つかず離れずの穏やかな友情

和子さんの息子は中学受験に失敗し、地元の学校に進学。そこで頭角を現し、バスケ部のキャプテンと生徒会長を兼任。高校は地味だけれど確かな進学実績がある都立に入った。

「その頃は、美子さんからの連絡も少なくなり、私も夫の浮気問題から“これからは手に職をつけなければ”と、宅地建物取引士試験に挑戦し合格。その頃から仕事や同僚との付き合いが忙しくなり、美子さんとは年に1回くらいの頻度になってしまったんです。それでも私はその優雅な時間と、つかず離れずの穏やかな友情、高嶺の花のような美子さんと心から打ち解けられることが楽しかった。それに、あの美子さんから“私のことをわかってくれるのはあなただけ”と言われることもうれしかったんですよね」

2人の友情が続いた13年目に、互いの息子が大学受験を迎える。

「息子が名門国立大学に合格したんです。美子さんの息子はそうではないことを知っていたので言わなかった。彼はいじめで名門中学校を退学になった。加えて、高校は海外の学校に行かざるを得なかったことも知っていた。だから、互いの息子に対しての話はしないようにしていました。ただ、その日は美子さんが“隆君(息子)はどの大学に行くの?”としつこく聞いてきた。そこで得意になる気持ちもあって、大学名を言ったんです。すると美子さんは絶句し、“おっとりしている隆君(息子)には、あの大学は向かないんじゃない? 進学させない方がいいと思うの”と言ったんです。あれは衝撃でしたね」

それから、10年ほど疎遠になってしまったという。

「折に触れて思い出していたのですが、以前と同じ通りというわけにはいかないですよね。あと、美子さんは私に優越感を感じていたこともはっきりと自覚してしまった」

【夫を介した再会を経て、日常は浸食されていった~その2~に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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