最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く力が衰えたと実感することもあります。

この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。「脳トレ漢字」第149回は、「微塵」をご紹介します。「微塵」は、仏教に関係している言葉ということをご存知でしょうか? 実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「微塵」とは何とよむ?

「微塵」の読み方をご存知でしょうか? 「びちり」、「びじん」と読んでしまいそうですが……

正解は……
「みじん」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「非常にこまかいちり」、「量や程度がごくわずかであること」と説明されています。「彼を騙そうという気持ちは微塵もない」などのように、主に人の感情を表現する際に使われることが多いです。

「微塵」を使った類義語として、「木端微塵(こっぱみじん)」や「粉微塵(こなみじん)」などが挙げられます。「落としたガラス瓶が木端微塵に砕けた」などのように、ものが粉々に砕けるという意味として使われる言葉です。

また、「微塵」は微生物の名前にも使われていることをご存知でしょうか? 「微塵」に「子」をつけて、「微塵子(ミジンコ)」と読むことができるのです。「子」という漢字には、子どもという意味のほかに、小さいものという意味も含まれます。

ミジンコといえば、肉眼で何とか見ることができる小さな微生物。非常に細かいという意味を持つ「微塵」と、小さいという意味を持つ「子」が合わさることで、その小ささを強調しているようにも思えますね。

「微塵」の漢字の由来は?

では、「微塵」を構成する漢字を一文字ずつ見ていきましょう。「微」は「かすか」という意味を、「塵」は「ほこり」を表します。「塵」は、仏教の世界では「じん」と読み、執着の対象となって煩悩を引き起こすものという意味で使われています。

仏教語になっている「微塵」

現在でもよく使われている「微塵」という言葉。実は、仏教にまつわる言葉で、かなり古い歴史を持っているのです。これ以上分割できないほど小さい原子のことを、仏教語で「極微(ごくみ)」と言います。この極微が上下四方に集まってできたものが、「微塵」であると考えられているそうです。

目に見えないほど小さい「微塵」ですが、「塵も積もれば山となる」ということわざにもある通り、積もり積もってやがて大きな力になります。現在ではポジティブな意味で使われることが多い、このことわざ。仏教の世界では、「悪行を繰り返していると、いつか取り返しのつかないことになる」という戒めとして使われているのです。

***

いかがでしたか? 今回の「微塵」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「塵」を「じん」と読む理由は、仏教にまつわる言葉だからということがわかりました。仏教の世界にも、原子論の原型とも言える考え方があるのは、とても興味深いですね。

「微塵」以外にも、意外な由来を持つ言葉はたくさんあるので、調べていただくと面白いのではないでしょうか?

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

 

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