料理好きな人やグルメな人たちの間で、低温調理という調理法が注目されています。
低温調理は真空調理ともいわれ、フリーザーバッグのような密閉できる袋に肉などの材料を入れ空気を抜き、40℃台から60℃台に温めた湯の中に袋ごと浸けて、一定の温度を保ちながら時間をかけて加熱する調理法。
そうして出来上がるチャーシューやローストビーフは、しっとりしてジューシー。 やわらかい肉料理が好きにな方にとっては、とても魅力的な調理法といえます。 低温調理用の調理器具も売られていて、家庭でもおいしい肉料理が作れるというわけです。
肉を加熱するときの安全な温度とは?
どうして、低温調理で肉を調理すると、しっとりとジューシーに仕上がるのでしょうか?
通常、肉は水分を加えずに加熱すると、弾力性が増してかたくなります。さらには肉汁がしみ出し、肉がぱさつく原因になります。
それに比べ、ほどよく均一に火が入る低温調理は、肉がかたくならずに、肉汁の流出を抑えるため、しっとりとジューシーに仕上がるのです。
このように、とても魅力的な低温調理ですが、1つだけ気をつけたいことがあります。
それは、食中毒です。
厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」によると、食中毒防止のための加熱条件として、肉の中心部を 75℃で 1 分間以上加熱することが必要とされています。
厚生労働省は「75℃、1 分」と同じくらいの加熱殺菌効果がある条件として、「70℃、3 分」、「69℃、4 分」、「68℃、5 分」、「67℃、8 分」、「66℃、11 分」、「65℃、15 分」が妥当としています。また、厚生労働省の「食品、添加物等の規格基準」では、豚肉は中心部の温度が63℃で30 分間以上加熱することが示されています。
ちなみに、牛肉のステーキの焼き加減で、いちばん生の状態に近い「レア」は内部温度が55〜65℃。ミディアム・レアで65℃、ミディアムで65〜70℃、ウェルダンで70〜80℃です。
食中毒菌が発育しやすい温度はおよそ 20℃~50℃といわれているので、肉をこの温度下に長時間置くことは、病原菌の発育を促すことにつながります。
牛、豚、鶏などの肉には、腸管出血性大腸菌(O157、O111など)やカンピロバクターなど、食中毒の病原菌が付着している可能性があります。
また、レバーや砂肝など内臓肉の場合は、内部にも食中毒菌が存在していることがあります。そのため、十分加熱しないで食べると、食中毒になることがあるのです。
結論として、肉を加熱するときの安全な温度は、最低でも「63℃、30分以上」が必要であることがわかります。
食中毒は高齢の方が重篤化しやすい
食中毒を予防できる肉の加熱温度・時間はわかっても、きちんと中心部が63℃に達しているかどうか、家庭で測ることは難しい場合があります。
食中毒は抵抗力の弱い子どもや高齢の方が重篤化しやすいといわれています。
最悪、命にかかわることもありますので、高齢の方の場合はしっかりと加熱して食べることを心がけましょう。
肉にしっかり火が通ったかどうかは、内部まで色が変色したかどうかが目安になります。
低温調理を楽しむときも、しっかり火が通ったか確認してから食べましょう。
冷凍の肉を調理する場合は、中心の温度が上がるまでに時間がかかるので、室温に戻してから調理するか、いつもより長めに加熱するといいでしょう。
バーベキューが好きな方は、肉を焼くときに生焼けになっていないか、しっかり確認してからに。また、生肉をつかむ箸やトングと、取り分けたり口に運んだりするときの箸・トングは区別します。
たんぱく質を摂るためにも、食事に肉を取り入れることは大切なこと。
食中毒に気をつけて、安全に食事を楽しみましょう。
参考/公益財団法人日本食肉消費総合センター「おいしいステーキを焼いてみよう5 焼き加減と内部温度」、厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル(平成29年度改正版)」、 農林水産省「バーベキューを楽しむ皆様へ」
編集/おいしい健康編集部
監修/おいしい健康管理栄養士
株式会社おいしい健康
「誰もがいつまでも、おいしく食べられるように」という理念のもと、ITを活用したヘルスケア事業や生活メディア事業を展開しています。主なサービスとして、病気の予防・管理、ダイエットなどを目的とした管理栄養士監修のレシピ検索・献立作成サービス「おいしい健康」を運営。社内には、サービスの監修や向上にあたる管理栄養士が複数在籍しており、食や健康に関する情報をエビデンスに基づき正確にわかりやすく発信しています。
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