邪魔だと感じていた存在は、大人になった親子を繋ぐ人になった

聡美さん親子が関わり合うのは、大型連休の帰省の時だけ。大学で家を出てから地元に戻ることもなく、家族に連絡を取るときは母親ではなく父親に連絡をしていた。従姉との関係はないに等しいものだったという。

「引っ越しの保証人などは父親にお願いをして、母親とは帰省時のみんなでいるときに会話をするぐらいでした。従姉ともそんな感じで、酷い言葉をかけてしまいそうでわざと2人きりにならないようにしていましたね。

自分が大人になるにつれて母と従姉の関係に対する嫉妬心みたいなものは減っていきましたが、それに比例して母親や従姉に対して無関心になっていきました。考えないようになっていき、このまま関係がなくなってもいいとさえ思っていました」

そんな関係は、聡美さんが結婚して子どもが生まれてからも変わらなかった。関係に変化が起こったのは、母親が関節症を患い、普通に歩行することが難しくなって介護が必要になったこと。一人娘ですでに結婚して家族がいる聡美さんには、親の世話を1人で抱えることは難しかった。その負担を父と従姉と分け合うことができたのだ。

「従姉も結婚していて、子どもはいなかったけれど仕事もしていたし、母の介護は負担だったと思います。でも、従姉は介護の経験から介護士として仕事をしていて、『役に立つから、仲間に入れてほしい』と言ってきてくれたんです。

母親のことも私のことも助けてくれました。父親なんかよりもよっぽど頼りになりました」

年齢を重ねた親子の間では気持ちのすれ違いが起こりがちだが、聡美さん親子は従姉という親族が関わったことでより複雑化していた。その従姉は聡美さんの母親の介護に悩む聡美さんの相談に乗り、手伝い、聡美さんと母親に寄り添った。1人で抱えてしまうことが多い親の介護では、誰かに頼ることでストレスが軽減されるという。従姉という存在によって一度はこじれてしまったが、あのときの母親が従姉に差し伸べた手は間違いではなかったのだ。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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