漢字を「それっぽく」使ってしまい、あとで意味が気になった経験はありませんか? 仕事の文章やSNSの投稿では、漢字ひとつで印象が変わることも。知らないうちに「違和感」を残してしまうのは避けたいところです。
検索はもちろん、いまはChatGPTなどのAIにもすぐ頼れる時代。便利な反面、答えをそのまま受け取るだけでは、知識は自分のものになりません。だからこそ、いま一度「読み」「意味」「使いどころ」を確かめておくことをおすすめします。
「脳トレ漢字」今回は、「現」をご紹介します。あの読み方ではないの? と想像しながら、漢字への造詣を深めてみてください。

「現」は何と読む?
「現」の読み方をご存じでしょうか?
正解は……
「うつつ」です。
「夢」の対義語として用いられ、目覚めている状態や、現実そのものを指す言葉です。古典文学でも「夢かうつつか」(夢なのか現実なのか)といった表現で頻繁に登場します。
「うつつ」と読むほか、「げん」とも読みます。「げん」と読む場合は、現在や現実、現場など、目の前にありのままに存在している事象や状態という意味になります。また、訓読みで「あらわ(れる)」とも読み、隠れていたものが見えるようになる様子を表します。
「現」の由来
「現」という漢字の成り立ちを見てみましょう。
左側の「王」は、実は「玉」(美しい宝石)を表しています。そして右側の「見」は、そのまま「見える」という意味です。つまり「現」という字は、本来「玉の美しい光沢が外にあらわれて見えること」を表す漢字なのです。そこから転じて、「隠れていたものがあらわれる」「目の前にある現実」という意味を持つようになりました。
一方、「うつつ」という大和言葉(和語)は、「現し(うつし)」という言葉が変化したものだといわれています。「この世」を意味する「現し世」(うつしよ)という言葉があるように、実際に存在している、確かな状態を指す美しい日本の言葉です。
「現を抜かす」の危うさと魅力
「現を抜かす」は、古めかしい言い回しに見えて、実は現代にもよく当てはまる表現です。趣味、推し活、ゲーム、動画配信、あるいはスマートフォンの短い動画に、つい時間を忘れて見入ってしまう… そんな経験は、多くの人にあるでしょう。
しかし、「現を抜かす」ほど何かに夢中になれる情熱は、決して悪いことばかりではありません。文学や芸術、あるいは現代の革新的なテクノロジーも、誰かが寝食を忘れて「現を抜かした」結果として生まれたものです。
大切なのは、夢や好きなことに心を遊ばせつつも、しっかりと「現」(うつつ=現実)に足をつけて戻ってくることができる力なのだと思います。

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いかがでしたか? 今回の「現」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 春のうららかな陽気の中、夢か現か心地よいまどろみを楽しむのも、たまにはいいかもしれませんね。
来週もお楽しみに。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











