マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、リーダー(管理職)や組織のあるべき姿を顧客との関係から考察します。

はじめに

「お客様のために」という善意から、つい利益を削ってでも尽くしてしまう。そんな姿勢を「誠実」だと信じていませんか? しかし、それは組織の存続を危うくする極めて無責任な判断です。

本記事では、利益を「酸素」と捉え、その確保こそが顧客に対する最大の責任である理由を解き明かします。読み終える頃には、利益追求への罪悪感が消え、真に顧客と社員を守るためのリーダーの在り方が明確になるはずです。

「安売り」という善意が顧客を裏切る理由

ビジネスの現場において、「お客様が困っているから」「長い付き合いだから」という理由で、本来受け取るべき利益を削ってしまう光景は珍しくありません。一見すると、これは自己犠牲を伴う「誠実な対応」のように映ります。しかし、この行為は顧客に対する最大の「不誠実」へと繋がります。

なぜなら、利益を削ることは、そのサービスを維持・向上させるための原資を放棄することを意味するからです。企業が提供する価値は、継続性があって初めて顧客の役に立ちます。今日、安く提供できたとしても、その結果として会社が倒産したり、サービスの質を維持できなくなったりすれば、困るのは他ならぬ顧客です。

人と人は「有益性」でつながっています。一方が与えるばかりで、もう一方がもらうばかりの関係、つまり「有益性のバランス」が崩れた状態は、長くは続きません。企業と市場の関係も同様です。市場に対して価値を提供し、その対価として“適切な”利益を得る。このバランスが保たれているからこそ、企業は存続し、顧客はサービスを受け続けることができるのです。利益を正当に要求しないことは、この健全な関係性を自ら破壊する行為に他なりません。

利益は「酸素」であり、組織存続の絶対条件である

利益は「会社が存続するための酸素」と言い換えられます。人間が酸素なしでは一刻も生きていけないのと同様に、企業も利益がなければ活動を止めるしかありません。

多くの人が抱きがちな「利益追求=冷徹・強欲」というイメージは、大きな誤解です。利益(売上)とは、その企業が市場(社会)に対してどれだけの有益性を提供できたかを測る「結果」の指標です。多くの利益を得ているということは、それだけ多くの顧客の課題を解決し、社会に貢献したというバロメーターなのです。

もし、リーダーが「利益よりも目先の感情的な満足」を優先させてしまえば、組織の「肺」は次第に機能を失い、やがて呼吸困難に陥ります。倒産という事態は、これまでその会社を頼りにしてきた顧客を見捨てることと同義です。また、そこで働く社員やその家族の生活も一瞬にして奪い去ります。

リーダーにとっての「真の誠実さ」とは、部下や顧客と仲良くすることや、その場限りのわがままを受け入れることではありません。顧客に有益性を提供し続けることで、利益を出し続け、組織を存続・拡大させること。組織が拡大していけば、より多くの顧客によりよい財・サービスが提供可能となります。これこそが、社会に対する最低限かつ最大の責任なのです。利益という結果から目を逸らすことは、その責任を放棄していることと同じだと認識しなければなりません。

チームが勝つからこそ、個人の勝利が確定する

社会は「個人」と「コミュニティ(組織)」の積層構造で成り立っています。そして、私たちは常に「チーム戦」を戦っています。ここで重要なのは、勝敗が決まる順番です。「チームが勝ってから、個人が勝つ」という原理原則が存在します。

例えば、日本という国を一つの巨大なコミュニティとして考えてみましょう。もし日本が債務超過に陥り、国家としてデフォルト(債務不履行)してしまったらどうなるでしょうか。どれだけ個人が優秀で、一生懸命に働いていたとしても、国民の多くは生活の基盤を失い、「負け」の状態になってしまいます。

これを企業に置き換えれば、さらに明白です。会社が利益を出せず、市場での競争に敗北すれば、社員がどれだけ「お客様のために」と願っても、その願いを叶える場所(会社)そのものがなくなります。給与も支払われず、自己実現の機会も失われます。

「自分の生活を豊かにしたい」「成長したい」という個人の欲求を叶えるためには、まず所属するチーム(組織)が市場で勝利し、利益という果実を得ていることが大前提となります。チームが負けているのに自分だけが勝つという状況は、社会構造上あり得ません。

したがって、リーダーは部下に対して「まずチームが勝つこと(利益を出すこと)」の重要性を徹底して認識させる必要があります。個人の感情や目先の利益に惑わされず、チームの勝利、すなわち組織の存続と発展に全力を注ぐこと。それが巡り巡って、社員一人ひとりの幸福を守る唯一の道なのです。

有益性を発揮する「先」を正しく認識する

組織において、有益性を発揮する方向を勘違いすると、マネジメントは一気に混乱します。「組織が有益性を発揮する先は外部(市場)であり、内部ではない」と言うのが原理原則になります。

よくある誤解は、社員が「直接、顧客に対して自分なりの有益性を発揮しよう」とすることです。一見、素晴らしい姿勢に見えますが、個々の社員がバラバラに「これが顧客のためだ」と判断して行動すれば、組織としての戦略は崩壊します。ある社員は値引きをし、ある社員は過剰なサービスを行い、結果として組織全体の利益が損なわれる。これでは本末転倒です。

正しい認識は、「社員が有益性を発揮する先は、直属の上長である」ということです。社員は上長から与えられた役割(責任)を全うし、上長が設定したKPI(重要業績評価指標)や目標を達成することを通じて、組織の戦略実行に寄与します。

顧客への直接的なアプローチは、あくまで「戦略実行のプロセスの一部」です。個人の独断による「善意」ではなく、組織として定義された「価値提供」を行う。その結果として、チーム全体で市場への有益性を発揮し、利益という対価を受け取るのです。

この構造を理解していないリーダーは、部下が顧客に迎合して利益を損なう行為を容認してしまいます。しかし、それは組織の規律を乱し、最終的には市場からの評価を下げる原因となります。部下の評価軸を「上長(組織)が決めたルールの中で、いかに結果を出したか」に固定すること。これが、組織として正しく利益を生み出し続けるための鍵となります。

「利益」こそが顧客と社員の未来を守る盾となる

「利益」という言葉に、どこか後ろめたさを感じる必要は全くありません。むしろ、プロフェッショナルとして誇りを持って語るべきものです。

私たちが提供するサービスや商品が、市場において本当に価値があるのかどうか。それを客観的に証明してくれる唯一の審判が「利益」です。利益が出ているということは、社会から「あなたたちの存在は必要だ」と認められている証拠です。逆に、利益が出ていないのであれば、それは独りよがりの満足であり、社会に対する有益性が不足しているという厳しい現実を示しています。

日本の伝統工芸も、老舗の暖簾も、それを受け継ぐ人々が正当な対価を得て、次世代への投資を行ってきたからこそ、今ここに存在しています。

「お客様のために、今は無理をしてでも……」という幻想を捨て、組織として勝つための冷徹なロジックを持つこと。そして、生み出した利益をさらに優れたサービスや、社員の成長のために再投資すること。この循環こそが、真の意味での「誠実な経営」であり、顧客に対する誠意の形です。

リーダーの仕事は、部下に嫌われないことではなく、部下が誇りを持って働き続けられる「強い組織」を維持することです。そのためには、利益という名の「酸素」を絶やさない決意を固めてください。その決意こそが、あなたの大切な顧客と、共に戦う社員たちの未来を守る最強の盾となるのです。

まとめ

1.有益性のバランスを保つ:顧客との関係は、与えることともらうこと(利益)のバランスで成り立つ。安売りは関係を壊す不誠実な行為である。

2.利益は組織の「酸素」:利益がなければ組織は死に、顧客への貢献も社員の生活もすべて途絶える。利益確保はリーダーの絶対的責任である。

3.チームの勝利が先:組織が市場で勝たなければ、個人の幸福や成長はあり得ない。全体最適を優先する視点が必要である。

4.有益性の発揮先を間違えない:社員は上長に対して有益性を発揮し、組織として一丸となって市場へ価値を届ける。個人の独断による「善意」は不要である。

5.利益は社会貢献の証:利益という「結果」を正しく認識し、追求することこそが、顧客と社会に対する真の誠実さである。

利益を語ることを恐れず、組織の存続という大義を果たすこと。それこそが、識学が提唱する「真のリーダーシップ」の第一歩です。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
7月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

市毛良枝『百歳の景色見たいと母は言い』

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店