
日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)

丼ものより定食。早食いをしない
「なにを食べるか」によって、体に取り入れる栄養分が変わってくるのは当然のことです。さらに、疲労回復や健康維持には、それらを「どう食べるか」も非常に重要です。
食事の習慣としてまず大事なのは、ゆっくり「よく嚙む」ことです。
食事内容は同じであっても、落ち着いた気分で食べれば心身の安らぎを得られます。それによって副交感神経が優位になり、リラックスできます。幸せホルモンであるセロトニンも放出されます。
そしてなにより、時間をかけることで血糖値の乱高下を防ぎます。
たとえば、茶碗1膳の米飯には、約50グラムの糖質が含まれます。この茶碗1膳の米飯を、早く食べればそれだけ一気に血糖値が上がります。
急激に上がった血糖値は、急激に下がってさまざまな不快症状をもたらし、慢性疲労を呼びます。
でも、ゆっくり食べれば、血糖値の上がり方が緩やかになります。
加えて、時間をかけてよく嚙むことには、さまざまなメリットがあります。
そもそも、顎を動かす「嚙む」という行為は、唾液を分泌させることはもちろん、胃腸の作動スイッチを入れてくれます。
脳の血流も良くなり、視床下部にも刺激を与えます。
つまり、嚙めばそれだけ消化も良くなり、脳細胞の働きも活発になります。よく嚙む食事こそ、体も心も疲れ知らずにするための基本動作とも言えるのです。
また、嚙めば嚙むほど、脳に「食べているよ」というシグナルが届き、ほどほどの量で満腹感が得られます。
早食いしていると、シグナルが届かないうちにたくさんの量を食べてしまい、満腹を求めてさらに食べる量を重ね、肥満に繫がります。
太る食生活は、疲れる食生活とイコールです。
ただ、長年の習慣で身についた癖はなかなか抜けません。そこで、意識的に嚙む回数を増やし、時間をかけましょう。
できれば、一口20回嚙むとか、食べ始めて30分は食事を終えないようにするとか、具体的な数値を決めて測ってみましょう。
一口ごとに箸を置くというのもいいでしょう。
ランチで外食するときは、丼ものではなく定食を選びましょう。どこかで購入するなら、簡単につまめるおにぎりやサンドイッチよりも、食べるのに時間がかかりそうな弁当を選びましょう。
忙しい状況にあると、つい、「さっさとかきこんで、おしまい」という食事スタイルになりがちです。
しかし、そこで食べているものが自分の体をつくっているのだということを忘れず、気がせいているときほど「ゆっくり」を心掛けてください。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。

牧田善二/著 四六判208ページ 小学館刊 1650円(税込)
