こねたり発酵させたり、手間がかかる――自家製の天然酵母パンづくりと聞くと、ちょっとハードルが高いと感じている人は多いのではないでしょうか?
それでも、家庭で焼き立てのパンを手づくりしたいと思う人は多く、ホームベーカリーが売れています。80年代後半の流行を経て、6年ほど前に再びブームが再燃し、パン人気との相乗効果で市場が大きく伸びました。
一方で、家電に頼らず一から手づくりしたいと思う人も増えています。そこで、いま話題となっているのが「ポリパン」と呼ばれる、「ポリ袋で生地を仕込む、手軽なパンづくり」です。
小麦粉や天然酵母などの材料を厚手のポリ袋に入れて、シャカシャカふるだけで、手間のかかる生地作りが2~3分でできてしまうという、驚きの方法なのです。
そこで今回、このメソッドを考案した、天然パン工房&ナチュラルフードスクール『happyDELI』の梶晶子さんの「ポリパン講座」にお邪魔してきました。
■全国から集まる“ポリパン”受講生
訪れたのは、東京・泉岳寺にあるキッチンスタジオ『STOCK』。今回は、梶さんの新刊『ポリ袋でラクラク!オーブントースターで焼く天然酵母パン』(河出書房新社)の発売を記念した、特別講座です。
「こねない、手も汚れない」という、従来のパンづくりの常識がひっくり返るようなパンづくりを学びに、全国津々浦々から20名ほどの受講生が集まりました。
この日の講座でつくるのは、「マッシュポテトのフォカッチャ」。フォカッチャは、イタリアでは定番の平焼きパンのこと。フカッとした独特の食感と、オリーブオイルの香りがたまらないおいしさです。
■ポリ袋を振るだけで生地が完成!
さあ、いよいよポリパン実習のスタート。まずは「マッシュポテトのフォカッチャ」の材料をポリ袋にどんどん加えていきます。
ポリ袋に小麦粉、塩、砂糖を入れて、まずは粉類だけでよく混ぜます。水にはあらかじめ、起こした天然酵母、オリーブオイルを混ぜ、マッシュポテトも溶かし込んでおきます。
これを粉類の入ったポリ袋に一気に入れたら、空気を入れてポリ袋の口をねじり、シャカシャカと振るだけ!
最初はポリ袋の中は粉っぽい状態ですが、すぐにそぼろ状に変化。そのまま振り続けると、徐々にひとまとまりになって、2~3分後にはしっかりとした塊に。これで生地づくりは終わりです。
洗い物もほとんどなく、こねないので手もいっさい汚れません。
生地はポリ袋の中に入れたまま「一次発酵」という1回目の発酵をさせます。生地の中の酵母が活発になるように、できるだけ室温の高い場所に置いておき、2倍強にまで膨らむまで待ちます。
その後、アルミホイルの上に生地をのばし、「二次発酵」という二回目の発酵。再び膨らんだら、穴を開け、オリーブオイルをかけ、塩をふります。
■身近な道具、オーブントースターで焼く
さあ、いよいよオーブントースターで焼きます。梶さんによると「パンを焼くのに大切なのは“下火が強い”ということ。オーブントースターは下にヒーターの熱源がついているので、パン焼きにはとても向いている道具なんです」とのこと。
オーブントースターで焼くときのコツは、最初からアルミホイルをかぶせて焼くこと。そうすることで、「まだ焼けていないのに、上だけ焦げてしまった」という失敗を防ぐことができます。
アルミホイルは、グリル用の「くっつかないアルミホイル」を使うのがおすすめだそう。15分ほど焼いたらアルミホイルを外し、こんがり色づいたら完成です。
ポリパンは、あっという間に生地ができて、初心者でもコツいらず。しかも、洗い物が最小限ですむのがメリットです。
オーブントースターがなければ、フライパンでも焼くことができるのだそう。そこで梶さんは、東日本大震災後、東北各地をまわってポリパン講座を開催。パンづくりを通じて、「被災者のみなさんに少しでもホッとしてもらい、楽しくおいしい時間を過ごしてほしい」と、ボランティア活動も精力的におこなってきました。
簡単でおいしい、ポリ袋でつくる天然酵母パン「ポリパン」。「パンづくりなんて無理」なんて思っていた人でも、これなら気軽につくれそうです。ぜひ、挑戦してみませんか?
文/大沼聡子
【参考図書】
『ポリ袋でラクラク! オーブントースターで焼く天然酵母パン』
梶晶子・著
1512円(河出書房新社)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309285665/
【梶晶子さんのパン教室】
『happyDELI』(ハッピーデリ)
http://happydeli.jp/