片づけられない女性が育児をしたらどうなるか

一方、恭子さんは39歳の時に、遅い出産と同時に結婚をした。そのときは、とても驚いたという。

「結婚式の時の“負けた”という感覚はなく、“大変だな”と思った。相手は10歳年下の会社員で、恭子のことを愛していた。恭子の実家が持っているアパートで生活していたんだけど、相手も若いからお金がなかったんだろうな。よく“お金貸して”とうちに来て、私は困っていないから、1~2万円とか、5万円とか渡していたの」

恭子さんの夫は、家が散らかっていても平気な性格だったという。

「夫婦でタバコを吸うし、片づけられない家ってすごいの。壁は茶色でそこたらじゅうに空き容器があって、本とかおもちゃとかが膝くらいの高さまで積んである。そこで3歳の息子が遊んでるの。さすがの私も驚いて、モノを捨てようとするんだけど、どれを捨てていいかわからなくなって、帰って来た」

それでも子供は育っていく。恭子さんの夫は朝起きられたので、息子は“まとも”に学校に行けたが、遠足や運動会などの行事を忘れたという。

「息子も難しい子で体が弱く、恭子が息子の存在を忘れちゃうこともあって、一時期は児童養護施設に入っていたことも。何かあると、恭子には10万、20万円とお金を貸した。ただ、“絶対に大学に行かせた方がいい”と言って、あれこれアドバイスして、息子はとりあえず大学に行ったの。入学金は実家が出したみたい」

息子が成人した20歳のとき、恭子さんは夫から離婚を切り出された。

「他に女性がいるわけでもなく、お互いに限界だったみたい。夫の方は“息子が成人したから、親の役目は終了”と思ったらしく、それから一切音信不通。息子のLINEもブロックしたんだって。20歳とはいえまだまだ親は必要。私なんて59歳でも両親がいないと生きられないんだから」

それから、恭子さんは再びスナックで働き始める。

「水を得た魚のようだって。当然、息子のことは放置しているみたい。この前、飲みの誘いが来て居酒屋に行くと、60代の男2人と恭子がいて、ひとりの男に恭子がしなだれかかっているの。私が席に座ると、隣の男が手を握って来て、私の背中やお尻を触ってきたの」

おそらく、恭子さんは「私の友達に独身のコがいて、彼氏を募集中なの」とでも言ったのだろう。

「それから、いろんな男と遊び歩いている恭子を見かけて、私にも“誰か遊べるコ、いない?”とLINEがしょっちゅう来る。この前、親が行っている病院の待合室で、恭子のお兄ちゃんとバッタリ会ったら、恭子の息子は実家で引きこもっていると。“なんとかしてよ”って言われたんだけど、私にはどうにもならない。その前に私、4月に学費が足りないって10万円を渡したのよ」

茜さんは「私が親になったら、皆を不幸にする」と、結婚と出産を人生から排除したという。

「それだからというわけではないけれど、やはり恭子にはまともに親になってほしかった。恭子の実家は裕福だったけど、息子の人生の面倒が見れるほど、お金はないと思う」

茜さんが恭子さんに貸したお金の総額は、おそらく200万円くらいだという。誰かが助けてくれると思い、それが当然と思って生きていく先に、何があるのか。茜さんと恭子さんという、同じ生き辛さを抱える女性の道を分けたのは何なのか……生産年齢人口が減り続ける今、恭子さん親子のような人が働くための社会的な取り組みも、必要なのではないだろうか。

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。

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