なぜ、家に帰らないのか
洋食店で4000円程度の会計を済ませて、21時に店を出ます。店を出ると車もまばらな幹線道路沿いを歩いていきます。
1時間半は歩き、慣れた様子で住宅街にある銭湯に入って入浴。私も一緒に入ったのですが、下着はとてもシンプルで機能的なもので、浮気をしている女性の艶っぽさは微塵もありませんでした。
仕事用のトートバッグの中から歯ブラシと和手ぬぐいを出し、銭湯備え付けのシャンプーとボディソープを使い、念入りに歯を磨いて、出てきます。
住宅街を抜けて、駅に到着。自宅方面に戻る電車乗り、自宅最寄り駅で降下車。家に向かって歩いていきます。家を見上げて、和雄さんが起きている気配を感じたのでしょうか。
ガレージの中にあるクルマに入り、後部座席からブランケットを引っ張り出し、それにくるまって仮眠。
深夜0時過ぎに仮眠から目覚めると、和雄さんが寝たことを確認し、自宅に入って行きました。
その後、何日か調査しましたが、全く行動は同じパターン。
浮気の気配は全くなく、帰宅恐怖症の男性の典型的な行動パターンです。以上を和雄さんに報告すると、「妻は家にいるのがよほど苦痛なんでしょうか」とがっくりと肩を落としていました。
後日、家族を交えて話し合ったところ、妻は「ひとりになりたい」とボソッと言ったそうです。
「妻は、“私はひとりが好きなのに、周囲のすすめで結婚し、子供も産んでしまった。子供は愛しているけれど、成人したら一人の人間。もう親子という甘えた関係はやめて、一個人として付き合いましょう”と宣言しました。家族がいるとなると、責任が生まれて、食事の世話をしなくてはいけないような感じになり、それも苦痛だと。別居夫婦になるかと言ってみたら、それは健全ではないと言うんです」
妻は「ひとりになりたい」と言い、和雄さんが「僕のことは気にしなくていい。好きに生活してほしい」と答えたら、「ありがとう」と。
それ以降、和雄さん夫妻は“単なる同居人”としての生活をスタート。それがとてもうまくいっているとのこと。
「調査結果を見て、妻は本気で一人になりたがっていることがわかりました。それをわかったのがよかった。もう今では、お互いに“何時に帰ってくる?”とかそういうこともない。僕もゴルフに行きたい放題だし、妻も友人と房総半島に小型バイクでキャンプしながらツーリングなどをしている。その間、孫を預かることもできますしね。それにつけても調査の証拠は雄弁ですね。彼女の真意がわかってよかったと思っています」
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/