「コンピテンシー」という言葉をご存じですか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)で、コンピテンシーについての知見を得ましょう。

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近年、「コンピテンシー」という単語がビジネスシーンで用いられるようになりました。コンピテンシーとは「行動特性」のことで、採用活動、人事評価、人材育成などさまざまなシーンで活用されており、近年重要視されている要素です。

そこで、本記事ではコンピテンシーの概要からメリット、コンピテンシーの導入手順を紹介します。マネージャーや人事担当者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

コンピテンシーとは何か?

コンピテンシー(competency)はハイパフォーマーに共通する「行動特性」のことです。ビジネスシーンでは人材評価の際にコンピテンシーを活用するケースが見受けられます。

コンピテンシーはもともと、1950年代から心理学用語として用いられてきました。それから1970年代に、欧米でコンピテンシーの研究が進められ、優秀な従業員はいくつかの行動特性があることが発見されました。

こうして、コンピテンシーがビジネスシーンでも取り入れられるようになったのです。

能力や職能との違い

コンピテンシーに似た言葉として「能力」や「職能」が挙げられます。

能力とは、特定の行動を遂行するのに必要なスキルや知識のことです。
一方で職能は、能力の中でも「職務」を遂行するのに必要なスキルを指します。
そして、コンピテンシーは行動特性のことであり、この中には知識、能力、行動パターン、性格などが含まれます。

つまり、能力や職能は、コンピテンシーに内包されるものなのです。ただし、人材評価におけるコンピテンシーでは、主に「行動」に着目することが多いと考えられます。なぜなら、ほとんどの人材評価で、既にスキルや知識が着目されているためです。

コンピテンシーは能力や職能に比べて、目に見えづらい部分なので、人材評価を通して着目することで、従業員を正確に判断・評価できるようになります。

コンピテンシーが活用される場面

コンピテンシーが活用される場面は以下の3つです。

・採用活動
・人事評価
・人材育成

それぞれ詳しく解説していきます。

場面1:採用活動

コンピテンシーは採用基準の指標の1つとして活用できます。

自社のハイパフォーマーのコンピテンシーを採用基準に取り入れることで、自社が求める人材を採用しやすくなるためです。

採用面接であれば、質問で相手を深掘りできるため、対象者の行動特性が判断しやすいものです。また、採用面接は実際にリアル空間で対峙するため、雰囲気などの定性的な要素も評価できます。

コンピテンシーを活用することで、自社が求める人材を獲得しやすくなります。

場面2:人事評価

コンピテンシーは人事評価の場面でも役立ちます。

一般的に、人事評価の評価項目は、可能な限り定量的なものにすることが求められます。客観的な人事評価がやりやすくなるためです。

その一方で、定性的な項目については判断が難しい部分がありました。しかし、コンピテンシーを活用すれば、明確な基準を設けるのが難しい部分でも、納得感のある具体的な評価項目を設定できます。

人事評価でコンピテンシーを取り入れることで、行動特性の基準も明確にできます。

場面3:人材育成

コンピテンシーは人材育成でも応用できます。

社内研修などで、ハイパフォーマーの行動特性を示すことで、従業員全体のレベルアップが期待できます。また、コンピテンシーで人事評価することで、従業員がハイパフォーマーの行動特性を意識するようになる効果も期待できるでしょう。

従業員目線でも具体的にどのような行動を取るべきかが明確になるため、モチベーション向上が見込めます。

コンピテンシーを人材育成に活用できれば、ハイパフォーマーの行動特性を伝染させることができるのです。

コンピテンシーのメリット

コンピテンシーのメリットは、以下のとおりです。

・自社が求める人材を採用しやすくなる
・人材育成の具体性が高まる
・生産性が向上する

コンピテンシーを活用すると、自社が求める人材を具体化できるので、採用の精度が高まります。

また、人材育成についても、コンピテンシーで明確なロールモデルを作れるので、キャリアのビジョンが見えやすくなります。

これらが上手くハマれば、多くのハイパフォーマーが誕生し、結果的に生産性が向上するでしょう。

コンピテンシーの運用面での課題

コンピテンシーの運用面の課題としては、以下が挙げられます。

・行動特性を基準にするので客観的な評価が難しい
・多様化社会と逆行している
・メンテナンスが難しい

コンピテンシーは「行動特性」という定性的な要素を評価するため、客観的な評価が難しいのが課題です。

また、時代によって求められる人材が異なることから、長期的なメンテナンスも難しい傾向があります。

そして、コンピテンシーは、どうしても「一部のハイパフォーマー」に焦点が当たるので、多様化と逆行してしまうのも問題でしょう。

コンピテンシーのみで評価したり人材育成をするのではなく、あくまでも評価項目の1つとして活用した方がいいかもしれません。

コンピテンシーを導入する手順

コンピテンシーを導入する手順は以下の通りです。

1.ハイパフォーマーからヒアリング
2.コンピテンシーモデルの作成
3.評価項目の作成
4.レビューとフィードバック

それぞれ詳しく解説していきます。

手順1:ハイパフォーマーからヒアリング

まずは、社内のハイパフォーマーからヒアリングします。これにより、成長に繋がる行動特性を見出すのです。各部門のハイパフォーマーに対して、行動特性をヒアリングしましょう。

例えば、営業部であれば営業成績ナンバーワンの従業員を、新卒採用であれば優秀な若手社員をピックアップしてヒアリングします。

行動特性はあくまでも業務プロセスにおける行動のことなので、結果だけにとらわれず、行動原理の部分をきちんとヒアリングする必要があります。

ハイパフォーマーからコンピテンシーを抽出するのは難しい業務なので、コミュニケーション力の高い従業員をヒアリング役に設けるといいでしょう。

手順2:コンピテンシーモデルの作成

ハイパフォーマーからコンピテンシーをヒアリングしたら、それを基にコンピテンシーモデルを作成します。

コンピテンシーモデルには以下の3種類があります。

・理想型モデル:自社にとって理想的な人材をベースにしたモデル
・実在型モデル:実在するハイパフォーマーをベースにしたモデル
・ハイブリッド型モデル:実在型モデルと理想型モデルのハイブリッド

現在、SNSなどで優秀な人材が台頭・自ら発信するようになっているため、理想型モデルの構築が容易になっています。極論を言えば、イーロン・マスクをモデルにできます。

一方で、社内にハイパフォーマーが存在するのであれば、それを基にしてコンピテンシーモデルを作成するのが無難でしょう。

実現可能性と理想を両立したコンピテンシーモデルを作成するのが良さそうです。

手順3:評価項目の作成

コンピテンシーモデルを作成したあとは、評価項目を作成していきます。

コンピテンシーモデルを基に評価項目を作成するテンプレートとして「コンピテンシー・ディクショナリー」というものがあります。

以下の通りです。

このように、6つのコンピテンシーを軸にすることで、具体性のある評価項目を作成できるようになります。

手順4:レビューとフィードバック

実際にコンピテンシーモデルを導入したら、レビューとフィードバックを実施します。

まずは、コンピテンシーモデルを導入したことによる従業員の反応を見ていきます。ここで不満が出たら、しっかりヒアリングして次に繋げていきます。

ある程度の時間が経過したら、コンピテンシーモデルによって生産性や業績が向上したかをチェックしましょう。そのため、コンピテンシーモデルを導入するのと同時に、生産性を計測するツールも導入する必要があります。

コンピテンシーモデルは長期的な運用が難しい手法です。レビューとフィードバックは丁寧に実施するのがいいでしょう。

なお、コンピテンシーは、自社の状況や社会環境によって変動していくものです。問題が見られなかった場合でも、定期的にコンピテンシーモデルをアップデートしていった方がいいでしょう。

まとめ

本記事ではコンピテンシーについて解説してきました。コンピテンシーとは行動特性のことであり、ハイパフォーマーの行動特性を抽出できれば、採用活動・人事評価・人材育成などで活用できます。

一方でコンピテンシーは運用面での課題が多く、実施難易度は比較的高いということも忘れてはいけません。コンピテンシーを取り入れる際は、あくまでも「手段」の1つであることを忘れず、「なぜコンピテンシーを導入するのか」「コンピテンシーを運用することでどうなりたいのか」など、あらかじめ目的や意図を固めておくのがいいでしょう。

【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/株式会社識学編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/
コンサルタント紹介はこちらから https://corp.shikigaku.jp/introduction/consultant

 

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