関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、武田倫子さん(仮名・72歳)。元地方公務員で、グレイヘアーと白い歯、つやつやの肌が美しい女性です。現在はアパート経営をしており、都内一等地で豊かな生活を送っています。相談は同居する孫娘(20歳)について。倫子さんの財布からお金をこっそり抜いているのに、ある時は財布に大金が入っていたこともあり、犯罪に巻き込まれているのではないかと疑惑を持ち、私たちに調査を依頼されました。
【これまでの経緯はその1で】
自己啓発セミナーに参加する
祖母・倫子さんの話を伺う限りでは、孫娘はおそらく性産業で働いている。いわゆる「パパ活」程度では、札束が財布に入るほどお金を稼げないと推測したからです。そして、おそらくホストなどにハマっている。今、「ホストにハマって娘が家に帰ってこなくなった」などの相談が多いのです。
私たちが居場所を突き止めて報告した直後に、親戚の中で武術の心得がある若者にお願いして、強引に娘を家に連れて帰るという案件が、コロナ禍になってから2回ありました。
今回もそうだろうと予想しました。
依頼者・倫子さんから孫娘が出かける予定を教えていただき、張り込みを開始。高級住宅街の壮麗なマンションから、フリルだらけの服を着てバッチリ化粧をした孫娘が出てきました。
近くの駅から電車に乗ります。背が低く華奢で、透き通るように肌が白い。妖精のような雰囲気をもっており、倫子さんが溺愛してしまうのもわかる……と思いました。
その後、ターミナル駅で下車して、かなり迷いながら、ビルの地下のイベントスペースに到着。ここでは、自己啓発セミナーを主催する方のファンミーティングが行われていました。
当日券があったので、私も購入。会場は男女問わず多くの人がいました。
トークショーの内容は、「自分で自分の未来を切り開く」という内容だったのですが、注目なのは、インスタントカメラのツーショット撮影券が、1回7000円で販売されていたこと。開運を招くとのことで、握手、ハグ、お姫様抱っこなどのオプション料金が設定されており、密接に触れ合うには、かなりの高額を積まねばならない。
孫娘はこの日、20万円ほど使い、セミナーの主催者と交流。イベントは2時間だったのですが、最後の最後まで会場にいたグループに入っていました。
イベントが終わり20代男女混合で近くのファミレスへ。1時間ほど意見交換していましたが、どうやらセミナーの主催者は、「選ばれた人」にだけ、投資話を持ち掛けているようで、「100万はいける」などの話をしていたのです。
【夕方、繁華街に待つワンボックスカーに乗り込んでいった……。次ページに続きます】