取材・文/ふじのあやこ

【娘のきもち】~その1~

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「母親との関係に距離がある分、父親は離れて暮らしていたけどずっと近くに寄り添っていてくれました」と語るのは、朱音さん(仮名・42歳)。彼女は現在、兵庫県で3歳になる男の子の母親であり専業主婦です。やや茶色い髪は1つに束ねられ、化粧気がないものの目がパッチリと大きく整った顔立ちをしています。話している間に目が合ったのは数回。どこか気が弱そうな雰囲気を感じさせました。

年の離れた弟ばかりをかわいがる母親。単身赴任の父親にその愚痴をいつも聞いてもらっていた

朱音さんは兵庫県出身で、両親と8歳下に弟のいる4人家族。父親は物流などを扱う商社でサラリーマンをしており、母親は専業主婦。家族仲は弟が生まれる前後で大きく違ったと言います。

「3人だった時は母親も優しくて、両親の仲も良くて、楽しかった記憶が残っています。でも、弟が生まれてから母親は弟に付きっきりになり、その後父親は単身赴任で地方に行くことになってしまって……。家族全員が揃ったところがあまり思い出せません」

父親の単身赴任が始まったのは朱音さんが中学校に上がる直前。家族は再び3人になり、構図は2対1のような感じだったとか。姉弟仲はどうだったのでしょうか。

「8歳も下だとケンカになんてならないです。自分の子供のような感覚さえありました。遊んであげたこともありますし、絵本を読んであげたこともあります。でも、年の近い姉弟と違って、何かを真剣に相談し合うことはまったくなかったです。私は大学進学とともに実家を出たんですが、その時に弟はまだ小学生。今も仲は悪くないですが、決して距離は近くないと思います」

朱音さんは中学生に上がると反抗期もあり、母親との会話は一切なくなります。その愚痴を父親に電話で聞いてもらうことが多かったそうです。

「母親と話すとイライラしてしまっていました。特に弟の宿題を見ている母親の声とかが部屋に聞こえてきた時とかはすごくムカついていました。私の時にそんなことをしてくれた記憶なんて一切なかったから。今思うと、寂しかったんですよね。

父親には当時はまだ携帯なども普及していなかったから、家の電話の子機をベランダまで持っていき、電波が悪いのかガーガー機械音が鳴っている中、話を聞いてもらっていました。父親には反抗期はなかったですね。それに顔を見ていないから、電話だから色んなことをはっきり言えたというか。進路の相談も父親にしていました」

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