古くは携帯用の薬入れとして重宝された印籠が、現代風にアレンジされて変身。釘を一切使わず、木材を巧みに差し合わせて作る「指物」の技術が詰まった、木目が美しい小物入れである。
手がけたのは東京の下町、墨田区菊川の一角に工房を構える指物師・益田大祐氏。もともとは家具デザイナーだったが、展示会で偶然出会った指物に惚れ込み、名匠に弟子入りした異色の経歴の持ち主である。現在は独立し、歌舞伎用の化粧鏡台や箪笥、茶道具などをオーダーメイドで製作する傍ら、“指物の魅力をより多くの方に知ってもらいたい”と、独自に現代の暮らしになじむ小物づくりも行なっている。
「製作で重要なのは、木の選別。割れたり歪んだりしない良質な木材かどうかを成形しながら見定めていきます。くりぬいた木材は鉋で削って柔らかな丸みを出し、内側は小刀で丹念に仕上げ、完成までに3~4か月かかります」と、益田氏はこだわりを語る。
薬はもちろん、アクセサリーなどを入れて持ち歩け、お茶会やお稽古事などの和装シーンではちょっとしたアクセントとして目を引く。暮らしに華やぎを添えてくれる洒落たアイテムだ。
【今日の逸品】
おとも箱
指物益田
8,470円(消費税込み)