取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「私がやりたいことをずっと応援して支え続けてくれたんだなって、親になった今だからこそ親の偉大さを改めて実感している毎日です」と語るのは、美輝さん(仮名・44歳)。現在は知り合いと共に借りているマンションの一室でネイルの仕事をしながら、旦那さまと高校生の娘さんとの3人で暮らしています。
母親は感情豊か、父親は物静かなものの優しさは感じていた
美輝さんは兵庫県出身で、両親と3歳上に兄のいる4人家族。父親は商社に勤めるサラリーマン、母親は専業主婦で、家のことはすべて母親が管理していたと言います。
「母親は褒める時は褒める、怒る時はとことん怒るような人で、母親からはかわいいとか、見た目を褒めてくれることもよくあったし、テストでいい点を取ったりすると頑張ったとか、できる子といった言葉をよく言ってもらっていた気がします。怒る時も全力で、手を出されることもよくありました。私と兄はケンカを頻繁にしていたんですが、ケンカの内容を聞いてどちらかが悪いと判断した時には思いっきり頬をもう一人の前でバチーンって叩くんです。兄とはその後もケンカを続けたけど、その後の母親の制裁が怖くて、バレないように静かに手をつねり合うとかになりましたね。兄とのケンカよりも母親の一発のほうがはるかに痛かったから(苦笑)」
一方の父親は寡黙で家で言葉を発することはあまりなかったとのこと。早朝は必ず、夜は早く帰れた時に犬の散歩をしていて、夜に一緒に散歩に出かけることもあったそう。しかし会話が続かなくて気を遣っていたとか。
「家には柴犬がいたんですが、父親に一番懐いていました。私一人の時には乱暴に抱きついてくることもあったのに、父親と一緒だとすごいお利口になるんですよ。父は夜早く帰った時にたまに散歩に誘ってくれるんですが、いつも話すのは私のほうだけ。父は聞いてくれるだけで、会話が途切れた時の無言状態は気まずかったですね。でも、散歩コースに22時ごろに閉まるコンビニがあって、そこでよくアイスとかジュースを買ってもらっていました。母親には内緒だから家に着くまでに食べないといけなくて、炭酸を必死で飲んだ記憶が残っています」
【次ページに続きます】