取材・文/末原美裕

創業60年の歴史を持つ料理旅館「菊水」がリノベーションをし、食と時を味わう別邸「南禅寺参道 菊水」になったと聞き、早速うかがってみました。

間口の広いエントランスを抜けると、上がり框があり、思わず靴を脱ごうとしてしまいましたが、今は脱がなくていいそうで、旅館の面影を感じました。テーブルへと歩みを進めると、およそ400坪もの広大な庭園が眼前に広がります。明治の名庭師七代目「小川治兵衛」が作庭した池泉回遊式庭園で、優美な姿は今も丁寧に受け継がれています。光と緑に満ちた空間が優しく心をほぐしてくれます。

美しいレストランを訪れると、食事にも自然と期待が高まります。南禅寺といえばやっぱり湯豆腐! ということで、湯豆腐コース(5000円・税別)をいただきました。

先付は汲み上げ湯葉重ね盛り。枝豆、白木茸、干椎茸、金針花、松の実、たくさんの具材が入っているので、一口ずつ違った味わいを愉しむことができます。豆乳西京味噌だれがほんのりとした甘みを添えます。

 

前菜は鱧笹寿司。京都といえば鱧。こちらの鱧は噛めば噛むほど旨味が口の中に広がります。

 

造里は鱸昆布〆。昆布の旨味が鱸の奥深い味わいを引き出します。

 

そしていよいよお待ちかねの湯豆腐は、和モダンな器であたたかな温度を保ちながらいただけます。醤油だれと吉野あんが添えられているので、二種類の味を食べ比べてみてください。擂り生姜を湯豆腐にのせ吉野あんをからめていただくと、豆腐本来のまろやかさが際立ちます。

湯豆腐の後もアボカドや椎茸、蓮根などの揚げ物、ごはん、汁物、水羊羹と続いていただき、お腹はもちろん、心までいっぱいに満たされます。

古きよき京都の情緒や佇まいはそのままに、現在に寄り添い新しさを取り入れた菊水は、伝統を重んじるけれどあたらしもん好きな京都人の今を表しているように思えました。

敷居が高いように思えてしまいますが、ランチやディナーのほか、ティータイムもあるので気軽に訪れてみてください。美味しく、美しく、新しい京都があなたを待っています。

■南禅寺参道 菊水
営業時間:11:00~22:00 (20:00コースL.O / 21:00フードL.O)
住所:京都市左京区南禅寺福地町31番地
電話:075-771-4101
アクセス:京都市営地下鉄「蹴上」駅より徒歩7分
http://kyoto-kikusui.com

JR東海「そうだ 京都、行こう。」京都“苔”めぐり:
http://souda-kyoto.jp/travelplan/koke_sp/index.html

取材・文/末原美裕
小学館を経て、フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。

 

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