文/永松茂久
ビジネスのシーンで、多くの方と名刺交換をしていると思います。では名刺交換で一番最初に見るべきなのは、いったいどこだと思いますか? 「肩書」それとも「名前」?
名刺の渡し方、受け取り方のマナーは習っても、会社では教えてもらえないコミュニケーションがうまくいく、名刺交換でのポイントとは?
「肩書き」の前に「相手の名前」を覚える
初対面で名刺を交換した時、最初にどこを見るか――。
それによって、会話の弾み方やあなたの印象は変わります。
多くの人が、その人の会社の名前や肩書きに目を止めがちです。
しかし、最初に覚えてほしいのは、相手の会社でも肩書きでもなく、相手の名前です。
名前を起点にすると、初対面であっても会話が弾みやすいのです。
名前というものは、その人が生まれてからずっと共に生きてきたものです。また、名前には、その人のご両親の思いが詰まっています。
ビジネスネームだとしても、その人自身が考え抜いてつけたもの。思いが詰まっている点では変わりありません。
名刺とは、そんな大切な所有物を、一瞬で共有させてもらえる素晴らしいツールなのです。
相手の名前を繰り返し言うことで、頭にインプットする
まず大切なことは、初対面で名刺を受け取ったら、すぐにしまわないこと。
しまうとしても、相手の名前と字面をすべてインプットし、名前を起点に会話を広げてからにしましょう。
そしてもう1つ、うまくいく人は、初対面で名前を聞くと、すぐに相手の名前を呼び始めます。
例えば、こんな感じです。
「はじめまして。〇〇株式会社の田中と申します」
「はじめまして、〇〇(あなたの名前)と申します。田中さん、この会社の商品はよく使わせていただいています」
これはプライベートでも同じです。例えばこんな感じです。
「はじめまして。野村千恵子と申します」
「よろしくお願いします。〇〇です。野村さんは普段お仲間さんからはなんて呼ばれているのですか?」
「よく『ちーさん』と呼ばれています」
「仲良くなりたいので、私も『ちーさん』と呼ばせてもらってもいいですか?」
このやりとりでは、自分が相手と仲良くしたいこと、そして仲間になりたいことをさらりと宣言しています。
「初対面でそこまで相手の懐に入るのはちょっと……」
と思われる方は、「野村さん」から始めてもかまいません。
つまり、ここで重要なことは、
「名前を知ったら、すぐに名前で相手を呼び始めること」
「できる限り相手の名前から会話を始めること」
の2つです。
名前を覚える人は愛される
コミュニケーションの上手な人は、相手の名前を話の中にちりばめながら、相手との絶妙な距離感を作ることに長けています。
何度もお伝えしてきましたが、人は誰もが自分を一番大切に思っています。
その大切な自分の名前を頻繁に呼ばれると、自分自身が受け入れられた感じが伝わり、安心感や親近感を抱きやすいのです。
「名前から会話を広げる」「名前を頻繁に呼ぶ」
相手の名前にフォーカスするのは、相手の存在そのものにフォーカスするのと同じことなのです。
いきなり面白い話や込み入った話などしなくても、相手の名前にフォーカスして話すだけで、初対面の相手とも一気に心理的距離を縮めることができます。
初対面で好印象を残した後は、2回目以降会った時に第一声で相手の名前を呼べば、あなたの好感度は飛躍的に上がります。
永松茂久(ながまつ・しげひさ)/株式会社人財育成JAPAN 代表取締役。大分県中津市生まれ。2001年、わずか3坪のたこ焼きの行商から商売を始め、2003年に開店したダイニング陽なた家は、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店になる。自身の経験をもとに体系化した「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で多くの講演、セミナーを実施。「人の在り方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ45万人にのぼる。2016年より、拠点を東京麻布に移し、現在は執筆だけではなく、次世代育成スクールである永松塾、出版コンサルティング、イベント主催、映像編集、ブランディングプロデュースなど数々の事業を展開する実業家である。著作業では2020年、書籍の年間累計発行部数で65万部という記録を達成し、『人は話し方が9割』の単冊売り上げで2020年ビジネス書年間ランキング1位を獲得(日販調べ)。2021年には、同じく『人は話し方が9割』が「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にて、「特別賞/コロナ禍を支えたビジネス書」を受賞。著書に『喜ばれる人になりなさい 母が残してくれた、たった1つの大切なこと』(すばる舎)、『在り方 自分の軸を持って生きるということ』(サンマーク出版)、『30代を無駄に生きるな』『20代を無難に生きるな』『影響力』『言葉は現実化する』『心の壁の壊し方』『男の条件』『人生に迷ったら知覧に行け』(きずな出版)、『感動の条件』(KKロングセラーズ)など多数あり、累計発行部数は200万部を突破している。