【ビジネスの極意】なぜ「体育会系マネジメント」より「キャバクラ型マネジメント」が有効なのか?

会社のパワハラ問題など、「体育会系マネジメント」に端を発する場合が多いだろう。リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、「体育会系マネジメント」の可否を考えて見よう。

* * *

あなたのマネジメントは「体育会系」? 「非体育会系」?

「ブラック企業」が社会問題化される中で、企業のマネジメント方法にも変化が現れています。かつて日本で主流だったのが、上下関係で人を動かす「体育会系タイプ」のマネジメント方法でした。これに対し、最近では、部下の話を聞き、対等に扱う「コーチング型」「キャバクラ型」と呼ばれるマネジメント方式が話題です。今回は、それぞれのマネジメント方式の違いと良し悪しを比較してみましょう。

あなたのマネジメントは体育会系タイプ? 非体育会系タイプ?

「なんでこんなこともできないんだ!」

「お前はいくら言ってもダメだ」

あなたの職場が、こんな怒鳴り声で1日が始まるのなら、そこは体育会系の職場である可能性が高いでしょう。

体育会系のマネジメントでは、上下関係をベースにした関係が取られます。管理職が部下の行動をきっちり観察し、細かいところにまで口を出すのが特徴です。行動規範や服装、マニュアルが実に細かく決まっています。朝礼や飲み二ケーションを大事にするタイプのマネージャーも多いようです。

一方で、非体育会系のマネジメントとは、言ってみれば放任です。ゴールのみを明確にし、あとは個人個人の裁量に任せます。

部下はザックリと示される目標に向かって、自律的に、勝手に動きます。出社時間なども細かく決まっていません。一定の基準さえ守れば、社員はうるさいことを言われずに自由に働けます。裁量労働制を取ることも多く、出社時間などが緩かったり、リモートワークやテレワークを認めていたりします。

実力を発揮できるのはどちらの会社か

『部下をつぶさない!アンチ体育会系リーダー術』(dZERO刊)の著者である鈴木紀夫さんは、雑誌編集者時代に両方のタイプの上司を経験し、「部下を一人として潰してはいけない」と話します。彼は雑誌編集者で最初「体育会系上司」のもとで働き、萎縮しながら仕事をしていたそうです。

「私はというと声も小さくて、動きものろい(笑)。体育会系とは逆をいくタイプだったので、上司もやりづらかったと思います。デスクの指示通りに仕事もこなせず、『なんでこんなことができないんだ』と、毎日怒鳴られ通しでした。それでさらに萎縮して空回りしてしまい、その班をお払い箱になってしまう、その連続です」[1]

ところが、10人目に上司になった人は違っていました。

「そのデスクは私がトンチンカンなことを言っても最後まで話を聞いてくれ、少しでも出来がよければ『よくやった』と褒めてくれるわけです。体育会系の上司だと、どうしても下の人間は上の命ずる業務を遂行するだけの“コマ”になりがちです。なので、上の言うとおりに仕事のこなせない私は今までだとすぐに、落第点をつけられていました。ところが、10人目のデスクは私を人として扱ってくれ、リスクを負って私の企画を通してくれたのです」[1]

鈴木氏はこの後、編集長として頭角を現します。つまり、体育会系のマネジメントより、非体育会系のマネジメントの方が合っていたのでしょう。

私自身も、いくつかの会社や雑誌編集部を経験し、「非体育会系」の方が自分の力を発揮できるな、と実感しました。最低限のやることが提示され、勤務態度や出社時間をうるさく言われることもありません。一方で、「体育会系」の会社にいると、自分がいつも代替可能な要員であるような錯覚に陥ります。

体育会系のマネジメントは評価されづらくなってきた

体育会系のマネジメントの会社では、叱られて奮起して実力を発揮する人が現れる一方で、鈴木氏や私のように、萎縮してしまい、実力を発揮できない人も出てきます。

また、ブラック企業のように、従業員が定着しにくい傾向があるようです。特に部下に外国人が混じると、叱責がときに訴訟やトラブルに発展することもあります。

産業医・大室正志さんは、最近では高圧的なマネジメントが評価されにくくなったと話します。

かつては、高圧的な「親父」的な上司のほうが評価される傾向が強かったのですが、今はタモリさんや内村光良さんのように、一見すると薄味だけど、自然に周りを導くような感じの人のほうが評価されると思います。[2]

大室さんは、現在では「キャバクラ型のマネジメントが有効な場合がある」と話しています。

現在では部下は自分と全く違った環境で育っているので、もともと感じ方や考え方が違うのだという「諦め」からスタートしたほうがコミュニケーションがうまくいく場合もあります。

自分とまったく違った文化環境の人々をマネジメントしている例として分かりやすいのがキャバクラなど夜の接客業の男性店長ではないでしょうか。

そもそも、店員と自分は性別が違いますし、一人ひとりが能力給のため、「店長だから偉くて給料も高い」という図式は通用しません。[2]

つまり時代はだんだん、体育会系のマネジメントから、非体育会系のマネジメントに移ってきているのです。

非体育会系のマネジメントには向き不向きがある

ただし、非体育会系のマネジメントがいつもうまくいくかといえば、一概にそうでもないようです。

例えば、工場や工事現場、軍隊などでは、ある程度の上下関係があり、命令系統がはっきりしていないと、危険が発生することもあります。

また「ぎちぎちに縛られないと、何をやっていいのかわからなくなる」というタイプの社員は、放任系のマネジメントでは迷子になってしまう可能性もあります。できる人が集まっている場合は良いのですが、できない人には手取り足取り、教えた方が効率的な場合もあるのです。

堀江貴文さんも、うまくいっている場合には、口を出さない(ただしうまくいかなければ口を出す)と言っています。

そうやっていいメンバーが集まると、できる人には丸投げしてお任せできるわけです。基本的に僕は、好調な部門にはほとんど口を出しません。「もっとこうしたら?」というポジティブなアイデアは出しますが、要所を決めたら、あとは変にならない限り干渉せず、文句を言わないようにしています。

マネジメントの手法といっても人それぞれいろんなやり方があるわけで、すごい利益を叩き出す人もいれば、育てるのがうまい人も、手間をかけずに丸投げするのがうまい人もいる。その人のスタイルでうまくいけばいいんです。

堀江貴文さんのように、ときと場合によって使い分ける、という方法が有効なケースもあるでしょう。メンバーによって、有効な戦略はまた異なるのです。

まとめ

体育会系か、非体育会系か、それぞれに一長一短があります。マネジメントの目的や職種、メンバー構成によっても取る方法は違っています。今のマネジメントがうまくいっていないのならば、組織にあった方法を考えてみるのも一つの方法です。

筆者:のもときょうこ

早稲田大学法学部卒業。損害保険会社を経て95年アスキー入社。その後フリーとなり「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者を経て独立。独立後は「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)など2冊の書籍を執筆。新刊「日本人は『やめる練習』が足りてない」(集英社新書)。

【参照】
[1]https://diamond.jp/articles/-/89511
[2]https://style.nikkei.com/article/DGXMZO24424700Y7A201C1000000?channel=DF130120166072&page=2
[3]https://next.rikunabi.com/journal/20150527-1/

* * *

いかがだっただろうか? 従来の体育会系マネジメントから、非体育会系マネジメントへの移行は歓迎されるべきである、との意見も多いことだろう。だが、体育会系マネジメントがまったく不要かといえば、そうではない。要は、メンバーの資質を捉えて適宜行うことが重要であるといえよう。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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