ふるさと納税をすることで、各市区町村は寄附を受けたことになり、寄付をした方の所得税と住民税の計算において寄附金控除を受けることが可能です。そして、寄附に伴い様々な返礼品をもらうことができるので、多くの方が利用されているのではないでしょうか。寄附金控除のメリットは、あくまで所得が発生している方にメリットがあります。

そのため年金だけを受給している方、もしくは年金が所得の大半を占めている方は、ふるさと納税のメリットを受けられるかどうか、疑問に思われるかもしれません。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た知識や経験に基づき、年金受給者のふるさと納税の留意点ついてご紹介したいと思います。

目次
年金受給者もふるさと納税はできる?
年金受給者もふるさと納税で控除は受けられる?
年金受給者の控除限度額の計算方法とは?
年金と給与所得の両方がある場合の控除限度額は?
まとめ

年金受給者もふるさと納税はできる?

ふるさと納税は、各都道府県・市区町村への寄附により、生まれ故郷や自分の意思で応援したい自治体に貢献できる制度です。皆様ご存じの通り、ふるさと納税を行なうことで、自治体からその地域の特産品などを返礼品として返送してくれます。

返礼品は肉・魚介類・果物等の食品やジュースやお酒、工芸品など多岐にわたっていて、返礼品の選択もふるさと納税の醍醐味と言えるでしょう。ふるさと納税をすること自体は、特に制限がなく、どなたでも活用することができます。

年金受給者もふるさと納税で控除は受けられる?

どなたでもふるさと納税を活用することができますが、ふるさと納税は上述したとおり、全国の自治体に寄附を行う事で寄附額が所得税と住民税から控除される制度です。ふるさと納税は、原則として自己負担分の2千円を除いた全額が所得税・住民税の控除の対象になります。しかし、控除の対象となる金額に限度があるため注意が必要です。

つまり、個人の所得金額よって限度額の上限が変動するため、その控除額の上限を確認しないまま多額の寄付をしてしまうと、限度額を超えた寄付は、所得税や住民税を控除することができないので、メリットを生かしきれないことになります。

また、ふるさと納税の返戻品は、一般的には寄付金額の1~3割くらいの価格設定の品物です。税額の限度額を超えた寄付をするのであれば、普通にそれらの商品を購入したほうが安く手に入れることができるため、年金の受給金額に対する限度額の算定が重要になってきます。

年金受給者の控除限度額の計算方法とは?

年金の控除限度額を計算する場合には、その年金の所得金額とそれに対する控除限度額の把握が必要です。まず年金の所得金額は、公的年金等に係る雑所得の金額として、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。

公的年金等控除額は、ご本人の年齢が65歳以上かどうか、その他の所得が1,000万円以上かどうかで変動をします。次に、控除限度額は以下の所得税と住民税の控除額を目安に計算します。

所得税の控除

所得税からの控除額は、下記の計算式で求めることになります。

(ふるさと納税額 - 2,000円)× 所得税の税率 = 所得税からの控除額

※控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限となります。

所得税の税率は、課税所得の金額が多額になればなるほど、高くなるように設定されており(累進課税制度)、その納税者に適用される税率を用いることになるのです。つまり、所得が高ければ高いほど、税率もそれに応じて高くなります。

住民税の控除

住民税からの控除の特例分は、この特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合は、下記の計算式により計算されます。

(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10%[基本分]- 所得税の税率)= 住民税からの控除額

年金と給与所得の両方がある場合の控除限度額は?

年金をもらいながら、給料をもらっている方もいらっしゃると思いますので、具体的な数値を用いて控除限度額をシミュレーションしたいと思います。

【例】66歳、年金収入300万円と給与収入300万円の場合(社会保険料と基礎控除以外の控除なし)

1:所得税率を求める。

(1)合計所得金額

 a.年金所得:3,000,000円 - 1,100,000円(公的年金控除)= 1,900,000円

 b.給与所得:3,000,000円 - 980,000円(給与所得控除額)= 2,020,000円

 c.合計:a + b = 3,920,000円

(2)所得控除額:480,000円(基礎控除)+ 392,000円(社会保険料控除)※3= 872,000円

※3 社会保険料控除は社会保険料が合計所得の10%と仮定した場合

(3)課税所得金額:(1)-(2)= 3,048,000円

課税所得金額3,048,000円の場合の所得税率は、所得税の税率表の速算表を用いると、税率が10%となります。

【国税庁:No.2260 所得税の税率

2:住民税所得割額を求める。

(1)合計所得金額:3,920,000円 

(2)所得控除額:430,000円(基礎控除)+ 392,000円(社会保険料控除)= 822,000円

(3)住民税の課税対象額:(1)-(2)= 3,098,000円

住民税所得割額は309,800円(3,098,000円 × 10%)となります。

3:ふるさと納税の限度額を求める。

(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10% - 10%)< = 309,800円 × 20%

ふるさと納税額 < = 61,960円 ÷ 80% + 2,000円となり、ふるさと納税の限度額は約79,450円となります。

まとめ

ふるさと納税の醍醐味は、寄付した金額に応じて地域の特産物をもらえることで、欲しい返礼品を探すのも楽しみの一つでしょう。ただし、ふるさと納税の控除限度額の範囲内でないと、損をしてしまう可能性があるため、限度額の把握が非常に重要になってきます。

ふるさと納税のポータルサイトでは、収入金額や所得控除を入力していくと、控除限度額の算定が簡単にできるものもたくさんあると思います。ただし、年金と給与のいずれも収入がある場合は、その他にも所得があると、どのように入力すればいいのか、分からないかもしれません。まずは計算の仕組みを理解して、それらのポータルサイトを活用されるのも良いのではないでしょうか。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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