成長著しい企業は、そのトップが音頭を取ってバリバリ仕事をこなしていく、イメージを持っている人も多いことだろう。だが、それは思い込みである、と「識学」は説く。
リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、「社長がトッププレイヤーであってはいけない理由」を知ろう。
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社長やリーダーが「トッププレーヤー」として組織を引っ張るべき、というのは思い込みかも?
社長やリーダーがトッププレーヤーとなることが、組織を引っ張っていくには大切なことだと思っていませんか。もしかしたらそれは思い込みであり、間違った方法を実践しているかもしれません。
社長がトッププレーヤーであってはいけない
組織のリーダーが、「人の先頭に立ち、模範となる行動を実践すること(率先垂範)」は大切なことです。しかし、マネジメントとしてその率先垂範となる行動内容を間違えると、期待するような結果は得られません。
「誰よりも高い実務能力がなければ社員に示しがつかない」と、社長が自身と管理職であるマネージャーや一般社員に、高い実務能力を示していくケースがあります。しかしそれでは、社長もマネージャーも一般社員と同じ土俵で動くことになり、組織内の上下関係は実務能力で決定されると言っているようなものです。
そのような誤解が広がれば、部下は自分よりも実務能力の低い上司の指示は聞かなくなり、組織がうまく機能しなくなります。
社内のポジションは実務能力で決まるわけではありません。社長を筆頭としたマネージャーの主な役割は組織運営です。元は優秀なプレーヤーだったかもしれませんが、マネージャーとなった瞬間から、主な役割が変わります。いつまでもプレーヤーとして行動すれば、本来の職務をこなすことができず、決定や管理に支障をきたし、組織に多くの弊害を生むことになります。
率先垂範が「楽な選択」となってしまうワケ
組織内のポジションに関する誤解があるとはいえ、マネージャーは自分が求められている役割がわかっているはずです。それなのに、なぜそれを放棄しプレーヤーとして行動してしまうのでしょうか。
「名プレーヤーは名監督にあらず」という言葉がありますが、今までどんなに優秀なプレーヤーであったとしてもいきなり名マネージャーになれるわけではなく、新たな職務のスキルを一から積み上げていかなくてはなりません。
以前が名プレーヤーであればあるほど強烈な成功体験を持っています。そのため、マネージャーになってもプレーヤーとして率先垂範をしている方が今までのスタイルと変わらないため楽であり、充実感も得やすいのです。今までが優秀なプレーヤーであるほど多くの成功体験を持っているため、実務をしている時が一番楽しく一番楽なのです。
しかし、マネージャーになれば、充実感を得ていた営業はできず、慣れない仕事でわからないことも多くなります。
自分が今まで経験と成功を積み重ねることで作り上げた自信が、違う職務になることで手元からなくなり、自分の存在意義に対して危機感を覚えるため、本来の役割を放棄してでも今までの実務に固執しやすいのです。
こうして率先垂範に流れてしまい、本来の役割が果たせず部下の管理が疎かになれば、当然、部下が成長していくことはありません。
組織を機能させ拡大し続けるには、自分の役割を全うすることのみに集中するべきなのです。
もちろん、このようことは全ての企業に当てはまるものではなく、会社規模によっても異なります。会社がまだ小さい時には会社の存続のために、社長やマネージャーも高い実務能力を求められます。しかし、組織が拡大してくるとともに組織としての役割がより強く求められるため、社長やマネージャーは本来の組織運営に注力し、代わりに各プレーヤーが好成績を出せるよう育成していくことが大切です。
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いかがだっただろうか。企業のトップにはトップたる「役割」があり、率先して仕事を行うのは社員の「役割」である、ということがおわかりいただけただろうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/