生涯に一度も個展などの形で作品を発表することなく無名のままで奄美に没した画家、田中一村(たなか・いっそん 1908-1977)。
幼少期から卓越した画才を示し、神童と称された田中孝(本名)。東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学するも2か月で退学。弟、両親と立て続けに亡くした後、千葉に転居。農業に従事しながら制作を続けました。

田中一村《白い花》 昭和22年(1947)
紙本着色 2曲1隻 
田中一村記念美術館蔵 (C)2024 Hiroshi Niiyama

昭和22年に「白い花」が青龍展に入選し、画号を田中一村と定め、様々な展覧会に出品するも相次いで落選という不遇の日々が続きました。
昭和33年(1958)、50歳にして単身奄美大島に移住。紬織の染色工として働いて制作費を蓄え、奄美の自然を主題とした絵を描くことに専念しました。
一村没後の昭和59年(1984)、NHKの「日曜美術館」が一村を取り上げたことから、一躍脚光をあびることとなりました。

田中一村《奄美の海に蘇鐵とアダン》昭和36年(1961)絹本墨画着色
田中一村記念美術館蔵 (C)2024 Hiroshi Niiyama

東京都美術館の「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」は、初期から最晩年までの作品が一堂に会す大回顧展です。(9月19日~12月1日)
本展の見どころを、当展の広報担当者にうかがいました。

「本展は、絵画作品を中心に、スケッチ・工芸品・資料を含めた250件を超える作品で一村の全貌に迫ります。
奄美で描いた代表作《不喰芋(くわずいも)と蘇鐵》、《アダンの海辺》はじめ、未完の大作も展示。近年発見された初公開作品を多数出品し、未知の軌跡も辿ります。

田中一村《不喰芋と蘇鐵》 昭和48年(1978)以前
絹本着色
個人蔵 (C)2024Hiroshi Niiyama

本展は、奄美の田中一村記念美術館の所蔵品をはじめ、代表作を網羅する決定版であり、展示空間の中で、一村が魅了された奄美の自然を高精密画像で紹介するほか、会期中に奄美の文化を紹介する関連イベントを実施するなど盛りだくさんな内容です。

画家が生前「最後は東京で個展を開いて、絵の決着をつけたい」と語ったとおり、2か月で退学したゆかりの東京藝術大学に隣接する美術館での開催は、一村の願いが実現したといえるでしょう」

田中一村《アダンの海辺》 昭和44年(1969)
絹本着色
個人蔵 (C)2024Hiroshi Niiyama

一村が魅了され、愛してやまなかった奄美の自然を、会場でじっくりご堪能ください!!

【開催要項】
田中一村展 奄美の光 魂の絵画
会期:2024年9月19日(木)~12月1日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://isson2024.exhn.jp/
開室時間:9時30分~17時30分、金曜日は~20時(入室はいずれも閉室30分前まで)
休室日:月曜日(ただし9月23日、10月14日、11月4日は開室)、9月24日(火)、
10月15日(火)、11月5日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
※土曜・日曜・祝日及び11月26日以降は日時予約指定制(当日空きがあれば入場可)
 11月22日までの平日は、日時指定予約は不要            

取材・文/池田充枝

 

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