字画も少なく、しょっちゅう⽬にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか⼼配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか? サライ世代ともなりますと、いったん思い込み認知をしておりますと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。
簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の記事を読みながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。
「脳トレ漢字」第217回は、「労る」をご紹介します。「ねぎらう」と読んでしまいそうですが、よく見ると送り仮名が違いますね。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「労る」とは何とよむ?
「労る」の読み方をご存知でしょうか? 「ろうる」ではなく……
正解は……
「いたわる」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「弱い立場にある人などに同情の気持ちをもって親切に接する。気を配って大切に世話をする。」「労をねぎらう。慰労する。」「手当てを加える。養生する。」と説明されています。
「労わる」と表記されることもあり、「慰める」「親切にする」などの意味合いで使われることが多いです。古典の世界では、「苦労する」「病気になる」という意味で使われています。
また、「労う」と書いて「ねぎらう」と読むことができますが、こちらは「苦労や骨折りを感謝する」という意味として、主に自分と同等か目下の人に対して使う言葉です。
「労る」の漢字の由来は?
「労」という漢字は、火が盛んに燃える様子を表しているとされ、そこから「力を尽くして働く」という意味が生まれたと考えられています。これが転じて、「苦労を慰める」という意味としても使われるようになったのかもしれません。
「敬老の日」の由来
真夏のピークが去り、9月の大型連休「シルバーウイーク」の時期となりました。2024年は、「敬老の日」と「秋分の日」の振替休日で2週連続の3連休になります。どちらも国民の祝日として定められていますが、なぜ、敬老の日が9月にあるのかと聞かれると、答えにつまってしまいますね。
「多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う日」である、敬老の日。昭和41年(1966)に「老人の日」が改称され、制定された祝日です。元々は9月15日でしたが、平成15年(2003)からは、9月の第3月曜日に変更されました。
敬老の日の由来は諸説あり、代表的な例として、聖徳太子が四天王寺(現在の大阪市天王寺区にある寺)に悲田院(ひでんいん)を建立したとされる日が、9月15日だったからという説が挙げられます。悲田院は、現在の老人福祉施設に近い役割を果たしていたため、このような説が生まれたのではないでしょうか?
ほかには、昭和22年(1947)に、兵庫県多可郡野間谷村(現在の多可町)の当時の村長が、お年寄りの知恵と経験を活かして村を発展させるべく制定した「としよりの日」が広まったという説や、霊亀3年(717)に元正天皇が美濃国(現在の岐阜県)にある「養老の滝」に行幸した時期が9月だったからという説もあります。
なお、敬老の日は年長者を労わり、長寿を願う日であるため、対象年齢は特に定められていないそうです。
***
いかがでしたか? 今回の「労る」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 残暑が厳しいですが、だんだんと日も短くなってまいりました。季節の変わり目で体調を崩しやすいこの時期は、自分自身を労わる日を作ってみるのもよさそうですね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)