落栗庵での指導と「江戸中半分」の門人たち

天明元年(1781)には剃髪して、芝西久保土器町に「落栗庵」を構えて隠居。そこを拠点に無報酬で狂歌の指導を行いました。門下には鹿都部真顔(しかつべの・まがお)をはじめとする多くの門人がおり、元木網の庵から多くの狂歌師が育っていきます。

「江戸中はんぶんは西の久保の門人だ」とまで言われたその影響力の大きさは、元木網の人柄と指導力を物語っています。

編著と辞世の一句

著作には『浜のきさご』『玉のきづ』『あづさ弓』『言葉のもとすえ』などがあり、寛政6年(1794)には『新古今狂歌集』を刊行。古今の作品を集めたこの集は、狂歌の系譜を意識した貴重な記録でもあります。

文化8年(1811)6月28日、88歳で没。最後に、元木網らしい狂歌を紹介しましょう。

我が年も ほどときすぎぬ さらばとて てつぺんかけて 剃りこぼつなり

『万載狂歌集』

まとめ

元木網は、天明狂歌の隆盛を支えた立役者の一人として、江戸の町人文化に大きな足跡を残しました。庶民の言葉で庶民の感情を巧みにすくい取る狂歌の魅力を広めた彼の功績は、今も高く評価されています。

「江戸中はんぶんは西の久保の門人だ」という言葉は、彼の人柄と狂歌への深い愛情を物語っています。元木網の存在があったからこそ、狂歌は一時の流行にとどまらず、文化として息づいたのかもしれません。

※表記の年代と出来事には、諸説あります。

文/菅原喜子(京都メディアライン)
肖像画/もぱ(京都メディアライン)
HP:http://kyotomedialine.com FB

引用・参考図書/
『日本大百科全書』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)
『日本人名大辞典』(講談社)
『日本国語大辞典』(小学館)
『朝日日本歴史人物事典』(朝日新聞出版)

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