サレ妻という母の気持ち
母親は「あの人から求められることが嫌で仕方なかった」と言った。
「求められたくないから、父に『外で処理してきていい』と言ったそうです。離婚してスッキリした母は、娘にそこまで赤裸々に伝えてきました。
でも、母親が許したのは、そういう夜のお店に行くことだけだった。それなのに父は外で女性を作り、その人に本気になったんです。母親からしたらそれが許せなかったようです」
母親が離婚を了承したのは、父が離婚を求めてこなくなったから。母親の予想にすぎないが「相手の女性と別れたようだ」と思ったからだという。
「真相は知りませんが、父は再婚することなく、今も1人です。
父の浮気を容認してから、『家計に入れる額を決めて、それ以外は自由にするようにした』と、母は父が自由に使えるお金を増やしたんです。そのお金は、母の『夜のお店で働く女性を相手に遊んでいい』という発言の本気度を示すものでもあった。それなのに、素人の女性に父親は手をつけた。きっかけを作ったのは母親なのに、母親からしたらそれは裏切りでしかなかったんでしょう」
母親の気持ちがまったく理解できなかった真帆さんだったが、コロナ禍に夫に浮気をされ、サレ妻の気持ちが少しわかったという。
「夫はコロナ禍で出勤せずにリモートワークになっていたのに、私に出勤したと嘘をついてホテルで浮気相手と過ごしていました。浮気が私にバレたときには夫は何度も謝ってきましたが、私が一向に許さなかったからか、離婚するという選択肢が出てきたんです。そのときに、私と別れて他の女性と幸せになるなんて許さないという気持ちが湧いてきました。変な女のプライドですよね。母親もこれだったのかなって思います」
真帆さんは大人になってから両親の間で起こった事実を知った。真帆さんの会話の中には、「~そうだった」、「~と思っていた」など、両親に対して想像での発言が多かった。子どもが大人になってからではなく、子どもだった当時に、子どもにもわかるような言葉で親の関係を伝えることは必要だっただろう。真帆さんは違ったが、親が離れていった原因を自分のせいと思う子どももいるからだ。想像はより子どもを親の都合で振り回すことになりかねない。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。