内閣府の最新版『高齢社会白書』(2025年度)によると、日本の高齢化率は29.3%と、過去最高を更新し、平均寿命は男性81歳、女性は87歳です。それなのに、健康上の問題で日常生活に制限のない「健康寿命」は過去の調査とほぼ変わらず、男性73歳、女性75歳。元気な高齢者が増えているとはいえ、親が健康寿命年齢になったら、介護の“助走”を始めたほうがいいのでしょうか。介護をテーマとした作品で知られ、親の老いに伴走したイラストレーター・上大岡トメさんに伺いました。
お話を伺ったのは……上大岡トメさん

親は想像以上に老いていた
――子供にとって親はいつまでも元気で自立していてほしいもの。ですから、老いを認め、受け入れるのは難しいと感じます。
そうなんです。私自身も、根拠がないのに、自分の親は大丈夫と思っていました。無意識のうちに、「親フィルター」越しに、両親の様子を観察しており、都合がいいように補正をしてしまっていたのです。親フィルターがあると、判断が甘くなってしまう。もう少し早く現実と向き合えば良かったと思っています。
振り返ると、私の介護が始まったのは、2019年、当時私が54歳のときでした。私は山口県で家族と共に暮らしながらイラストレーターをしており、86歳の父と83歳の母は横浜の実家で暮らしていました。2人は旅行に行くこともありましたし、母から「生活できている」という言葉もあり、両親はいつまでも元気に生活できると、根拠もなく思い込んでいたのです。
そんなある日、「お母さんが歩けなくなった」と連絡が。慌てて山口から横浜まで駆けつけると、母は脊柱管狭窄症を患い、体も小さくなってしまっていて、想像以上に老いていたという現実が待っていました。親の老化は、私が思う以上に深刻化していたのです。

こういう状態になる前に、なんらかの対策をしておくべきだったと後悔しました。やはり、親が75歳、後期高齢者になったら、たとえ元気のように見えても、親の家の管轄の地域包括支援センターがどこにあるのか、調べておいたほうがいいと思います。親自身も「私は元気」と思っていたとしても、第三者が見ると、「支援が必要だ」と感じる場合もあるはずですから。

――気づけば、親は老いている。その現実に直面してから、トメさんと、京都に住むお姉様が交代で両親をサポート。本格的に実家に通う、週末介護が始まります。
2022年10月に、89歳の父と、85歳の母がともに老人ホームに入居するまでの約3年間、両親に伴走しました。父も母も、住み慣れた横浜の自宅での生活を望んでいたのです。姉とは、密に連絡を取り合い、いざとなったら、横浜で介護施設を探そうと話していました。結局、父は入居から4か月後、母は2年後に亡くなりました。
私が2019年から介護マンガを描き始めたきっかけは、親の老いという衝撃と、「これからどうしよう」という途方もない不安があったからです。介護はそれまで歩んできた親の人生を引き受けることにも似ています。家の片付け、お金のこと、各種申請ほか行政手続きなど、やることが多すぎますし、初心者だからわからないのです。例えば「要支援1の認定は受けたけれど、どうすればいいのか」などなど。理由と目的がわからないまま、進んでしまうと大きな後悔につながる可能性も高い。
私も姉も、理系脳で合理的に考えます。それなのに、どこに進めばいいのか、何を決断すればいいのか、わかりませんでした。
――介護も「何はなくても、まずはお金」ということで、1冊目の本、『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』には、親のお金について、詳しく解説しています。
親の介護は、親のお金で行うことが基本です。親がしっかりしているうちにやっておきたいのは、お金の一本化。介護にもお金が必要です。生活費や医療費、私と姉の往復の交通費のほかに、介護施設の入居のお金などまとまったお金が必要になることもあるでしょう。
【「お金のこと」とは具体的に何をするのでしょうか。次のページに続きます】











