【ビジネスの極意】上司は部下の「もっと任せてほしい」に合わせてはいけない

部下が「仕事をもっと任せてほしい」と思っていたことがわかったとしたら、上司であるあなたはどのように思うだろうか? やる気のある部下を持った幸せを感じると同時に、それなら、部下にやりがいのある仕事を与え、さらなるスキルアップを目指してほしい、と思うだろう。

だが、リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」では、そういう部下の要望に合わせてはいけない、と説く。その理由とは?

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「もっと任せてほしい」と言う部下にどう対応するべきか?

人伝いに部下が「今、上司から任せられている内容だと任せられている感じがしない」と言ってさみしそうにしていると聞いた。部下が「○○さん、もっと自分を任せてくださいよ」と本音をこぼした。そんな風に部下が「もっと任せてほしい」というサインを発してきたとき、上司はどのように対応するべきなのでしょうか。ここでは3つの視点から、部下の「任せてほしい」サインへの対応を考えます。

上司は部下の「もっと任せてほしい」に合わせてはいけない

「識学」というマネジメント理論に基づけば、上司は部下の「任せてほしい」サインに合わせた対応をとってはいけません。組織には「上司は部下に指示と目標を与え、結果を評価するもの」「部下は上司からの指示と目標にしたがって結果を出し、評価を受けるもの」という前提があります。

この前提に対して「今、上司から任せられている内容だと任せられている感じがしない」という発言は、上司から求められている内容を部下が吟味する発言となっています。ここには上司の指示や目標を評価し、選択できるという考えが現れています。

上司が部下の「任せてほしい」サインに合わせた対応をとってしまうと、組織の前提に逆らったこの考えを肯定することになってしまいます。その場では部下が喜んでいい仕事をした気になれるかもしれませんが、長い目で見れば組織全体の機能不全につながりかねないハイリスクな行動です。

今与えられている仕事を実行し、その結果として評価が高まり、求められる内容が増えれば、 自然と「上司から任せられている」という感覚は得られます。したがって上司は部下の要望に合わせるのではなく、部下に「何を求められているかをしっかりと認識し、その実現によってのみ評価が高まる存在である」ということを理解させなければなりません。

そこに個人のやりがいや自己実現は関係ありません。それらはあくまで部下が自ら、個人的に見出すものです。したがって社長をはじめとするマネジメント側は「任せられている感じがしない」などという個人の感覚に応じて仕事の内容を変えるべきではないのです。

参考リンク:『伸びる会社は「これ」をやらない!

「モチベーション3.0」を引き出すような動機づけと支援を行う

「モチベーション3.0」とはアル・ゴア元副大統領のスピーチライターであったダニエル・ピンク氏が提唱した組織マネジメント理論です。この理論は人間の感じるモチベーションを以下の3つのバージョンに分類しています。

・モチベーション1.0:生存目的の動機づけ。

・モチベーション2.0:アメとムチ=賞罰による動機づけ。多くのビジネスの現場ではこの方法が用いられる。

・モチベーション3.0:内面からやる気を引き出す動機づけ。自律的、自発的に人間が行動する原動力となる。

部下の「任せてほしい」サインは「今の仕事の意義が見出せない」「やりがいを感じない」と言い換えることもできます。これはつまりモチベーション1.0や2.0ではなく、3.0が不足しているということです。

例えば、内発的な動機を引き出す要素として「才能の開花」「自己の成長」が挙げられます。部下目線では一見小さな仕事に見えたとしても、目の前の仕事で得られる経験が自身のスキルアップや成長に繋がると理解できれば、仕事へのモチベーションが自然と生まれるでしょう。部下が将来どのような仕事をしたいと考えているのか、どのような能力を伸ばしていきたいのか、上司であれば普段の会話の中で把握しておきたいものです。先ずはこのような部下の基本的な情報(夢、目標、伸ばしたい能力)を整理して、現在任している業務との結びつきを見つけましょう。そして、「今の業務をしっかりこなせるようになれば、〇〇なスキルが身に付いて、△△な業務にもチャレンジできる」と目線を高めさせます。

ただし、仕事のやりがいや意義を伝えようとして昇給や昇格をさせてはいけません。それはモチベーション2.0の賞罰による動機づけになるからです。モチベーション3.0を実施するには、あくまで非金銭的報酬を重視するよう心がけましょう。

用語集リンク:モチベーション3.0

「EQリーダーシップ」に学び、部下にやりがいや仕事の意義を理解させる

「EQリーダーシップ」はリーダーシップ論のひとつで、リーダーに求められる能力は重視されがちな「感情抜きの知性(IQ)」だけでなく、人間の感情を理解する能力や意思決定の際の直観力であるEQが必要だとする考え方です。この理論を提唱した心理学者でビジネスコンサルタントのダニエル・ゴールマンは、著書『Primal Leadership』のなかで以下の6通りの「EQリーダーシップ・スタイル」を示しました。

1. ビジョン型:共通の夢を提示して、メンバーを動かす。
2. コーチ型:メンバー各人の希望を組織の目標と結びつける。
3. 関係重視型:メンバー間をつなげて協調させる。
4. 民主型:提案を奨励し、参加を通じて組織の実行力を作り出す。
5. ペースセッター型:達成が難しく、やりがいのある目標を設定し、達成を目指す。
6. 強制型:緊急時に進むべき道を明確に示し、メンバーの恐怖を鎮める。

このうち「任せてほしい」サインを出している部下に対して求められるのは、どのEQリーダーシップでしょうか。例えば、任せて欲しいと思っていたプロジェクトから外れてしまった部下が、与えられた仕事に対する意欲が低下してしまっている場合、ビジョン型のリーダーシップが当てはまると考えられます。部下と個別面談の時間を設定して「私達の目標は〇〇なので今回はこのように人員を配置した。そして、目標達成のためには君の今のポジションでの働きが必要だ」と、部下の仕事の意義を伝えるべきです。つまり、上司は、部下に与えられた業務が組織の目標達成に必要なことや、組織の方向性(ビジョン)を明確に伝えることで、任せられている業務への意欲を高めることができます。

「EQリーダーシップ」において求められるのは、論理や理屈だけに依存せず、感情を込みにして部下を導くマネジメントです。したがって、重要なのは部下の希望や感情に寄り添って共感し、その共感に基づいて仕事のやりがいや意義を理解してもらうことでしょう。

用語集リンク:EQリーダーシップ

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いかがだっただろうか。部下の要望を鵜呑みにするのではなく、現状の部下の仕事と組織としての仕事の遂行を鑑み、部下との共感を持ちながら、部下のモチベーションを上げていく対応をするのがベストだということがおわかりいただけただろうか。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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