王道の信長大河が見たい
I:さて 、信長の幼少時代がフラッシュバックで登場しました。12歳だそうです。平手政秀(演・上杉祥三)に手習いを厳しく教えられていました。昭和のスパルタ教育のような雰囲気でした。ここで父信秀(演・藤岡弘、)が再登場です。びっくりしました。
A:信長が追い詰められている感じが表現されていましたが、実際にもっと追い詰められたのは武田信玄が亡くなる直前ではないでしょうか。信玄の死で難を逃れた形になりましたが、俗に「信長包囲網」ともいわれるように敵が多かった。
I:長島一向一揆との戦いも弟など身内からも討ち死にするものが続出するなど、たいへんな時期を過ごしていたはずです。
A:そういう流れでいえば、天正10年5月の段階は、かなり余裕があった時期。それだけにわずかな供回りのみで宿所の本能寺に入るという油断が生じたということなのでしょうか。信長が何かに追い込まれている場面は「虫の知らせ」のようなものだったのかもしれないですね。
I:今、こんなことを言うのも変ですが、幼少時代の信長を見て、私はなんだか信長が主人公の大河ドラマが見たくなりました。
A:信長はたくさんの大河ドラマに登場していますが、単独主人公としては1992年の『信長 KING OF ZIPANGU』(主演・緒形直人)のみとなります(『国盗り物語』は斉藤道三が前半の主人公)。しかも本作は、加納随天(演・平幹二朗)という織田家に仕える架空の祈祷師が主要キャラとして最終回まで登場した「変化球作品」。昨年の『鎌倉殿の13人』が鎌倉幕府の正史『吾妻鏡』をベースにしたように、『信長公記』を原作とした作品は見たい気がします。
I:原作が『信長公記』!? あ、それは私も見たいです。ベタでシンプルな本能寺になるかもしれませんが、そういう「直球本能寺」、見たいですね。
月代を剃って覚醒した家康に思うこと
I:さて、瀬名が亡くなり、月代を剃ったタイミングで家康の雰囲気に変化が見られます。 家臣団に対していうことを聞かねば斬ると言ってみたり……。
A:もう第27回を数えてようやくという感じです。正直にいえばちょっと遅かったかなと思っています。当欄では年頭第1回の直前に、主演の松本潤さんが関係各所に取材に出向いていることを「熱量が凄い」と指摘してきました。映画『花より男子』冒頭でみせたふてぶてしい姿をみたいとも指摘してきました。
I:覚醒した家康の演技は、なんだか鋭利な刃物の如くで感じ入っています。前週にはロケで家康と信長がともに馬を駆けるシーンが登場しました。もっと早くにこんなシーンを登場させて欲しかったと思った人も多いのではないでしょうか。
A:松本潤さんは放送後の「紀行」にも精力的に出演されています。今までここまでやる主役いましたか?
I:あまりいないと思います。
A:制作陣には松本潤さんのこの「熱量」をしっかり視聴者に届くようにさらに奮闘していただきたいです。
I:本当ですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり