「間違った結婚をしてしまった」
2人は近くの駐車場に行き、大きな外車に乗って出かけます。バイクの探偵が尾行したところ、千葉方面にある大型家具の店に入っていき、あれこれ物色。
その様子を動画で確認すると、熟年の新婚カップルのよう。妻は「元気いっぱいの彼女」といった感じの雰囲気で、ベッドやソファーを楽しそうに見て、決めていました。
会話を聞くと、男性は妻の元カレで自身の妻とはとっくに離婚。男性は自身が表に出ることはやめ、スタジオミュージシャンに転身。エンジニアやプロデューサーとしても成功しているようで、お金に余裕がある男性の雰囲気を醸し出しています。
2人はカフェに入り、家具の感想を語り合っていました。妻は「親のこともあるし、夫もうるさいし。離婚は先になるけど、家は出る」と言っていました。
男性は「離婚してほしいな。僕たちは間違った結婚をしてしまった。これからの人生は君を妻として過ごしたい」と語っていたのです。
妻は男性の手を握り、うるんだ目で見ています。その表情がドキッとするほどセクシーでした。男性は「行こうか」と立ち上がり、車で近くの高級ラブホテルに入っていきました。手を繋いで中に入っていったそうです。ラブホテルは単独で入店すると目立つので外で待機。
それから3時間が経過し、20時過ぎに出てくると、再び新宿へ。男性は夜からスタジオに入るらしく、名残惜しそうに別れていました。
妻は家には帰らず、娘の家に行き、終電まで過ごして帰宅。夫である依頼者・浩司さんを避けているのは明白です。
翌日は自宅から出社し、17時に退勤。娘と待ち合わせて都心の百貨店で買い物をしていました。娘は妊娠したようで、マタニティウエアを購入。19時にレストランフロアに行き、娘の夫が合流。それから、昨日の男性が加わりました。
4人はかなり親しいようで、娘は男性を「○○のおっちゃん」とか「〇〇ちゃん」と呼んでおり、家族のようでした。
その後、4人で娘の家に行き、1時間ほどして帰宅。男性と妻は手をつないで新宿のビルに行き、妻は再び終電で帰宅。男性は車に乗り、八王子の自宅に帰宅。男性は門の前に「ご自由にどうぞ」と書いた紙を貼り、本や食器を置いていたので、引き払う予定なのでしょう。
以上の様子を依頼者・浩司さんに報告すると、絶句していました。
「これは予想外でした。ここまで私を避けているとは思わなかった」と頭を抱えていたのです。
そして「妻と話し合います」と家に帰っていきました。私は夫婦関係を回復するためのコミュニケーションスキルを学んでおり、アドバイスをしようとしたのですが、走り去ってしまったのです。
この場合、妻の心はかたくなになっているので、いきなり距離を詰めるのはご法度。妻の話をすべて聞くことが大切なのですが、きっと浩司さんは真逆のことをしてしまうのではないかと危惧していました。
そして、その心配は現実になってしまったのです。
浩司さんは、いつもは妻が帰宅する前に眠ってしまうのですが、帰宅する妻を待ちかまえて、「浮気は許すから、一緒に暮らしてほしい」と言ってしまったのです。
妻にしてみれば、浮気を「許す」と言われるのは見当違いというもの。
「今までのことを謝りました。そして仲直りをお願いしたのですが、妻の気持ちは固く、話せば話すほど気持ちが離れていくのを感じました」
おそらく、浩司さんは自分の考える正義をまくしたててしまったのでしょう。妻は「あなたにはもう、何の関心も持てない」と言ったそうです。
「敵(妻)もさるもの。以前の私の浮気の証拠、モラハラなどの証拠を全部押さえていました。まさか人生の最後に、こんなどんでん返しがあるとは。仕事もこれからどうなるかわからないし、どうしたらいいでしょうか」
浩司さん夫婦のように、自分は正しいと思っていても、相手にとってはそうでないことは多々あります。このところ、熟年夫婦の調査依頼が増えているのですが、寛容さが足りない人は少なくありません。
受け入れ合い、認め合う気持ち、相手を信頼することが、結婚生活を続ける上で大切なのではないかと感じるのです。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/