
もふもふした大きな耳、つぶらな瞳、ゆったりした寝姿……コアラって見ているだけで癒されますよね。でも、どうしてオーストラリアにしかいないのか、なぜユーカリしか食べないのか、知っている人は少ないのではないでしょうか。
そんな知ってるようで知らなかったコアラの世界にどっぷり浸かれるのが『おいでよ! コアラ沼への招待状』(世界文化社)。監修者の早川卓志さんは、コアラは視野を広げてくれる特別な存在だと言います。生きものへの興味はもちろん、地球環境や動物園の意義や使命について考えるきっかけとなっているからです。
コアラの奥深い魅力を知ることで、地球の、動物の、そして私たち自身のこれからを考えてみてはいかがでしょうか。
今回は『おいでよ! コアラ沼への招待状』から、コアラの基礎知識をご紹介します。オーストラリアにしかいない理由、袋を持っている理由、ご存じでしたか?
監修/早川卓志
おなじみの姿の先にある、驚きの生態と進化の謎
コアラは、オーストラリアにだけ生息する、メスがおなかに袋を持つ生きものです。ユーカリという毒を含む植物だけを食べて、木の上でくらしています。みなさんにとっては、「知ってるよ」と思うような、おなじみの生態かもしれませんね。でも、それぞれについて「どうしてだろう?」と、じっくり考えてみたことはあるでしょうか?
ハテナを持って見つめると、コアラのからだや行動には、驚くような秘密や、まだわからないことがいっぱい。不思議で魅力的なコアラの本当の姿に、そっと近づいてみましょう。
Q.どうしてコアラはオーストラリアにしかいないの?
A.地球の変化の中で、オーストラリア大陸が「有袋類の楽園」となったから
かつて、地球上の大陸は1つだけでした。長い時間をかけて分裂と集合を繰り返し、今の大陸の形になっていったのです。コアラやカンガルーなどの「有袋類(ゆうたいるい)」とは、メスがおなかに袋を持ち、その中で赤ちゃんを育てる哺乳類のことです。アメリカ大陸に現れた有袋類の先祖は、当時繋がっていた南極を通って、オーストラリアまで広がりました。
その後、「真獣類(しんじゅうるい)」と呼ばれる新しいタイプの動物が登場しました。これは、オオカミやライオンのように、袋を持たずにおなかの中で赤ちゃんを育てる哺乳類です。この真獣類との競争により、アメリカ大陸の有袋類はどんどん減っていきました。さらに、地球が寒くなったため、南極の有袋類がすべて絶滅してしまいました。
しかし、オーストラリアだけはちがいます。ここには真獣類がほとんど入ってこなかったうえ、極端に寒くもならなかったのです。そのため、オーストラリアは有袋類にとって「楽園」となり、長い時間をかけて進化し命を繋いだ結果、今日もコアラがくらしているのです。

Q.どうしてコアラは袋を持っているの?
A.未熟なまま早く産むことで、お母さんのからだを守るため

かつて地球には、赤ちゃんを卵で産む動物しかいませんでした。その後、コアラのように非常に未熟な状態で赤ちゃんを産み、袋の中で育てる「有袋類」が登場しました。さらに後に、人間やイヌやネコのように胎盤を持つ「真獣類」が現れました。赤ちゃんを長くおなかの中で育てると、母親と赤ちゃん両方に危険が生じます。未熟でも早く産んでからだを分けることで、お母さんのからだへの負担を減らし、安全を確保できるのです。人間が約10か月もの間、赤ちゃんをおなかの中で育てられるようになったのは、長い時間をかけて人間の生活環境が安全になったからかもしれません。
【コアラ】受精から出産まで約35日! 早く産んで袋で育てる。
有袋類:カンガルー、ポッサムなど
【ニワトリ】受精から出産まで約25時間! 卵でたくさん産み、卵の中の成分で赤ちゃんが育つ。
卵で生まれる動物:トカゲ・サカナなど
【ヒト】受精から出産まで約280日! おなかの中の胎盤でゆっくり育てる。
胎盤を持つ動物:イヌ・ネコ・ウマなど
※写真、イラストはすべてイメージです。
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『おいでよ! コアラ沼への招待状』
監修/早川卓志
世界文化社 1760円(税込)

早川卓志
北海道大学 大学院地球環境科学研究院 助教。
アフリカ、オーストラリア、ブラジルなどと日本を結び、さまざまな野生動物の研究を牽引する注目の若手研究者。
ゲノムの視点から野生動物を研究する、新しい研究スタイルの確立を目指している。











