コロナ禍中は常連さんのみ営業

コロナ禍中は、お店は表向き休業していたけれど、常連さんのみで営業していた。

「みんな不安で、私も毎日お店に行っては、ソーシャルディスタンスを取って、おしゃべりしていたんですよ。ロールカーテンを降ろして、薄暗い感じでね。花子とお店のママと女3人で“いつ終わるのかね”なんて言いながら、コーヒーをいただいて。中学校の教室で、隠れてお菓子を食べているみたいでしたよ」

そんな2020年4月に、花子さんがある男性を連れて店に来た。

「それが、クラス委員をしていた中村君。野球部のキャプテンで昔と変わらずカッコよかった。奥様をガンで亡くされたんだけど、最後の看取りがコロナでできなくて、ガックリと気落ちしていると知って、花子が連れてきたの。中村君は奥様を心から愛していた様子でね。私も主人が大好きだった。ずっと主人のパジャマと一緒に寝ていることを話すと、“可乃子ちゃんもそうなんだ。僕もなんだ”と言っていた」

その後、可乃子さん、花子さん、中村君の3人でお店で会うようになる。

「中村君は会社を経営しているから、そんなに頻繁には会わなかった。再会から1年が過ぎた今年の夏は、3人で近場の温泉に行こうかって話にもなったころに、ちょっとした異変があったのよ」

それは、花子さんから「可乃子ちゃんは、旅行に来るのかしら?」と何度も聞かれたこと。

「旅行といっても、片道50キロ程度のところにある日帰り温泉よ。温泉に入って、流行りのサウナに入って、マッサージしてご飯食べて帰ろうって会。それなのに、私が行くと不都合があるみたいな言い方をされる。そこで私はピーンときたの。“花子は中村君が好きなんだ”って」

そこで可乃子さんは花子さんに「中村君が好きなの? それなら私は行かないよ」と冗談めかして言った。すると「そんなことない! もう私は女として終わっているから」と言った。

【言葉と気持ちは真逆……恋の嫉妬心からあらゆる嫌がらせを受けるように…その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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