関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、幸三さん(仮名・63歳)。60歳の妻が定年退職後の外出が激増し、私たちに調査を依頼。私たち探偵は浮気調査の依頼が80%程度なのですが、その依頼者は、20~50代は女性が多い。男性の依頼者が増えるのは、60代以降です。子育て期の女性は、夫の浮気によって、お子さんの学費や生活費が脅かされることを恐れます。男性は老後の生活を「夫婦で過ごしたい」と考えている人が多いようで、妻の浮気を心配します。
同僚同士結婚し、先に定年を迎えた妻がおかしい
今回の依頼者・幸三さんとその妻は、同じ大手医療関連会社で定年まで勤務したというご夫婦です。幸三さんは65歳まで働くことを決めましたが、妻は60歳で定年退職。2人の間には一人息子(28歳)がいますが、2年前に結婚し、現在は関西地方で単身赴任をしているとか。
「妻が3か月前に定年を迎えたのですが、毎日のようにどこかに出かけているのです。“どこに行っているんだ?”と聞くと、“お嫁さんの手伝い”と言う。息子のところには、1歳半の孫がいて、嫁は“保活(保育園入園活動)”をしている。そのサポートをしているというのです。
それにつけても、朝8時に家を出て、20時まで帰ってこない。おかしいと思って聞くと「私には私の生活があるの」と怒ってしまう。今では幸三さんが寝ている早朝5時に出ていき、終電で帰る日が続いているとか。
「そこで嫁に“いい加減にしてほしい。ウチにはウチの生活がある”と諭したら、嫁は“はぁ?なんですか?お義母さんには週1しか頼んでいませんよ。それならいいです。もう関わりません”と激怒されてしまった」
これは、会社での地位がある程度高かった男性に多いのですが、家族も「部下」として見る。これが続くと孤立するどころか、離婚されてしまう可能性も高まるのです。
「妻にそのことを言うと、“なんてことを言うの?”と怒ってしまったんです。それ以来、私のことは全く無視。毎日のように出かけているのです。妻が何をしているか知りたいのです」
【小柄で可愛らしく、品がいい妻。次ページに続きます】