
物価高が続くなか、もはや節約や節税だけではお金のやりくりが厳しくなってきている現状。そんなとき、もらえるお金を少しでも増やすことができたら、ありがたいですよね。
さまざまに設定されている制度をきちんと利用すれば、もらえるお金を増やすことができるかもしれません。そんなありがたい今すぐ役立つ情報をまとめたのが『初めてでも簡単! 知って得する60歳からの「届け出」だけでもらえるお金』(宝島社)です。
監修の小泉正典さんは、これからは「働きながら年金を増やす」時代だと言います。それぞれの生活や仕事にあった制度を賢く利用して、もらえるお金を増やしましょう。
そこで、今回は『初めてでも簡単! 知って得する60歳からの「届け出」だけでもらえるお金』の中から、「相続」や「贈与」に関する届け出についてご紹介します。たとえ仲が良くても、額が少なくても起こり得るのが相続問題。元気なうちにしっかり考えて進めておきたいものです。
監修/小泉正典
自宅の持ち主が亡くなっても引き続き配偶者が住める
「配偶者居住権」の設定
もらえるお金→家に住む権利とそのほかの遺産
自宅しか遺産がない人も自宅に住み続けられる
夫婦の一方が亡くなったとき、遺された配偶者がこれまで住んでいた家に無償で住み続ける権利を保障した制度です。
「自分の家にただで住めるのは当然の権利」と思うかもしれませんが、平成30年に新設された制度です。それまでの法律のもとでは配偶者が「家を売却して、ほかの相続人にお金を分けろ」と判断される事例もありました。
この制度では、家の権利を、「配偶者居住権」(住む人の権利)と「負担付きの所有権」(持つ人の権利)に分けて相続できます。
たとえば妻が「配偶者居住権」を設定し、息子が家の所有権を相続した場合、たとえ息子が所有権を誰かに売ったとしても、妻は死ぬまで家に住むことができます。
「配偶者居住権」の成立には、
(1)故人の配偶者であること
(2)故人が所有していた住居に、死亡したときに居住していたこと
(3)遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかにより取得したこと
が要件となります。
「配偶者居住権」は、ほかの相続人との遺産分割協議で設定しますが、遺言書で指定できます。生前に書類を作成しておくと安心です。


住宅贈与も配偶者特別控除で最高2000万円まで非課税に
「贈与税の配偶者控除」
非課税になるお金→最高2110万円
生前贈与して税金を大幅に節約
お金持ちではないし相続税対策は関係ないと思っていませんか?
現金や預金が少なくても、都市部に住宅を持っている人は、相続税が思ったよりも高額になる場合があります。税金を払うために自宅を売るような事態が発生しないよう、生前から節税できる制度を活用しましょう。
どんなに仲のいい夫婦や親子の間でも、お金や不動産などの財産をやり取りすれば贈与になります。贈与税は最も負担が重い税だと言われています。
配偶者に住まいを残したいという人は、生前贈与の「配偶者控除の特例」で節税ができます。この制度は婚姻20年以上の夫婦が一度限り利用できる制度で、通称「おしどり贈与」とも呼ばれています。
配偶者が住むための住宅やその購入資金を贈与したとき、贈与税が2000万円まで非課税になります。毎年110万円まで非課税になる「暦年課税の基礎控除」を加えると、最大2110万円まで税金がかかりません。普通に2110万円を贈与すると贈与税額は約750万円にもなります。
贈与を行った場合は、翌年に確定申告を行う必要があります。


※令和7年5月1日時点での法律、制度などの情報に基づいて作成しています。
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初めてでも簡単! 知って得する60歳からの「届け出」だけでもらえるお金
監修/小泉正典
宝島社 1210円(税込)

小泉正典
1971年生まれ。栃木県出身。明星大学人文学部経済学科卒業。社会保険労務士 小泉事務所代表。一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般、および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。監修書に『知って得する! 制度・支援・補助金 社会保障一覧表 2024年度版』(アントレックス)、『最新版 図解「届け出」だけでお金がもらえる制度一覧』(三笠書房)、『60歳からの得する! 年金 働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本 2025-26年最新版』(講談社)などがある。メディア出演、講演、セミナーなども多数。











