マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。

はじめに

「なぜ、自分は正しく頑張っているのに成果が出ないのだろうか」「会社の評価や上司の指示に、どうも納得できない」という悩みを抱えていたら、それは変えられない「定数」を変えようしているのかもしれません。

仕事で成果を出し続ける人は、変えられる「変数」に集中しています。仕事における「定数」と「変数」を正しく見極め、着実に成果を出すための思考法を具体的に解説します。

なぜ、多くの人は変えられない「定数」に悩むのか?

私たちの周りには、自分の力で変えられるものと、そうでないものが存在します。これを「変数」と「定数」と呼びます。

・定数:個人の力では変えられない、あるいは変えることが極めて困難なもの。
 例…会社のルール、企業文化、上司からの指示、配属先、市場環境、法律など。

・変数:自身の行動や努力によって変えられるもの。
 例…自身の知識・スキル、行動量、時間の使い方、タスクの優先順位、上司への報告の仕方など。

仕事で成果を出すためには、この「変数」に自身のエネルギーを100%注ぎ込むことが不可欠です。しかし、多くの人は「会社のやり方がおかしい」「上司の指示が理不尽だ」といった、自分ではコントロールできない「定数」に対して不満を抱き、悩み、時間を浪費してしまいます。

「定数」を変えようとあがいても無意味

「定数」に対しての時間の浪費とは、例えば、「これだけ頑張っているのだから、会社も自分の意見を聞いてルールを変えてくれるはずだ」「自分の正しさを訴え続ければ、上司も考えを改めてくれるに違いない」といった考えです。これは、「自分の感情や頑張りが他者や環境に影響を与えるはずだ」という錯覚に他なりません。

「納得できない」「理不尽だ」という感情は、物事を客観的に捉える邪魔をします。そして、「会社のルールは絶対的なものである」という事実の認識を歪ませてしまうのです。その結果、変えられないはずの「定数」を変えようと無駄なエネルギーを費やし、本来、成果を出すために集中すべき「変数」である自身の行動改善が疎かになってしまいます。同僚との愚痴やSNSでの不満の投稿に時間を使っても、あなたの評価や成果が上がることは決してありません。

「位置と役割」を正しく認識することが重要

では、どうすれば「定数」と「変数」を正しく見極められるのでしょうか。その鍵となるのが、識学の核心的な考え方である「位置と役割」の正しい認識です。

会社という組織において、すべての従業員には社長から新入社員に至るまで、固有の「位置(ポジション)」が与えられています。そして、その「位置」には、果たすべき「役割(ミッション)」と、その役割を全うするために必要な「権限」、そして役割を果たした結果に対する「責任」が明確に定義されています。

重要なのは、この「位置と役割」は、自分が決めるものではなく、組織(会社)から与えられるものであるという事実です。これは、ビジネスパーソンにとって最も基本的な「定数」と言えます。

例えば、あなたが営業部のプレイヤーという「位置」にいるのであれば、あなたの「役割」は「定められた商品・サービスを、定められた価格で販売し、部署の売上目標を達成すること」です。この時、商品力や価格設定、会社のマーケティング戦略などは、あなたにとっては「定数」です。

成果を出せない人は、この「定数」に対して、「もっと価格が安ければ売れるのに」「商品が悪いから売れない」と不満を述べます。これは、プレイヤーという「位置」を逸脱し、本来は商品開発部や経営層が担うべき「役割」に口を出している状態です。

一方で、成果を出す人は、「この価格、この商品力という条件下(定数)で、目標を達成するためには、自分自身の行動(変数)をどう変えればよいか」を考えます。例えば、「訪問件数を増やす」「提案資料を改善する」「顧客との関係構築の仕方を変える」といった、完全に自分のコントロール下にある「変数」に集中するのです。

自分の「位置と役割」という「定数」を完全に受け入れ、その範囲内でパフォーマンスを最大化すること。これが、組織で評価され、成果を出すための絶対的な原則です。

「変数」に集中し、成果を出すための思考

「位置と役割」を認識したら、次は自分のエネルギーをすべて「変数」に注ぎ込むための具体的な思考法を身につける必要があります。以下の3つのポイントを重視します。

1.事実と感情の分離

「上司の指示が理不尽で腹立たしい(感情)」と捉えるのではなく、「上司からの指示は『Aという方法でBを達成せよ』ということである(事実)」と、事実のみを抽出します。

感情は行動の精度を鈍らせるノイズです。事実だけを冷静に受け止め、「その指示を達成するために、自分の行動(変数)をどう最適化するか」という思考に切り替えましょう。指示の背景や意図を勝手に解釈したり、疑ったりする必要はありません。まずは、与えられた指示・ルールという「事実」を完璧に遂行することに集中します。

2.プロセスではなく「結果」で考える

会社があなたに求めているのは、頑張ったというプロセスではなく、与えられた役割を果たしたかどうかの「結果」です。「こんなに頑張ったのに」「長時間働いたのに」という言い訳は通用しません。なぜなら、評価の基準は「結果」であり、これは組織における「定数」だからです。

「目標を達成する」という結果から逆算し、そのために必要な行動(変数)は何かを考え、計画し、実行する。そして、もし目標が未達に終わったならば、その原因を環境や他者のせいにするのではなく、「自分の行動の何が不足していたか」を問い、次の行動を改善する。このサイクルを回し続けることが、「結果責任」を果たすということです。

3.「不足」を認識し、行動を変化させる

目標達成という結果が得られなかった場合、それは「環境が悪かった」のではなく、単純に「結果を出すための行動量が不足していた」あるいは「行動の質が低かった」という事実があるだけです。この「不足」を謙虚に受け入れ、改善することこそが成長に繋がります。

例えば、売上目標が未達だった場合、「なぜ未達だったのか?」と自問します。「競合が強かったから(定数)」ではなく、「競合に勝つための提案ができなかった自分のスキル不足(変数)」「そもそも提案件数が足りなかった自分の行動量不足(変数)」というように、原因をすべて自分自身の「変数」に求めます。そして、「来月は提案の質を上げるためにロールプレイを徹底する」「1日の訪問件数を5件から7件に増やす」といった具体的な行動計画(変数)を立て、実行に移すのです。

まとめ

仕事で高い成果を出し続けるビジネスパーソンは、無意識のうちに「定数(変えられないもの)」と「変数(変えられるもの)」を明確に見極めています。

会社組織における「位置と役割」を正しく認識し、その「定数」の範囲内で、自身の行動という「変数」を最大化させる思考法を実践していると言い換えることができます。多くの人が陥りがちな、環境や他者への不満という「錯覚」から脱却し、評価の基準である「結果」にコミットすることが重要です。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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