そして、『べらぼう』に未登場の将軍が!
I:そして、『べらぼう』では、これまで大河ドラマに登場したことのない第10代将軍家治が1回目から登場しました。同じことを何度もいいますが、演じる眞島秀和さんが家治の肖像画にそっくりなのが気になってしょうがありません(笑)。
A:そして、第11代の家斉が未登場なのですが、第12代家慶以降は、「幕末史」に突入したということで、けっこう登場してきます。家慶は『徳川慶喜』で鈴木瑞穂さん、『篤姫』で斉木しげるさんが演じましたが、『青天を衝け』では、演歌の大御所吉幾三さんが演じました。第13代家定は「病弱」というのが定説なのですが、実はそれは演技だったという解釈を採用したのが『篤姫』。堺雅人さん演じる家定は斬新でした。『西郷どん』では又吉直樹さんが演じました。
I:第14代家茂は、『篤姫』で松田翔太さん、『龍馬伝』では中村隼人さん、『青天を衝け』で磯村勇斗さんが演じています。『べらぼう』で長谷川平蔵を演じる中村隼人さんの「家茂将軍」が見たい方はNHKオンデマンドでどうぞ。
A:そして、第15代将軍慶喜です。1974年の『勝海舟』では津川雅彦さんが演じていますが、津川さんは、家康、綱吉、慶喜と3人の将軍を演じていることになります。そして、大河の主役を張った3人目の将軍が『徳川慶喜』で演じたのは本木雅弘さん。最近では2020年の『麒麟がくる』の斎藤道三が思い出されます。
I:『青天を衝け』の草彅剛さんの慶喜も印象深かったですね。
A:(気を取り直して)15代勢揃いのついでに言及すると、2021年の『青天を衝け』には、「十六代様」と呼称された徳川家達公(演・三谷昌登)も登場しているのです。なんだかやっぱり「徳川」って凄い!
家斉の登場回はいつになるのか?
I:さて、そんなわけで、第11代将軍家斉の登場で大河ドラマ64年の歴史の中で、徳川将軍が勢揃いする瞬間を迎えるわけです。
A:なんだか感慨深いですね。歴史の積み重ねですね(しみじみ)。私はこれを壮挙だと感じているのですが、特番とかやらないんですかね。
I:そういうと思って問い合わせをしてみました。いまのところ特番の予定はないそうです。
A:えー。そうなんですか! まあ、主人公は蔦重(演・横浜流星)ですからしょうがないですかね。
I:まあまあ、当欄だけでも「大河ドラマ徳川将軍コンプリート回」を盛り上げていきましょうよ。(以下略)
(再掲終わり)
* * *
I:これが4月の記事だったのですが、世情は意外なほどに冷静に「徳川将軍コンプリート」を迎えたようですね。
A:われわれが、いささか先走ってしまったかもしれませんね(笑)。とはいえ、これまであまり知られていなかった徳川家治、徳川家斉、さらには家斉の実父である一橋治済に注目が集まるのは、やはり壮挙といっていいでしょう。
I:大奥を扱うドラマなどにはわりと頻繁に家治、家斉が登場していましたが、やっぱり大河ドラマに登場となると注目度が違いますものね。
A:家斉というと、15歳で将軍に就任してから50年将軍職についていました。15将軍の中で最長です。息子の家慶に将軍職を譲ったときに家慶はすでに45歳。なんだかんだいって50年以上権力の座に居座るというのは尋常ではないですね。家斉が将軍に就いてからは、ロシア帝国のレザノフ、ラクスマンらとの交渉、フェートン号事件など、「鎖国政策」が揺らいでいた時期ですが、真摯に向き合った形跡はみられません。
I:有名なモリソン号事件は、家斉から家慶への代替わりの年ですね。家斉といえば、政治との向き合い方よりもむしろ、26男27女、計53人もの子女をもうけたことが有名です。第1子の淑姫(ひでひめ)は寛政元年(1789)生まれ。53番目の末子で27女の泰姫は文政10年(1827)生まれですから、子作りに励んだのは38年間になります。これだけたくさんの子をなしながら、53人の子どものうちなんと40人が20歳未満で亡くなっています。そのうち33人は10歳未満です。
A:政治の停滞と子だくさんになにか関連性があるのでしょうか。次週、考察したいと思います。
I:え? そんなことに相関関係があるのですか? 子だくさんの話だけでいいのではないですか!?
●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
