写真はイメージです

子どもの能力を伸ばすために最も大切な時期は、小学校に入学するまでの乳幼児期と言われています。この時期に、興味のあるものや関心事に集中できる環境をつくってあげることが大切だそうです。
そこで、絵本の読み聞かせを通じて、子どもの脳と心を育てる方法を述べ4万人以上の親や教育関係者に指導してきた仲宗根敦子さんの著書『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方選び方』から、絵本の読み聞かせで子どもの能力を伸ばす方法をご紹介します。

文/仲宗根敦子

6歳までの子どもは、左脳よりも右脳が優位

脳神経外科医の篠浦先生に監修していただきながら、少し専門的に詳しく説明します。

右脳と左脳は、大脳新皮質の中での、大きな機能のくくりになります。右脳と左脳の機能を一言で言うと、右脳は関係性の脳、左脳は理性の脳です。右脳は、感覚や感情、イメージなどの機能が集まっています。調和を重んじ、現実に対応するときに使います。身体を使って、何かを行うことに集中したり、人の表情を見て感情を読み取ったり、言語を使わない機能が集まっています。右脳は人やものの境界をできるだけなくして、全体を一つにしていこうとする脳と言えます。

一方で左脳は、読み書き、計算、会話、論理的に考えるなど、高度な機能のすべてが詰まっています。進歩を重んじ、質を高めるときに使います。人やものの境界を明瞭にして、理性を使って、何が良くて何が悪いのかと言った、それぞれの意味づけをしようとする脳と言えます。

6歳までの子どもは右脳が優位です。言語の理解が進むことで左脳の機能が徐々に育っていきます。

右脳には言語を使わない機能が集まり、人やものの境界線がありません。いわゆる何かを基準とした判断に基づく、「良いこと・悪いこと」という境界線もありません。

一方で大人の私たちは、何かを基準とした判断( 例えば、礼儀正しい→良いこと、落ち着きがない→悪いことなど)による良い・悪いの境界線を持っています。ですから、子どもに対して、悪いことに目が行くと、イライラしたり、怒ったりするのではないでしょうか。

しかし、言語や理性を理解する子どもの、左脳は、まだまだ成長途中です。「何度言ったらわかるの!」「いい加減にしなさい!」などと、声を荒らげて怒ったり、イライラをぶつけてしまうと、子どもにネガティブな感情だけを植え付けてしまいます。もちろん、しつけや社会のルールはとても大切なことです。そういうときはネガティブな言動にならないように根気強く、理解できるまで、何度も言い聞かせてあげましょう。

そうは言っても、育児に365日休みはありませんし、言っても聞かない子どもに、ほとほと疲れる気持ちは本当によく分かります。私もたくさん経験してきました。

そんな、子育てでいっぱいいっぱいなママにこそ、絵本育児が有効です。絵本は知育にも役立ちます。「虫歯から歯を守るために、歯磨きをすることの大切さ」「おふろに入ると、気持ちいいという感覚」「おしっこをトイレでできるようになる方法」などを、絵本の物語と絵からイメージできます。言葉の理解を通して、思考力が育ち、左脳の発達も促します。そして何より、ママのぬくもりを感じながら、絵本を読んでもらえることで、ママとの一体感が得られるのです。読み聞かせを通して、子どもといい状態で過ごせることが多いと、ママもいい状態でいられますよね。

本書を手に取ってくださったあなたは、子どもの幸せを常に考えていると思います。そして、子どもの幸せが自分自身の幸せと捉えていると思います。それこそが親子の境界線がない、右脳的な感覚なのです。

読み聞かせは右脳のどこに効く?

右脳と左脳は役割は違いますが、優劣はありません。どちらの役割もそれぞれとても重要です。一番大切なことは、子どもが成長する過程において、右脳が優位な幼少期に合わせた働きかけをすることです。絵本の美しい絵やストーリーはもちろん、親子で読み聞かせを楽しむ時間は、子どもに安心感を与え、右脳の中の感情を司る扁桃体(へんとうたい)に強く働きかけます。

では、実際に乳幼児期の子どもへの読み聞かせ方についてお伝えします。

これまで、子どもは右脳が優位だとお伝えしてきました。子どもは言語で理解するよりも先に、ママやパパの表情を見て感情を読み取っています。さらに、現実と物語の境界線があいまいです。絵本の中の物語も自分の体験として捉えます。物語を聞きながら絵を見て、様々なイメージをふくらませ、主人公になり切って、喜怒哀楽を感じながら、擬似体験し、様々な感情や幸福感をインプットしていきます。絵本は、まさに右脳に効く最強のツールなのです。

読み方のポイントはたった3つ

1つめのポイントは、「ゆっくり読まない」ということです。

右脳は情報処理範囲が広いので、ゆっくり読むことは、子どもが絵本に集中しない要因でもあります。左脳の情報の処理は1秒間で40ビットですが、右脳は1000万ビットと言われるくらい処理量が違います。右脳は見る、聞く、感じるなどの感覚的な情報をあっという間に取り込みます。例えると、写真をパシャッと撮るように全体を一瞬で把握するので、自然な会話のスピードで絵本を読むことが、子どもの脳の特徴に合っているのです。

2つめは「声色を変えない」こと。子どもは大人以上に見る、聞く、感じるなどの感覚が敏感なので、あえて声色を変えなくても物語を楽しめます。逆に、大人が声色を変えたり、演技をすると、親の価値観をそのまま受け取ってしまいます。例えば、「この場面で感動して欲しいなぁ」と思うシーンがあるとします。すると、無意識に読み手は感情をたっぷりと入れて、声色を変えます。しかし、子どもの感動ポイントは親と同じとは限りません。声色を変えずに読み聞かせることで、子どもは、自分の感情を育てることができます。そしてまた親も子どもの個性や気質を知ることができます。

さらに読み聞かせは毎日のことなので、毎回声色を変えたり、感情移入すると、親自身も、疲れてしまいます。たまの1回の感動よりも毎日の読み聞かせを習慣化し、多読をする方が、乳幼児期の子どもの脳にとても良い影響を与えます。

読み聞かせが習慣になると、子どもも自然に本を楽しめるようになります。そして本をたくさん読んできた子どもは、目が活字を追うことに慣れているので、中学生になったころには、参考書や本を読む速度が速くなり、勉強の効率も上がります。

3つめのポイントは「読んだ後に子どもをほめてあげる」ことですが、これは心に作用する、一番重要なポイントです。

そうは言っても、絵本を読み終わった後にほめる言葉が見つからない、自然と出てくる言葉がない。という相談をよく頂きます。絵本の読み方の指導研修をする中で、実際に二人一組で練習をしてもらいます。声色や、本のめくり方にはみなさんとても注意を払い、上手ですが、肝心の、ほめる、認めるという大事なポイントをすっかり忘れてしまっている方が本当に多いのです。それくらい、私たち日本人は、意識しないと、ほめることが難しいのです。大げさに考えず、いくつかパターンを用意しておくといいでしょう。

(1)アイメッセージで伝える
アイメッセージとは「私(アイ)」を主語にしてメッセージを伝える手法のこ
とを言います。
・ママは聞いてくれて嬉しかったよ!
・ママも一緒に読めて幸せ〜
・ママ、すごく楽しいなぁ
・ママは、楽しかったよ

(2)感謝や愛情を表現する
・大好きだよ
・聞いてくれてありがとう
・ママは○○ちゃんに読めて嬉しかったよ
・最後まで聞いてくれてありがとう

(3)子どもを観察して状態を伝える
・よく集中していたね
・よく聞いていたね
・絵本が大好きなんだね

(4)英語のフレーズで軽やかに伝える
・THANK YOU !
・GOOD BOY!
・GREAT!
このような言葉を用意しておくといいですよ。

重要なことは、本心で心から伝えることです。心にもないことを伝えることは、かえって良くありません。義務感からではなく、愛する我が子に読み聞かせできること、子どもが読み聞かせを楽しんでくれていることに、親自身が喜びを感じることがとても大切です。そうすることで、自然に子どもをほめたり、認めたりすることができます。

* * *

『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方選び方』(仲宗根敦子 著)
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仲宗根敦子(なかそね・あつこ)
親と子のしあわせな未来をつくる、絵本の読み聞かせ方を指導する一般財団法人「絵本未来 創造機構」代表理事。 大手航空会社に勤務中、長男が2歳、次男が0歳のときに、警察官だった夫が殉職。その後フルタイム勤務のシングルマザーとして、子どもたちに接することができる短い時間の中で育児に悩み、息子たちに絵本の読み聞かせを始めたところ、子どもの変化と自身の精神安定のために、いかに絵本が良いかを実感。その内容を体系化し、1人で講座をスタートさせ 2017年に協会設立。絵本講座以外に文章講座、夢を叶える講座などを主催し、小・中・高校・大学や公立図書館、企業等での講演を行い、団体設立からわずか4年で、約4万人が講座を体験。また、日本全国はもちろん、海外では台湾・シンガポール・イギリス等で、同財団の認定講師、約800人が、絵本読み聞かせのプロフェッショナルとして活躍している。

 

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