文・料理再現/小野寺佑子

磯の香りたっぷりで、濃厚でクリーミーな味わいがたまらない牡蠣。江戸時代の人たちも牡蠣が大好きでした。江戸時代中期には広島湾で養殖が始められ、大阪の川筋には牡蠣料理が楽しめる「牡蠣船」が浮かべられ、大いに繁盛したといいます。

関西ばかりではありません。江戸でも牡蠣は親しまれていました。なんと、江戸前の牡蠣も食していたそうです!

江戸中期に書かれた食品事典『本朝食鑑』によると、「牡蠣は関東や房総にも多く、江戸の市場で売られるものは永代島のほとりで採られたもの。大粒で味が良い」とあります。永代島とは、現在の東京都江東区のあたりのこと。今ではとても考えられませんね。

ちなみに、江戸時代には、どの産地の牡蠣が美味しいと評価されていたのでしょう?

江戸中期に編纂された絵入りの百科事典『和漢三才図会』によると、「牡蠣は東北の海に多い。三河の苅屋、江戸の牡蠣は大粒で味が良い。安芸の広島産は小粒で味が良い。尾張、伊勢のものがこれに次ぐ。播磨産は大粒だが肉が硬く味は良くない」と評されています。

広島の牡蠣よりも、三河や江戸の牡蠣が評価されていたなんて意外ですね。

さて、今回は、牡蠣を江戸っ子流に食べてみようということで、『素人庖丁』に載っている「牡蠣田楽」を作ってみました。

■「牡蠣田楽」の作り方

■材料
牡蠣(むき身) 4粒
ふき味噌 適量
※ふき味噌とは、ふきのとうを刻んで甘い練り味噌とに混ぜたものです。


まず牡蠣をよく洗って水気を切り、串刺しにします。刺しにくい場合はレンジで蒸すとよいです。


次に、串刺しにした牡蠣にふき味噌を塗り、グリルで焼きます。味噌がこんがり焼けたら完成です。

牡蠣の旨みと味噌の甘みが良く合い、ふきのとうの爽やかな苦みが良いアクセントに。生食用の牡蠣を用意して、強火で炙って表面はこんがり、中はとろ~り半生に仕上げると絶品です! 日本酒がすすみます。

ちなみに、現代でも「牡蠣は二日酔いに効く」と良くいわれますが、『本朝食鑑』にも「種毒を消す」と書かれています。牡蠣は、酒飲みにはたまらない食材です。

【参考文献】
『江戸料理読本』(著者・松下幸子/ちくま学芸文庫)
『図説 江戸時代 食生活事典』(編集・日本風俗史学会 編集代表・篠田統、川上行蔵/雄山閣)
『東洋文庫395 本朝食鑑5』(著者・人見必大 訳注・島田勇雄/平凡社)
『東洋文庫395 和漢三才図会7』(著者・寺島良安 訳注・島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳/平凡社)
※分量や細かい作り方は原本に記載されていないため、筆者が作った方法でご紹介しています。

文・料理再現/小野寺佑子
撮影/五十嵐美弥

 

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