
ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』が1週お休みということで、亀梨和也さん主演で8月21日に放送されるスペシャル時代劇『銭形平次』に触れたいと思います。
編集者A(以下A):『銭形平次』といえば、明治から昭和にかけての流行作家・野村胡堂の『銭形平次捕物控』を原作に1966年から1984年大川橋蔵さん主演で888回も描かれた時代劇の「大名跡」です。私はフジテレビの系列局がない県で育ったので、リアルタイムに毎週楽しむということはなかったのですが、親戚の家などで断片的に視聴した経験はあります。そんなわけで、ほとんど視聴できていないのですが、充分心には刻まれている時代劇の代名詞のようなドラマだと思っています。
I:この有名な時代劇を「令和の平次」として新たな切り口でリブートした、とのことですが、リブートって何? という方も多いかと思います。ざっくり『令和版 銭形平次』ということでいいかと思います。下っぴき・八五郎役に奥智哉さん。昨年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)で、幻の第11代将軍徳川家基を演じた気鋭の俳優です。今回は、徳川家基とは異なりお調子者の天然キャラ。ユーティリティーぶりを発揮しました。
A:平次にライバル心を燃やすベテラン岡っ引きの万七を演じるのは後藤剛範さん。この馬鹿っぽさ丸出しの万七親分が、ものすごくいい味を出しています。「このキャラ、もっと見たい!」と思わせます。さらに、平次の「相方」で「めし處おしづ」を切り盛りするお静役に生田絵梨花さん。こんな店の常連になりたいと思わせてくれる佇まいがいいんですよね。そして、ストーリー全体を引き締めてくれるベテラン俳優が、南町奉行所吟味方与力筆頭の笹野新三郎役の高橋克実さん。奥智哉さん同様に『べらぼう』では、主人公蔦屋重三郎(演・横浜流星)の育ての親である駿河屋を演じていました。錚々たる面々が名を連ねるこのスペシャル時代劇『銭形平次』の取材会が7月24日に開催されたので、行ってきました。なんと主要キャラの5人が一堂に会する豪華版でした。実は、試写を見て、この面々のキャラがぴったりすぎて「もっと見たい」と思っていたので、全員登場は感動ものでした(笑)。
I:『銭形平次』といえば、寛永通宝。銭を武器にするというおもしろい着想で、小石のように投げて敵を倒していくんですよね。子供の頃に大川橋蔵さん版を見て、今も主題歌が頭に残っています。
A:やはり大川橋蔵さんのイメージが強烈にありますが、「令和版」の試写を見て、テンポの良さ、ストーリーのおもしろさが時代劇特有の「古臭さ」をまったく感じさせない出来になっています。民放の刑事ドラマファンをも引きつけそうな、新感覚の銭形平次です。その「捜査オタク」っぷりも見ごたえありです。洋書を読破し、医学など雑多な知識も豊富な頭脳系平次。眼鏡をかける場面も、妙に様になっています。
I:銭投げも、科学的に不自然じゃない角度で、最も効力のある方法で投げる。亀梨版銭形平次にホレましたよ。まず、かつらが似合う、様になっている。そしてあのきりっとした亀梨さんの目つきがいいんですよ。
A:プロ野球ファンの方なら亀梨さんの野球への造詣の深さは先刻承知かと思いますが、なんと野球の経験が、銭形役に生かされたというから驚きです。そのあたりのコメントから紹介しましょう。
僕もちょっと野球をかじっていたので、投げることに関しては原理は何となく分かるんですね。アクションシーンでいかにステキに表現できるかギリギリを攻めました。撮影当日、ロケ地に行って、こういう距離感だったらこうとか、出し方もいろいろと話し合いながら投げてみました。
(銭を束ねている紐は)どのくらいの太さの紐にしておくと使う時に出しやすいのかとか、アクションシーン以外だと銭が落ちてきちゃうなとか、その辺りもスタッフさんがいろいろと工夫してくださっていました。銭投げは手遊びから始まったみたいな設定ですが、これはもう、移動中の新幹線の中とかでずっと練習していました。練習用の銭をいただいて、京都でもずっとひとりで練習していました。日本の新幹線はすごいですよね、あんまり揺れないから! さすがだなと思いました。日本の技術にも助けられて練習できました。
I:取材会に同席されていた演出の豊島圭介さんが、「令和の平次の一番の特徴は投げた銭を拾う」といっていたのもおもしろかったです。当時の価値に換算すると1枚80円くらいの銭だそうで、捨てるのはいかがなものか、ということになったそうです。ただ拾うだけではなく、亀梨さんの手にかかると、色っぽく拾う、という話もツボでした。
A:あんまりかっこよく銭を投げるから、連投の時は拳銃の効果音にしてしまった、という話もおもしろかったですね。
I:今回の『銭形平次』は、亀梨さんをはじめとするキャストや演出の豊島さんはもちろん、スタッフの皆さんもとても気合を込めて作った作品なんだなということが、お話を聞いていてわかりました。亀梨さんが、京都での撮影時についても話してくれています。
実際に京都の撮影所にも入らせていただきましたが、京都のスタッフの皆さんも、この『銭形平次』という作品に非常に熱い思いを持っていらっしゃる方たちが集まってくださっていて、そんなスタッフの皆さんの熱量をいただきながら撮影をすることができたことが幸せでした。たくさんの方に見ていただきたいです。
A:作り手の愛情がたっぷりと詰まった作品ということです。
通好みの「花影社中」メンバーが凄い!
I:さて、気になるストーリーですが、旅一座「花影社中」が江戸で興行を行います。看板女芸人のつばめが歌う歌とパフォーマンスが評判を呼ぶのです。ところが、この一座に関係して、ふたつの殺人事件が起きてしまいます。市中の娯楽と、江戸城の極秘事項が絡んだ謎に平次が挑む、というものです。つばめを演じているのが、山田杏奈さん。「ちゃおガール」出身のこちらも気鋭の俳優です。現代でいうアイドルのような役を、見事に演じてくれています。
A:『鎌倉殿の13人』で源実朝の妻千世を演じた加藤小夏さんがつばめの相方おりんを演じます。この旅一座「花影社中」を率いるのが、なんと栗山千明さん。なんという層の厚さ。なんという通好みの人選。劇中の描写が、ともすれば、現代のアイドル推し活動が「令和時代にも通じている」と受け取られがちですが、推し活なんかはもともと江戸時代がルーツですから、推し活の源流を識るということでいいのだと思います。
I:歌舞伎は男性が演じるものということになっていますが、もとは女性が演じていて、江戸時代の初期に推し活の男性ファン同士のもめ事で刃傷沙汰があったため、女性は演じてはいけない、ということになったんでしたよね。
A:現代の感覚と江戸時代の感覚がうまくリンクされて、現代の若い人たちにもわかりやすい背景だったと思います。これ、試写を見て思ったのですが、「絶対もっと見たい」と思わせるような出来なんですよ。視聴者が知りたいのは、亀梨さんの『銭形平次』が今回だけなのか、あるいは次回作以降もあるのか、というところだと思っていたんですが、実はまだ決まっていないというのです。
I:それ、びっくりでした。取材会で登壇したメンバーも1回だけでなくもっともっと見たいですよね。
A:そうそう。絶対に1回だけではもったいないですよ。

【放送情報】
スペシャル時代劇「銭形平次」
NHK総合 8月21日(金)22時~23時29分
※NHK ONEで同時・見逃し配信予定
●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











