会社など組織での立場が上になればなるほど、悩みを相談しづらくなるもの。あなたは、身近に悩みを打ち明けられる相手はいるだろうか。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会によると、2018年度に全国の日本産業カウンセラー協会・相談室に寄せられた相談件数は合計1万371件(対面による相談が5313件、無料電話相談「働く人の悩みホットライン」による相談が5058件)だったという。詳細な統計結果をみてみよう。
相談内容で多いのは『職場の問題』と『自分自身のこと』
2018年度に寄せられた相談内容を分野別に見てみると、「対面による相談」のもっとも多かった相談は『自分自身のこと』(1778件)、次いで『職場の問題』(1658件)。「電話相談(働く人の悩みホットライン)」のもっとも多かった相談は『職場の問題』(2196件)、次いで『自分自身のこと』(1287件)となった。
女性は、電話で「職場の問題」を、対面で「自分自身のこと」を相談する傾向
女性は「電話相談(働く人の悩みホットライン)」では『職場の問題』を、「対面による相談」では『自分自身のこと』を相談する傾向が他の項目よりも多い結果となった。また男性は『家庭の問題』の多くを「対面による相談」で話しており、悩みの質によって相談しやすい方法を選択して利用している傾向がうかがえる。
世代別では、男女とも相談の7割が30代~50代、悩めるミドル世代
相談者の年代をみていくと、「対面による相談」、「電話相談(働く人の悩みホットライン)」のいずれにおいても40代からの相談が最も多く、「対面による相談」は1621件(30.5%)、「働く人の悩みホットライン」は1400件(27.7%)と、両方とも約3割を占めている。さらに、男女ともに30代~50代からの相談が例年と同様、全体の約7割を占める結果となり、昇進や転職などの職場での環境変化や、結婚・出産を含めた、人生における岐路に立つ世代からの相談であることが推察できる。
「メンタル不調・病気」の相談は、男性が女性の2倍で40代が最も多い
男性は『職場の問題』が、対面と電話ともに例年同様もっとも多かったものの、『メンタル不調・病気』について相談する人が、女性に比べ2倍以上多かった。さらに年齢別に見てみると40代男性からの比率が他の年代に比べ多いことから、中間管理職にあたる世代で『メンタル不調・病気』の悩みを抱える方が多いのかもしれない。
「対面による相談」比率は2016年以降男女が逆転し、女性からの相談が増加
過去8年間の「対面による相談」男女比率をみてみると、2015年度までは男性からの相談が多く、2016年度以降は女性の相談者の方が多いという結果になった。また2018年度の「対面による相談」では、男性の割合が46.3%に対し、女性が53.7%と前年同様女性の方が多く、「働く人の悩みホットライン」では、男性44.3%、女性55.7%と昨年度と比較して4.7%、女性の比率が高くなるという結果になった。女性の社会進出や管理職への登用、役割の増加などが影響し、相談者が増えていることが推察できる。
以下、実際に寄せられた相談事例を抜粋にて紹介。
【対面の相談】
・結婚しておらず兄弟もいない。親のことや将来のことを考えると不安。
・あまり深く考えず転職し、周囲から即戦力として期待されているが、それに応える自信がない。
・鬱病で休職中だが、復職に備えてどういったことに気をつけたら良いか相談したい。
・転職先でも以前の職場でもパワハラを受けている。自分に問題があるとは思えないが、第三者の意見を聞きたい。
・仕事でもプライベートでも、とにかくイライラする。どうにかしたい。
【電話相談(働く人の悩みホットライン等)】
・通勤途中の出来事が原因でパニック障害となり休職。復職したが同僚の心無い言葉に傷ついた。
・異動先の上司から必要以上の好意を寄せられたので、少し距離を置いたら、逆に嫌がらせを受けるようになった。
・新人の態度が悪いので注意したら、パワハラだと上司に訴えられてしまった。
・電話すると気持ちが落ち着く。話を聴いてもらえるのはここだけ。
今回の統計から、じっくり相談したい内容は「対面による相談」を、職場の出来事などは「電話相談」を使って相談している人が多かった。さらに、男女とも40代の人は厳しい環境で働いている様子がうかがえる。読者の中にも、上記で挙げた相談事例と同じ悩みを持っている方もいるかもしれない。一人で抱え込まず、「働く人のホットライン」など、家庭や職場とつながっていない第三者に相談してみると、少しは心が軽くなるかもしれない。
文/鳥居優美