ニューノーマルの時代の今、「自分はこのままでいいのだろうか?」「新しいことを学びたい」と考えている大人たちは多いではないでしょうか? しかし、仕事に家庭にと、日々やることが多く、なかなか学ぶ時間がとれない。

そんな悩める大人のみなさんに、英検1級をはじめ、130超の資格取得を果たした翻訳家・宮崎伸治さんの著書『自分を変える! 大人の学び方大全』から、語学学習のコツをご紹介します。

文/宮崎伸治

語彙力を鍛える6つのコツ

私は、語学学習の中では単語力強化にとてもこだわっている。外国語能力(とくに読解力)と語彙力には高い相関関係があることが実証されており、語彙力を伸ばせば外国語能力も飛躍的に伸びる可能性が高いといえる。

単語は理屈抜きに覚えるしかなく、日本にいながらネイティブの読解力に近づこうと思ったらただひたすら知らない単語をしらみつよしに覚えていく努力をするしかない。

ロンドン大学の遠隔教育を受けたとき、課題図書に難易度の高い英単語が頻出しているのに気づき、ネイティブの若い学生たちがこんな難解なテキストを読んでいることに度肝を抜かれた。英検1級に合格したことで満足し、語彙力強化を怠ってしまったら、大学の指定図書さえ十分に読めないことを思い知ったのだ。そしてこのとき私は「一生語彙力を磨き続ける」と強く心に決めた。ネイティブ並みの語彙力をつけるには、それほどの鍛錬が欠かせないのだ。

その後、早速ボキャブラリー増強に取り組んだわけだが、英語をはじめ、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、中国語の6つの言語を勉強する過程でボキャブラリー増強の秘訣を見出した。それをここで紹介したい。

1.何といってもくり返しが重要

語彙をしっかりと頭に定着させるために「覚える」「忘れる」「覚える」「忘れる」というサイクルを何度もくり返そう。しつこくしつこくくり返すのがポイントだ。そうすればだんだん定着してくる。私はそのために単語カードを使用している。単語カードを作成するのは時間がかかるので面倒だと思う人もいるかもしれないが、作成するには実際に手書きすることになるので、それ自体が単語を覚えるために役立っている。

さらに、一度単語カードを作っておけば、忘れたころに何度でもくり返して覚え直すことができる。5分、10分の細切れの時間も、積み重ねれば大きな時間となる。その細切れの時間で覚えるのに適しているのも単語カードなのだ。いつも胸のポケットに単語カードを忍ばせておいて持ち歩き、細切れの時間ができたらすぐに取り出して覚えている。

私は40歳を過ぎてからドイツ語を再開、50歳近くなってからゼロからフランス語、イタリア語、スペイン語、中国語の勉強を開始したが、この5言語ですでに850束の単語カードを作成し、記憶してきた。細切れの時間を使って覚えれば、1年に100東程度の新しい単語を覚えることも不可能ではない。

2.名詞から覚える(英語以外の言語をゼロから学びはじめる場合)

いくつもある品詞の中でもっとも覚えやすいのが名詞といわれている。新しい言語をゼロから覚える場合、まずはもっとも覚えやすい名詞から入るのが近道だ。

3.同じカテゴリーの語彙を一気に覚える

私たちが語彙を覚える際、意味の近い語彙であればあるほど、脳の中の記憶される場所も近いといわれている。中でも、同じカテゴリーの語彙はお互い結びつきが強いので、一度に覚えると覚えやすい。

たとえば、「塩」「砂糖」「コショウ」「酢」「小麦粉」「クリーム」「チーズ」「バター」「はちみつ」「にんにく」……というように料理に関して「同じカテゴリ上の語彙は、それぞれ脳の中に蓄積される場所が近いので、別々に覚えるよりも一気に覚えるようにすれば、それだけ早く覚えられる。しかも、一気に覚えたほうが忘れにくい。

この方法を実践するならこれに合った単語集があるので、そういった単語集を活用するといい。「重要度別の単語集」や「試験に出る順の単語集」も、それなりに使いやすいが、覚えやすさの点からいえば、意味的に同じカテゴリーの語彙をまとめて一度に覚えたほうが速く覚えられる。

なお、同じカテゴリーが一気に覚えられる単語集として、以下のものをおすすめしたい。

『いっそイラストチャイナ単語帳』
『いっそイラストフランス語単語帳』
『いっそイラストスペイン語単語帳』
『いっそイラストイタリア語単語帳』
(以上、小学館刊)

『暮らしのフランス語単語8000』
『暮らしのスペイン語単語8000』
『暮らしの中国語単語10000』
(以上、語研刊)

『ドイツ語分類単語集新書』
『イタリア語分類単語集新書』
(以上、大学書林刊)

4.文章に出てきた未知の語彙を目と耳で覚える

目だけで覚えるより、目と耳で覚えるほうが何倍も記憶に残りやすい。最近は音源付きの参考書も多いので、未知の語彙があれば、目と耳を使って覚えよう。

5.文章に出てきた未知の語彙に関連する語彙を一気に覚える

3の「同じカテゴリーの語彙を一気に覚える」と同じで、関連が強い語彙であればあるほど覚えやすい。

たとえば、フランス語の文中にménageいう単語が出てきたとする。これを辞書で調べると「家事」という意味であることがわかるが、それだけ覚えて終わりにするのはもったいない。

s’occuper du ménage(家事に従事する)、faire des ménages(家政婦として働く)、feme de ménage(家政婦)、ustensiles de ménage(掃除道具)、jeune ménage(若夫婦)、faux ménage(事実婚の夫婦)、ménage a trois(三角関係)、petit ménage(男性どうしのカップル)など、ménageに関連する語彙を一気に覚えてしまおう。意味がまったく違う語彙を一度に覚えるよりはるかに容易に覚えられるのだから、これをやらない手はない。

6.どうしても覚えられないものはひたすら書いて覚える

単語カードで暗記する方法だと、中には「どうしても覚えられない」という単語が出てくる。そんな単語は紙に何度も書いて覚えている。何度も何度も書く。書いて書いて書きまくる。すると不思議なことにきちんと頭に定着するのだ。どうしても覚えられないものは、ひたすら書いて覚えよう。

* * *

語彙力を上げるためにコツはあっても、近道はないようです。関連のある語彙グループをつくって、日々コツコツと覚えていきましょう。

『自分を変える! 大人の学び方大全』 宮崎伸治著
世界文化社

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宮崎伸治(みやざき・しんじ)
青山学院大学国際政治経済学部卒業。英シェルフィールド大学大学院言語学研究科修了。大学職員、英会話講師などを経て出版翻訳家となり、著訳書は60冊以上。金沢工業大学大学院工学研究科修了、慶応義塾大学文学部卒業、英ロンドン大学哲学科卒業、および神学部サーティフィケート課程修了、日本大学法学部、および商学部卒業。英語・翻訳関係の資格をはじめとする133種の資格を取得。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、中国語の原書を読むことが趣味でありライフワーク。日々ボキャブラリー力アップに心血を注ぐ。主な訳書に『7つの習慣 最優先事項』(キングベアー出版)、近著に『出版翻訳家になんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)などがある。

 

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