文/印南敦史

新型コロナの影響もあり、社会全体にどこかギスギスした空気が漂っている。不安は人の心から精神的余裕を失わせるので、当然といえば当然の話である。

とはいえ、そんな日常が心地よいはずはない。それどころか、やがてはさらに追い詰められ、悪循環に陥ってしまうことも考えられる。

だとすれば、なんとが突破口を見つけ出したいところだ。

そこで、“ジョーク”に注目してみてはいかがだろう? つらい状況も、笑い飛ばしてしまえばいいのである。

『世界の日本人ジョーク集 令和編』(早坂 隆 著、中公新書ラクレ)は、累計100万部を突破した同名シリーズの最新刊。「海外の人々が持つ日本人像を、ジョークを通じて楽しく学ぶ」ことをコンセプトとして掲げたものだ。

とはいえ、第一作が刊行されたのは2006年のことである。すでに15年の歳月が経過しているわけで、その間に社会も日本人も大きく変質した。

そこでシリーズ最新作の本書では、これまで通り日本人が登場する様々なジョークを気軽に楽しむことを土台としつつ、平成から令和への日本社会の移り変わりについて、わかりやすく学べるような構成を目指しました。日本の変化と不易。美醜と清濁。知識、教養として身につけておきたいこと。「日本人」というキャラクターがどのような「キャラ変」を遂げたのか。そんなことを笑いと共に知ろうというのが本書の筋書きです。
(本書「はじめに―『辛』という字に横棒を足すと?」より引用)

近年の変化と聞いた瞬間に思い浮かぶものといえば、やはり新型コロナだろう。そこで本書でも“コロナ禍における「新しい生活様式」の時代、後ろ向きのジメジメとした日本人論にも別れを告げたい”という思いから、新型コロナをもしっかりとジョークのネタにしている。

ちょっとしたジョークやユーモアをスパイスとしてまぶせば、湿っぽさや重たさが薄れるという考え方によるものだ。また、軽妙な話題のなかにこそ、真理のかけらが転がっていたりするとも考えられる。

第1章「コロナ禍における不思議な日本人」内の、「マスク政策」というジョークを見てみよう。

コロナ禍において、各国の政府が国民にマスクの使用を求めることになった。

アメリカ政府はこう発表した。
「マスクをすればあなたは英雄です」

ドイツ政府はこう発表した。
「マスクをするのがルールです」

イタリア政府はこう発表した。
「マスクをすると異性にモテます」

日本政府はこう発表した。
「みんなマスクしていますよ」
(本書27〜28ページより引用)

著者によれば、このジョークには元ネタがあるそうだ。「沈没しそうな客船から乗客を海に逃す際、船長は各国の人々になんといえばいいか」というもの。

アメリカ人には「飛び込めば英雄です」、日本人には「みんな飛び込んでいますよ」と呼びかけたというネタが、コロナ禍によって「変異」したということだ。

ここでは日本人の「集団主義」が特徴とされているが、今回のコロナ禍についても、思い出すのは話題になった「同調圧力」という表現ではないだろうか? いうまでもなく、多数意見に合わせるようにと暗黙のうちに他者を誘導することである。

事実、「外出時にマスクをしていないと周囲の反応が怖い」と感じる人が多いという調査結果も報告されている。マスクをしていない人を見かけた際、多少なりとも反応してしまう自分に気づくこともあるだろう。

その程度ならともかく、マスク未着用の人に対して過度に攻撃的な態度をとる「マスク警察」のような人々までが登場してしまうと、笑いごとではなくなってくる。

しかし、だからといって集団主義それ自体が悪いわけではない。自分の身の回りにていねいに気を配り、他者の迷惑にならないように留意して、自身の行動を律していくという好意であったなら、それはむしろ「日本人の美徳」と考えることもできるからだ。

そうした公共心こそが、ウイルスの感染拡大を抑制することにつながっているのではないかと著者も推測している。

事実、マスク着用の動機について、「自分が感染したくない」という真理と同時に「他者を感染させたくない」という思いが日本人には強いといわれる。そのあたり、個人主義の強いアメリカとはたしかに違うかもしれない。

だが冒頭でも触れたとおり、ここまでコロナ禍が長引くと、どうしても気持ちはささくれだってしまいがちだ。

そんな時代だからこそ、「ちょっと疲れてきたかな」と感じたときには、あえて気楽に本書をパラパラとめくってみてほしいと感じるのである。

現実を重く受け止めても、ジョークを絡めて流しても、残る答えはひとつだけ。だとしたら、笑えたほうがいいではないか。

『世界の日本人ジョーク集 令和編』
早坂 隆 著
中公新書ラクレ

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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