『麒麟がくる』の新キャストが10月16日に発表された。武田信玄(演・石橋凌)、三條西実澄(演・石橋蓮司)、斎藤利三(演・須賀貴匡)、誠仁親王(演・加藤清史郎)、織田信忠(演・井上瑞稀)、細川忠興 (演・望月歩)、たま(演・芦田愛菜)、なか(演・銀粉蝶)という面々だ。あの戦国武将は出ないんですか?という声もあるが、気になるのは、こんな豪華な面々が登場するのであればなおさら、絶対的に尺が足りなくなるということなのだが……。
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ライターI(以下I): (やや興奮気味に)『麒麟がくる』の新キャストが発表されました。1988年の『武田信玄』で織田信長を演じた石橋凌さんが、武田信玄で登場です。「キャー!!」という感じです。
編集者A(以下A):信玄が出ますかァ。本来足利義昭(演・滝藤賢一)が上洛を期待していた上杉謙信が領国を動けなかったのは、信玄がいたからです。当初信玄は、信長とは蜜月な関係を築いていましたが、やがて義昭の〈信長包囲網〉に呼応することになります。朝倉義景(演・ユースケ・サンタマリア)が信玄を激怒させたエピソードなど登場するんですかね?
I:それはまだわかりませんが、ほかにも興味深い人物がキャスティングされました。斎藤利三は本能寺の変に至る過程を知る上で重要な人物です。
A:いつキャスティングが発表されるんだろうか?と思われていた人物ですよね。もともと稲葉良通(演・村田雄浩)の家臣だったのを光秀(演・長谷川博己)が横取りした人物です。『麒麟がくる』では〈横暴な稲葉から逃げてくる〉という設定のようですが、終盤戦の最重要人物ですね。
I:誠仁親王(さねひとしんのう)の登場も感慨深いです。
A:誠仁親王は、正親町天皇(おおぎまちてんのう/演・坂東玉三郎)の皇子ですが、信長と密接な関係を結びます。当時の天皇家は、後柏原天皇、後奈良天皇と歴史上、もっとも天皇家が貧窮していたとされる時代がありました。後奈良天皇の皇子が正親町天皇で、ここで信長の上洛などもあり、貧窮から脱するわけです。
I:信長と朝廷との関係を考えた時には外せない親王なんですね。戦国から近世への過程の重要な節目を濃密に描くなら欠かせない人物ではあります。
A:そうです。この時代を濃厚に描くなら欠かせない重要人物です。その登場は歓迎したいところですが、でも、予定されている44話におさまりますか?ということを改めて問いたいと思います。個人的には、信長が行なって誠仁親王も参加した蹴鞠の会を見たいですね。
長宗我部元親はキャスティングされないのか?
I: 細川藤孝(演・眞島秀和)に古今伝授を行なった三條西実澄も登場します。
A:一般的には改名後の実枝(さねき)の名で知られている公家さんですが、藤孝への古今伝授の場面が登場するんですかね?
I:それは、ぜひ見たい場面ですね。あんまり期待しないで待ってます(笑)。
A:光秀の娘で後に細川藤孝の嫡男忠興に嫁ぐたまに芦田愛菜さんがキャスティングされました。後の細川ガラシャです。
I:芦田さんは、『まなの本棚』(小学館刊)という自ら読んだ本の中から選りすぐりの本を紹介する著書もあるほどの読書好きで知られています。おそらく明智たまに関連する本も読んで収録に臨むのかと思います。それを踏まえてどのような演技を展開するのか本当に興味深いです。
A:信長嫡男の信忠も注目ですね。本能寺の変に際しての誠仁親王との緊迫したやり取りに絡んで来るのかどうか。さらに秀吉の母なかには銀粉蝶さんという手練れの俳優がキャスティングされました。秀吉の母というと、『秀吉』(1996年)の市原悦子さんが強烈な印象を残しましたが、今回も登場場面が多ければ面白いかと思います。いや、注目したいことは山ほどあるのですが、改めて考えると、やっぱり尺足りないですよね。10月18日で第28話が放映されて残す話数は16話。登場人物にまつわる濃厚なエピソードを展開するには残り話数が少なすぎます。
I:また放映期間を延ばしてほしいとか主張したいんですね。
A:大河ドラマも『麒麟がくる』で59作。人間でいえば還暦直前。ここで話数を増やす大英断を期待したいです。2021年3月までやればいいんです。いや、やらないとダメなんじゃないでしょうか。
I:賛同してくださる方が多いといいですね。
A:(笑)。あ、そういえば、今回も長宗我部元親のキャスティングが発表されませんでしたね。元親、出て来るんでしょうか?
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり