1人暮らしの長い父親は、適度な距離感を保ってくれた

由美佳さんの不安は杞憂に終わる。両親は別々に暮らしながらも離婚することはなかった。母親と由美佳さんの2人暮らし、父親の1人暮らしという生活は、大学生のときに終わりを迎える。

「私が大学進学で上京することになったんです。できれば東京で1人暮らしをしたかったけれど、父が東京にいるのだからと一緒に暮らすことになりました。そのときには母親は手伝いから本格的に仕事をしていたこともあり、1人で実家に残ることになりました」

過去に父親と一緒に暮らしていたのは、由美佳さんが覚えていないくらい小さい頃だけ。同居することに由美佳さんは不安を感じていたが、その生活は思いのほか楽だったと振り返る。

「父親は母親のようにうるさくなくて、悪く言うとおおざっぱなのですが、それが心地よかったんです。お互いに自分が関係ない部分は無関心で、朝に顔を合わせたときに『晩御飯は?』と聞かれるだけ。冷蔵庫のものなどを買うときは家の食費と消耗品用の財布があって、そこからお金を出します。追加したものは、『トイレットペーパー買いました』とメールするだけ。親子というよりルームシェアをしているような感覚でした」

正月などの大型連休も、父親とは別々に母親のいる実家に帰省。その生活を由美佳さんは気に入り、東京で就職を決め、そのまま父親と暮らすことを選択した。

「たまに実家に帰省すると、母親は親として甲斐甲斐しく私の世話をしてくれます。それも心地よかったんです。3人で過ごすときの妙な緊張感はそのままでしたが、父との暮らし、母とのたまに会う関係が気に入ってしまって、私は就職も東京で決めて、そのまま東京で暮らすことにしました。母親も一緒にお店をやっている友人と仲良く過ごしているようだったので、このかたちが私たち家族のベストのような気がしていました」

単身赴任が終了し、両親は再び同居をするが……。【~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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