「肉じゃが」は海軍で考案された料理であった!?
「お袋の味」という言葉を聞いて、誰もが連想する料理は「肉じゃが」ではないでしょうか。牛肉とじゃがいも、玉葱のほか、蒟蒻(こんにゃく)や人参などが入るか否かは、それぞれの家庭の作り方があります。彩りに茹でたさやいんげんや、絹さやが入ると、彩りが鮮やか。醤油と砂糖の絶妙なバランスで甘辛さの塩梅が決まりますが、それこそが「お袋の味」と言われる所以かもしれません。
家庭料理の大定番として、日頃から当たり前のように食卓にのぼる肉じゃがですが、元々は海軍で考案された料理であったという説がよく知られています。明治時代の海軍元帥(げんすい)、東郷平八郎が「和風ビーフシチュー」として作らせたというのです。
その東郷が赴任した京都の舞鶴と、広島の呉が「我こそが発祥の地」として争っていますが、いずれにせよ海軍で生まれたというのは興味深いことです。当時、軍は兵士たちの脚気(かっけ)対策に悩まされており、西洋食が予防にいいのではないかという背景があったようです。
海軍の「肉じゃが」作り方
当時の海軍の作り方も独特です。
「一、油入れ送気 二、三分後生牛肉入れ 三、七分後砂糖入れ 四、一〇分後醤油入れ 五、一四分後蒟蒻、馬鈴薯入れ 六、三一分後玉葱入れ 七、三四分後終了」。
牛肉を炒めたら砂糖、醤油の順にしっかり味つけして、蒟蒻とじゃがいもを加えます。人参は入らず、玉葱は最後。出汁(だし)はおろか、水も加えません。
上記を参考に肉じゃがを作ってみましたが、水分を加えないと煮えないため、途中で少々補いました。出汁を使わなくても、牛肉の旨みが効いていて、素朴なおいしさ。定番料理は作り方を変えてみるだけで、また違った魅力が感じられて面白いです。
文/大沼聡子