古から人類は、香りを儀式や医療行為などに活用してきました。香りには、健康にまつわる様々な効果を促進する力があるのです。

長年、健康をテーマにした食品や香りの研究をしている、近畿大学教授の財満信宏さんは、香りをかぐだけという健康法を推奨しています。

今回は、財満信宏著『香りをかぐという最強の健康法』(アスコム)から、「良い睡眠を導く香り」と「記憶力・集中力を高める香り」を取り上げます。

手軽に始められる「香りをかぐだけ」という健康法をライフスタイルに取り入れてみませんか?

良い睡眠を導く香り

ベルガモットの実

最近、心地よく眠れていますか?
日本では、5人に1人が何らかの睡眠障害を抱えているといわれています。寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に何度も起きてしまう。症状は人によって様々ですが、いずれにせよ、良い睡眠がとれていないと、心身にも美容にも悪影
響であることは間違いありません。
良い眠りを手に入れるのに必要なのは、就寝前のリラックス。これには、ラベンダーに代表される副交感神経に働きかける香りが効果的です。

特に「睡眠」という観点で選ぶのであれば、おすすめはベルガモットの香り。ベルガモットはミカン科の植物で、柑橘系のレモンやライムに似た果実を実らせます。
日本ではそのまま食べる機会はあまりありませんが、アールグレイの紅茶の香りづけに使われている果実としてご存じの方もいるでしょう。
「ベルガモットが睡眠に効果的」と聞いて、もし違和感を抱いたとしたら、なかなか鋭い感性をお持ちですね。なぜなら、グレープフルーツなどの柑橘類に含まれるリモネンという香気成分が交感神経を活発にさせると説明したばかりで、その内容と矛盾するからです。

※リモネンに関して前記事でのご紹介→ストレスを軽減させ、リラックス効果をもたらすラベンダーの香り【香りをかぐだけ健康法】

あらためて理由をご説明しましょう。
柑橘類でも、とりわけグレープフルーツ、オレンジ、ゆず、レモンなどは、精油成分の70パーセント以上をリモネンが占めています。
ところが、ベルガモットにいたっては、同じ柑橘類でもリモネンが占める割合は30~40パーセントほど。代わりにラベンダーの主成分である酢酸リナリルやリナロールを多く含んでいるため、そのにおいも柑橘系の爽やかな香りとフローラルな甘い香りがブレンドされた、独自の香りになっています。
すでにお話しした通り、酢酸リナリルやリナロールは副交感神経を優位にするため、ベルガモットは入眠に適した香りだといわれているのです。

2021年に発表された福岡大学のマウスを使った実験では、ベルガモットの香りが入眠を早めて、睡眠時間が45パーセントも延長したという驚きの結果が報告されています。
最初に「ストレスに効く香り」をご紹介しましたが、副交感神経を優位にするという点で、入眠の際にも同様の香りが適しています。
つまり、酢酸リナリルやリナロールを多く含むラベンダー、クラリセージ、ネロリ、イランイラン、ローズウッドなどです。
これらの香りを寝室に満たしたり、枕にスプレーしたり、あるいは入浴の際に湯船に垂らしたりしてもいいでしょう。香りの成分が自律神経に働いて、心地よい眠りへ導いてくれるはずです。

最後に、少々毛色が違いますが、おやすみ前におすすめの香りを一つご紹介しましょう。
カンラン科の樹木の樹脂から採れるフランキンセンスの香りです。スパイシーで奥深いウッディ調の香りは、古代エジプトやギリシャで儀式や供物などに用いられるなど、神聖な香りとして扱われてきました。
聖書には、イエス・キリストの誕生時に東方三博士が贈り物として持参したものの一つとして、フランキンセンスが登場しています。

フランキンセンスに含まれる「α -ピネン」という香気成分には、リラックス効果や集中力を高める効果があります
松やヒノキにも同様の成分が含まれており、嗅げば気持ちが整い、心が浄化されるような樹木特有の奥深い香りといえば、何となく想像がつくでしょうか。
また、フランキンセンスは、ぜんそくや気管支炎など、呼吸器系の不調改善にもアプローチするといわれています。
鎮静作用と相まって、自然と呼吸が深くなるため、太古より儀式に用いられてきたエピソードにもうなずけるものがあります。

時を経た現在では、ヨガや瞑想とも相性が良い香りです。
おやすみ前に、気持ちを整えるささやかな時間を設けて、そこで太古から伝わるフランキンセンスの香りをくゆらせてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、β -カリオフィレンの香りも睡眠を誘導する可能性があることが動物を用いた私たちの研究で示されているのですが、まだ論文として報告していないため、ここでは「可能性」の紹介のみにとどめさせてもらいます。

【良い睡眠を導く香り・まとめ】
ベルガモット、ラベンダー、フランキンセンスなど

記憶力・集中力を高める香り

ローズマリー

仕事や勉強に集中したいとき、記憶力を高めたいとき。「集中するぞ!」と気合いを入れて取り組むのも悪くありませんが、誘惑や周りからの邪魔などもあり、それだけだとなかなか難しいですよね。
単純に、がんばらないといけないのはわかっているのに、どうしても気分がのらないときもあるでしょう。そんなときの手軽で楽しい手段として、香りを利用してみましょう。

ローズマリーには、集中力や記憶力を高める効果があることが知られています。
というのも、ローズマリーの香気成分は、交感神経に作用するからです。脳を刺激し、身体の活動性を高める傾向があるので、作業をするときにぴったりな香りなのです。
さらに、近年の研究によって、ローズマリーに含まれる様々な成分が、記憶や集中を助ける神経伝達物質に働きかけることがわかってきました。
特にアルツハイマー型認知症の予防になる可能性が示唆され、注目が集まっています。
もっとも、ヨーロッパでは、そうしたローズマリーの知的なパワーはすでに広く知られているようです。一節によると、古代ローマ時代の学生たちはローズマリーで作られた冠をかぶって勉学に励んでいたそうです。
また、シェイクスピアの『ハムレット』のワンシーンで、オフィーリアが「忘れないでという印です」という言葉とともに差し出すのが、ローズマリーの枝でした。
昔の人にとっても、ローズマリーは記憶に関与する特別な植物だったことがうかがえます。

ローズマリーのほかにも、記憶力にまつわる香りとしては、レモンバームが挙げられます。
レモンバームは、ローズマリー同様に交感神経を活発にする作用があり、集中力や意欲向上に効果を期待できる香りです。
加えて、認知機能や記憶力と関係の深い「アセチルコリン」という脳内ホルモンと深いかかわりがあります。アセチルコリンを分解する酵素の働きを抑える作用があり、認知機能や記憶力の低下を防ぐ可能性があるのです。
そのほかにも、交感神経を活発にさせる香りには、ペパーミントやグレープフルーツ、レモングラス、ヒノキなどが挙げられます。
集中して作業したいときには、これらの香りをくゆらせながら取り組んでみるといいかもしれません。寝起きがスッキリしない朝や、頭がボーっとしているときの覚醒アイテムとしてもおすすめです。

【記憶力・集中力を高める香り・まとめ】
ローズマリー、レモンバーム、ペパーミント、グレープフルーツ、レモングラス、ヒノキなど

*  *  *

 香りをかぐという最強の健康法
著/財満信宏
アスコム 1,650円(税込)

財満信宏(ざいま・のぶひろ) 近畿大学教授、博士(農学)。
1978年、広島県生まれ。京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了。三菱化学生命科学研究所、浜松医科大学分子イメージング先端研究センター、英インペリアルカレッジロンドン客員研究員(兼務)などを経て現職。
血管疾患発症機構の解明と予防・治療法の確立を目指した研究を行っているほか、食品と人間、香りと人間の関係を明らかにする研究を行っている。クローブや黒胡椒などに含まれる香り成分「β‐カリオフィレン(BCP)」の吸入によって血管保護効果が発揮することを発見。2022年、研究成果が薬物療法に関する専門国際誌「Biomedicine & Pharmacotherapy」に掲載され、注目される。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
4月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

市毛良枝『百歳の景色見たいと母は言い』

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店