関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、森本弥生さん(仮名・70歳)。40歳の息子が行方不明になってしまい、その調査を依頼されました。
大学3浪して海外留学、甘やかした長男は人間的にダメ!
弥生さんは5年前に亡くなった夫から社員10人程度の会社を引き継ぎ、今も現場で陣頭指揮をしている辣腕社長です。コロナ禍にも負けず業績を伸ばしている、胆力ある女性。私は何度か弥生さんの会社の幹部社員の素行調査を依頼されたことがあり、常連の方でもあるのです。
この調査以前に、私は弥生さんと何度も会い、プライベートなことも話していたのですが、このときまで私は息子さんがいるとは知りませんでした。
「だって言ってないもの。ウチの恥。ホントにダメなんですよ。何でもすぐに逃げる、人のせいにする。悪いところしかない。あれは夫が甘やかすだけ甘やかしたからあんなに息子はクズになったのよ」
息子さんは、中学受験にも高校受験にも失敗し、大学も3浪してどこの大学にも行けなかったから、弥生さんの夫が不憫に思い、海外のとある小規模な大学(カレッジ)に留学に出したそうです。
「言葉は悪いけど、金さえ払えばだれでも入れるところ。そこでスケボーだのダンスだのをやっていたけど、何一つモノにならない。英語だって一つもしゃべれない。友達は日本人だけという無意味な留学を3年もしたのよ」
その後、弥生さんが強引に帰国させた。24歳になった息子に、仕事を叩き込もうと思ったからだ。しかし、その前に息子は女性を妊娠させていたことが発覚。
「そういうことだけは1人前。息子も息子なら、嫁も嫁で、その時に生まれた孫を置いて、どこかに行ってしまったの」
仕方がないから弥生さんと住み込み同然のお手伝いさんとで孫娘を育てた。その孫娘も、もう15歳。
「私が持っているマンションの下の階に息子親子は住んでいるの。たまにお手伝いさんが行っているんだけど、息子はフラフラと遊びに行ってばかり。でも、今までは、その日のうちに帰ってきた。それなのに、昨日、孫娘から“パパがもう3日帰ってこない”と連絡があったんです」
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