誰でも失敗はする」や「これくらいの失敗は何でもない」と考えることで、新たな挑戦をしやすくなるでしょう。
卑下してしまう
日本の文化では謙遜することは美徳とされていますが、過度に謙遜してしまうとそれは「卑下」となり、自己肯定感を下げることにつながります。
誰かに褒められたり称賛された際は、その言葉を素直に受け入れることを心がけてください。その際に「いやいや自分なんて」といったように卑下してしまうと、せっかくの自己肯定感を上げるチャンスを逃してしまいます。
また、褒めてくれている人に対して頭ごなしに否定すると、その人との関係がギクシャクしてしまうこともあるでしょう。
自己肯定感を高める方法
自己肯定感を高めるには下記のような行動や習慣を意識すると良いでしょう。
物事を多面的に捉える
自己肯定感を高めるには、物事を多面的に捉えるように訓練することが効果的です。
自己肯定感が低いと一つの物事に対して、一つのネガティブな捉え方しかできません。例えば、「失敗は悪いこと」や「失敗は避けるべきこと」といったようにです。
しかし、本当に失敗は悪いことで、避けるべきことでしょうか?
発明家のトーマス・エジソンは発明を成功させる際に、ありとあらゆる方法を試し続けてようやく発明を成功させています。そして、彼はそのことについてこのように語りました。
「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」
つまり、エジソンはうまくいかなかった過程はすべて失敗ではなく、成功するための「発見」という捉え方をしていたのです。
思い込みに気づき、抜け出す
自己肯定感を高めるには、自身が無意識にしている思い込みに気づき、その思い込みから抜け出すことが重要です。
自己肯定感が低い人は「◯◯をするべきだ」や「◯◯がなければ自分には価値がない」という思い込みをしています。しかし、それは真実ではなく思い込みに過ぎないということに気づかなくてはなりません。
日本人が抱えがちな思い込みとしては、
・失敗してはいけない
・人に迷惑をかけてはいけない
・人と同じでなければならない
といったものがありますが、これらは全て誰かから押し付けられた「常識」に過ぎないのです。こうした思い込みから抜け出して、自分自身で考えられるようになって初めて人は自分を認められるようになります。
まとめ
ここまで自己肯定感を高める方法や低くなってしまう理由などをみてきました。
近年、日本人の自己肯定感の低さが問題視されていたり、自己肯定感を高める方法が注目されています。しかし、自己肯定感を高めることはあくまでも手段であり目的ではありません。
自己肯定感を高めることは重要かもしれませんが、本当に大事なことはありのままの自分を受け入れられるようになることです。
【この記事を書いた人】
さかした/ライター・編集者 読書と健康と猫が好きなフリーライター。 アフィリエイトサイトやアドセンスブログの立ち上げ・運営・記事の執筆を行っていたが、現在はフリーライターとして活動。 得意な分野は健康・教養・ビジネス・自己啓発など。
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いかがでしたでしょうか。「自己肯定感」についておわかりいただけたでしょうか。ありのままの自分を受け入れられるようになるためにも、自己肯定感を高めていきたいものですね。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/