
名山・乗鞍岳を水源とする元小学校を活用した蒸留所
白い稜線が浮かびあがる北アルプスを背景に、漆喰の商家や寺院など古都の町並みを色濃く残す、飛騨高山。雄大な自然と豊かな山林資材をもって、江戸幕府直轄の天領として栄えた。そんな世界が注目する美しき市街地から、車で40分ほど。2007年に廃校となった小学校を、岐阜県初のウイスキー蒸留所として甦らせたのは、高山市の老舗酒造・舩坂酒造店代表の有巣弘城さんだ。




「初めて訪れたとき、閉校して15年も経っていたのに、校内は地域の方々によって定期的に清掃されていたんです。教室の掲示物や黒板の文字まで残っていて、当時の子どもたちがまだいるんじゃないかと息吹を感じて、感動しました」
地域の想いとともに大切に保存されてきた小学校は、10年、20年と世代を超えて繋がるウイスキーを醸すのに絶好の場であり、長期熟成に欠かせない美しい風土、豊富な水、広大な敷地という条件も優に満たす。標高920mに位置し、名山・乗鞍岳を水源とする清冽な水は、検査でも硬度6度を記録する、驚くべき超軟水。
「この水が原酒をまろやかに、ふくよかな甘みとコクをもたらす。ニューポットの出来は評価がすこぶるいいんです」と有巣さん。

どっしり重めを目指す

蒸留所“開校”から3年、今年の暮れに初のシングルモルトとしてリリース予定の原酒は110樽からブレンド。ウイスキー専用酵母に、昨年からビール用のエール酵母を合わせ、ダブル酵母で甘く、どっしりと重めのフレーバーを目指す。ビール向け麦芽も加えたことで、糖化工程でべっこう飴のような濃厚な甘い香りに変化、味に厚みが生まれた。


バーボン樽以外に、飛騨の家具職人が地元のミズナラで作る希少な国産樽も徐々に導入。県内産の小麦も質を極めつつ増やし、未来に繋がる“オール岐阜ウイスキー”登場へ、期待が高まっている。
飛騨高山蒸溜所

岐阜県高山市高根町下之向164-2
電話:0577・32・0016(舩坂酒造店 代表番号)
見学可。「飛騨高山蒸溜所見学ツアー」は要予約。見学日はSNSで告知。
https://www.whisky-hida.com/
取材・文/藤井存希 撮影/鈴木泰介
※サライ2026年3月号より












